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第03話 転移前に追放されよう! 後編


 俺の意を酌んでくれたのかアイツらも思惑通りなのかはどうでも良い。異世界に行くなら行くで、別行動は基本路線だ。大騒ぎはセリちゃんだけ……当然と言えば当然なんだけど嬉しいやら何やら。だが、もう一つハッキリさせておこう。


「だめです! だめです!! だめなのです!!!!」


「まあ正直に言って、俺は元の世界に戻りたいんです」


 セリちゃんは胸元で指を組んだまま上半身を左右、交互にひねりながらダメダメと声を張り上げていて、あまりなオーバーアクションに噴き出しそうになった。

 だがしかし、真顔でキッパリと俺の希望を伝えたら組んでいた指を解いた。


「な、な、な、なにを言い出すです!? おふざけでないです!! バラバラなのですよ!? バラ! バラ!!」


 セリちゃんは『バラバラ』の音に合わせ手刀(ちょっぷ)で肘をトン……トンと叩いていて、仕草が卑怯だと思った。

 ……これから俺は、お辞儀をして切実にお願いをするのだから角度は直角に近くするのが礼儀であろう。ごめんなさい。


「構わないですよ! 今更いちから異世界生活なんてシンドイですし、思い入れもないわけで、おとなしく元の世界で輪廻転生を待ちたいです。お願いします」


「ど、ど、ど、どうして、そんな事を言うのかわからないです……。バラバラ……バラバラ……バラ――――」


 セリちゃんの声が、かぼそくなっていく……。俺がチラ見をしたらセリちゃんもお辞儀をしていた。ノリがいいのか天然なのか……。そうすると、元世界には返せないって事なのか……。


 姿勢を戻すに戻せない俺に『勇者』の罵声が聞こえ始める。


「もうさあ~こんなオッサンどうでもいいだろ! 行くぜオレ!! ほりゃ!! さっさと歩けや! かなで!!」

「わかってる! わかってるから!! け、蹴らないで……いつき……くん」


 かなでちゃんも『精霊使い』の力を得たんだから、やりようがある? だろ? あとは、せめて向こうの人々がマトモであることを祈る!


「貴殿はパーティーの輪に相容れぬようでござるな。そこは同意するのでござる。しかし、死にたがりとはなんとも愚かでござる」


 ああ、『超重戦士』カオルさんもウッハウハ生活になれるとイイね! クフッ!


「よくわからないけど、行く? よっくん! ぁあん、もうぅ」

「えみちゃん、離れちゃダメだよ……ホラ! しっかり握って」


 『魔法使い』えみちゃんと『魔法戦士』よっくん。

 いまいち、わからん、ふたりだったなー。


 俺は腰が痛いのと、一先ずの成功を確認したくて姿勢を戻した。

 すると、扉に近づくふたりが見えた。


 よっくんは、えみちゃんのお尻を(したた)かに触り右手指を絡め取って先に行かせた。まあ、励んちゃってチョーダイよー。

 ふたりは軽快に扉を通ると、よっくんの右手がドアノブにふれた――。


「――ちょ、ちょ、ちょっと待つですうううううぅぅぅ――あ」


 ――パタンと乾いた音がして、朧気(おぼろげ)な扉がとじた。

 最後尾のよっくんは、開いていたら閉める事のできる少年だった。


「ほげえええええええええええええええええぇぇぇぇ――――」


 ふたりだけ残った灰色空間に絶叫が(とどろい)いた。

 セリちゃんが縦長の大口な変顔をするなんて……美少女なのに表情が豊かだ。


「……どうするのですか。……こんなの予定にないのです……。大問題なのです」


「別にオッサンひとりが欠けても問題ないでしょう?」


「六名の召喚で皆様方の神様が受諾されているのです。一方的な変更はできないのです。信用問題なのです」


「……信用問題?」


「えっと、当事者の方にお話するのはいけないのですが……。皆様の世界の神様は女神様の上位にあたるのです。今回の依頼も多少の無理をして受諾して下さったのです……。ですから……なのです」


 セリちゃんは一通りの感情を吐き出したのか脱力状態でフラついてはいたものの落ち着いて語った。

 異世界転移の契約不履行? だとすると、女神様と神様か……どのような対応をとられるやら。

 今のセリちゃん、やらかした時の俺みたいで心苦しいんだけど……。


 俺も必死にいくわ!


「そんな大仕事をセリちゃん()()()()()()のかな?」


「信頼して下さったのです。期待は裏切れないのです……。出来るはずなのです」


「でもまずは報告して叱られて、に頭を下げに行くパターンだね! セリちゃん大失敗だな! 始末書やら詫び状やらで大変だね!!」


「そんな大事(おおごと)にはしないのです! 自分で解決するのです! ……頑張って位階を上げてここまで来たのです……失うわけにはいかないのです! セリちゃんだけの問題じゃないのですぅみんなのですぅ世界のためですぅ女神様のためなのですぅ」


 それは最悪の選択だよ……セリちゃん。本当に本当にごめんね。

 なんだか、崩壊しつつあるみたいだけども……。


 こっから俺は本気だす!


「そういう事情があるのであればぁ~先に言ってくれればぁ~良かったのにぃ」


「はひぃ?」


「いやぁ転生を待つと言ってもぉ~また日本人にぃとは限らないしさぁ~なによりバラバラに戻るのはヤッパにぃだからホンのちょいと条件が変わると気も変わると思うんだよにぃ~」


「とっとと言うのです!! その条件とやらを!! 一度、現地への扉が開閉しているです!! 時間がないです!! まだ同じ世界に転移させられるのです!!」


「いやぁ~なんかわるいなぁ~」

「言いやがれなのです!!!!」


 セリちゃんこわ~い。


 バインダーを取り出して、なにやら書き込み始めたみたいだけど……。

 俺の個人情報とか持ってたし他に何が記載されているのかな。見てみたいなー。無理そうだー。まぁふざけないで条件提示するか。


「そうだにぃまずアイツらとは別行動、俺の単独行動を認めてもらえるぅう?」


「それで?」


 セリちゃん、俺の方も見ないでガリガリ書き込んでいる……取り付く島もない。認めたのか認めてないのか聞けない。仕方がない祝福と加護について要求しよう。


「あとわぁ女神様のぉ~祝福と加護だけどおぉ加護の『不死!』いらないからぁ~その分をぉ祝福に振り分けてえぇほしいんだよおぉ~どっちも魔力の力でしょぉ~できるよにぃ? だって、カードの設定テキトーに決めたのセリちゃんでしょぉ~お」


「職種は?」


「これなんか格好良くてピッタリだと思うんだよにぃ『魔導士』素敵やわぁ~」


「…………」


 セリちゃんに、とっくに決めていた『魔導士』のカードを渡すと、どこからともなくノーパソを取り出して液晶背面部のスロットにカードをセットした。

 すると、凄まじい勢いでキーボードを叩き出した。


 ――……。


「プケッ!」


 セリちゃんは作業が終わったのか意味不明の掛け声でカードを俺に差し出した。どっかの『勇者』くんと違って、育ちの良さが出てしまうんだな~。

 カードを受け取り、見てみると……八つの表示枠五桁が同じ記号で埋まっているけれど……これ、異世界の数字?


 セリちゃん……なんだなー。お約束も聞いておかないとねー。


「これだとよくわからないから数値を棒グラフにしてよぉ~あと()()()()()()()()とかあるよにぃ? それも満タンにしといてぇえ~」


「グポッ!」


「やっぱしぃあるんだぁ~隠しパラメェタァ!」


 ――――。


 セリちゃん、わかりやすい! 震える手が庇護欲(ひごよく)をそそって、この子いいわ~。


 再度、作業後のカードを確認すると……表示枠だけでなく全体的に棒で埋め尽くされていて、なにがなんやらわからんのだが?

 ところが、強化、探索、解析、最適化、再構築……。他、多数あるみたいだけど棒が邪魔……これパラメータ? 職能? 隠し能力だよな。利用可能状態ですぅ!


 お得な能力を隠しとったかー。


「…………」

「まだっ?」


 うわー吐き捨てられた! これが、ご褒美なんて精神力は俺にはない。

 それに、小さい頭のお耳もお鼻もお目々も愛らしいのだが、全て充血の赤!

 なんか扉も半透明になってきていて、ここいらが潮時だ。

 欲張りすぎてバラバラではシャレにならないぞ!


 ちゃんとお礼を言わなければならんな。立つ鳥なんとやらで。いやぁ愉快愉快!


「あるかなぁ? ないかなぁ? 気がつかないからこれでいいよぉ~。こんなにも良くしてくれるなんて……セリちゃん可愛いいぃ~有能ぅう未来のおぉ女神様あぁ~ダネッ! これで安心して異世界生活が送れるよぉ~アリガトゥ」


「行きやがれなのです!!!!」


 セリちゃん神速の中段回し蹴りがせまりくる、事務服なのに(はした)ないなぁ~短めのスカートずり上がっちゃうー。


「どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 あ、パンツみぃ――で、炸裂した。


お読み下さりありがとうございます。


人生初のブックマーク、評価を頂きました。

ありがとうございます!! 大変嬉しいです!

引き続き、感想、評価を頂けるように頑張ります!

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