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ライフ〜癒しの歌姫〜  作者: 一夜
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2.神宝寺葵


私は1人無重力に設定された真っ白な部屋で膝を抱えながら泣いていた。


泣くのはいつもこの部屋だ。

泣いている理由は自分でもわからない。

突然と涙が出てしまい、この部屋に逃げ込んでしまうのだ。


私は世界名家と呼ばれる12家の1つ神宝寺家の長女としてこの世に生まれた。

世界名家は世界を束ねる存在で世界の方針にも大きく関わる。


世界名家に生まれれば必然と名家に相応しい存在にならなければならない。

諦めること逃げ出すことすらできない。


そんな家に生まれた私だが現代でも治療がわからない病気を抱えながら生まれてきてしまった。


症状は筋肉が付きづらく、歩く事すら出来ない体で、免疫力が低く風邪やウイルス系の病気にかかりやすい。

他にも色々あるがこれらが主な現象だ。


そんな私は1歳の時から神宝寺家の最新技術とされるデジタル医療をする事になった。


少し広い部屋に機械が大量に置かれ、部屋の真ん中にはカプセル状のベッドが置かれている。


カプセルの中は無菌で酸素濃度も操作でき、生体スキャンで常時異常がないかを管理できるらしい。

もっと機能があるが設定していると長くなるので省略しようと思う。


この機械の最大の機能は人の意識をデジタル世界にとばすVR技術。

このVR技術は神宝寺家が初めて開発したやしい。

現在でも神宝寺家はVR技術において最前線を行っている。


私はこの技術で1歳の時から12年間VR世界で過ごしてきた。


正確には現実世界の3倍の速さで加速する世界にいたので36年間となるがそこは触れないでほしい。


12年間で私は名家に相応しい存在になる為に教育を受け、この12年間で全ての学問、武術などを覚えた。

今ではこの世で最も物知りだと言われる人物と会話が成立する程にもなってしまっていた。


神宝寺家現当主の祖父・神宝寺政次郎からも歴代でも異常な存在と言われるほど。

そして12年間の教育はこの時に終了となった。


私はその時嬉しく1人ではしゃいでしまった。

しかしそこで初めて私にも2つ離れた弟がいる事を伝えられたのだ。


私は激しく動揺した。

こんな姉でも受け入れてくれるであろうかと考えてしまっていたのだ。


デジタル世界の私は健康な肌であるが、現実世界の私は肉が少なくかなりガリガリの姿なのだ。


そして、弟と会うとなった日に私は涙が出てしまい、このデジタル無重力空間にこもって泣いているのだ。


弟は天才だと聞いた。

私の両親もある機会を境にあまり私に会いに来なくなった時がある。


物知りだが将来に期待が出来ない私より、将来に希望がある弟を優先するのは必然なのだと理解しているからこそ自分が情け無い存在だと思ってしまう。


そんなことを考えて涙を流し部屋に閉じこもっていると、この部屋に誰か入ってくる音がした。


この部屋は私が独自で開発したデジタル空間。

私以下この部屋に入ることができないシステムだが、3人だけ入室を許可している人物がいる。


1人目が最も物知りだと言われる人物。

2人目が神宝寺家現当主の祖父

3人目が私専属の使用人


そして今入ってきた人物はこの3人の誰かと考えられる。


「葵様。どうなされたのですか?」


私に話しかけてきた声は美しい声で私を心配していることがわかる声だった。


「芽衣。私はこれからどうしたらいいの?私は神宝寺家からいらない存在となったの?」


入ってきたのは私専属の使用人の桜坂芽衣。

長い黒髪を後ろでまとめて使用人用の和服を着ている。


「そんなことはありませんよ。葵様は祖父であられる政次郎様から唯一全てを認められた存在ではないですか。」


「でも、皆は将来が無い私より将来がある弟に惹かれているじゃない?」


「皆ではありません。私、政次郎様、仙人様は葵様を素晴らしいと思っております。」


「私はこのデジタル世界でしか動くこと会話する事すらできのよ。」


「今の時代はデジタル世界で活躍する人も沢山います。現実世界だけにこだわってはいけません。」


「で、でも…」


「でもではありません。」


私は芽衣の反論に何も言い返せなくなってしまった。確かにデジタル世界で活躍する人もいると祖父から聞いたことがある。


「それに今日はこんなところで泣いている場合ではありません。竜也様との面会があるではないですか。」


竜也とは私の弟の名前だ。


「わかっているわ。弟に会うのは今日じゃないとダメなの?」


「はい。この面会は政次郎様が決めたことです。葵様は政次郎様の約束事を破るのですか?」


「う…お爺ちゃんとの約束は破れない。」


私を可愛がってくれる祖父との約束は守りたい。


「では、泣いていないで行きますよ」


「う、うん」


私は涙を拭い芽衣の服をつかんだ状態で部屋から出る。


今回の面会会場は祖父のデジタル世界・神寺である。

私が現実世界で動けないので、その事を配慮した結果、祖父が管理するデジタル部屋で行うことになったのだ。


祖父はデジタル世界で仕事をする時はいつもこの部屋で行っている。

私は何回も遊びに行ったことがあるがとても綺麗な場所だ。


しかし、この神寺に入る時は身なりを整えてから入る様に祖父から言われている。


私はデジタル世界で管理しているデータベース「メニュー」を開き、自分でデザインした夜空を切り開く鳳凰が描かれている着物を選択して着ている服を切り替える。これが私の最近のお気に入り。


芽衣は使用人用の和服のまま、使用人にとってこれが正装みたい。


「では神寺に入ります。」


「え、ええ。お願い」


芽衣が差し出してきた手を握り、目の前の空間の歪みに芽衣が先導し私も後に続いた。


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