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第10話 異世界の朝だぞ!


 …………。


「タカシさん! どうされたんです? タカシさん」


「ねえ~タカシさん。大丈夫なの~」


「起きて下さい! タカシさん!」


 ……。


 ……なんだか大袈裟だな? 寝起き直後に、これが死相なのかと鏡を見て苦笑いした事があったけど……そこまで酷い顔をしてるのかな? 独り身だと、そんなに気にしたりしないから……とても新鮮な気分だ……起きますね。


「……ふ、ふぁ……おはようございます……みなさん」


「あ~起きた~。良かった~。……ぁ。ぇ、えへへ~」


 俺は軽く欠伸をしながら上体を起こし声を出した。レーナは膝をついて覗き込みながら胸をなでおろしているようだ。昨日の俺を助けた事とダブったのかな?

 ついつい頭を撫でてしまった。ケモミミを『もふもふ』しても嫌がらないみたいなので、これからはもっと積極的にいこう。


「……ぇ、えへっ……ぉ、おはようぅ……。だよ……」



「「……おはようございます。タカシさん」」


 ミーナとマリィさんが浮かない面持ちで俺の事を見ているようだ……。そんなに深刻な状態だったんだろうか? 逆に気がかりになってしまうのだけれど。


「おはよ……おはようございます。……俺、うなされでもしてましたか?」


「……いえ、別に……。でも心配しちゃいましたよ……」


 ミーナに思案顔をされると、整った美人さんだから非常に不安になってしまう。なんだろう? 昨日のストレスには心当たりがありすぎて……。魔法絡みかな?


「ごめんね心配かけて、表情とか酷かったのかな?」


「……酷いとかではなくて、なにかとても静かでした……から」


 いわゆる、死んだように眠っていたのか……。かなり疲労していたんだろうな。今は体調も悪く無い。精神的にも安定するだろう。心配させたくない。


「……ありがとう! 大丈夫だから! もう活力が出た来たからね!」


「…………うん!」


 ミーナの元気の良い返事に思わず破顔した。人見知りのお嬢さんと距離が縮まるのは嬉しいけれど……。何でこんなに急接近できたんだろう。最高ではある。


「……タカシさん。朝食はどうしますか? 昨日の今日なのでご用意が……」


 マリィさんが心苦しそうに朝食の事を尋ねてきた。なんでも生真面目すぎるな、無茶な言動をしているのは俺の方だから……。少しでも負担を軽くしたいな。


「朝と昼は用意して頂かなくても大丈夫ですよ。昨晩、お伝えするべきでしたね、すいません。これからは、必ずお伝えしますから」


「……はい、よろしくお願いしますね……」


 俺の気持ちが微かに伝わったのか……マリィさんの表情が少々穏やかに見える。

やはり、人当たりが柔らかいのが本来の気質なんではなかろうか? 女手ひとつで娘さんたちを育てているんだし肩肘張るのは当然だろう。揉みほぐしてあげたい。



「……も、もういいかな……? ……えへっ、えへへ~」


 ……――。


 みんなに朝の挨拶を済ませてベットから身体を出したんだが……。下半身は下着だけだったのを忘れていた。ミーナは顔を赤らめて俯いている。可憐だなあ。

 なぜかマリィさんにチラ見されたが……。素材的に珍しいからかな? そうしていると、脳内アナウンスに『再設定完了、魔法行使可能』と、知らされた。


 仕事の準備をします、と言うと三人は部屋から食堂に移動してくれた。着替えを済ませてポケットを漁ると銀貨四枚があった。魔法は現場に行く時に確認しよう。


 ……。


 食堂に行くとレーナがテーブルに突っ伏していた。まだ明け方だからな~普段は何時に起きているんだ? ミーナも眠そうにアクビをしている。そっとテーブルの対面に座り話しかける。


「ミーナ、眠いのなら無理することないよ。レーナと一緒に母屋に戻ったら?」


「は、ひゅぃ? へ、平気です! 眠くないですよ! レーナ! レーナ!」


「ぁあ~もすこし、ちょっとだけ~じっとしてたいの……」


 ミーナは照れ隠しにレーナの背中を揺さぶっている。とても愛嬌がある姿なのでこの子たちをずっと見ていたくなってしまう。するとマリィさんが張り詰めた声を発しながら食堂に現れた。


「ふたりとも何ですか! お行儀の悪い。朝のお見送りをすると言ったでしょ! しっかりしなさい。……すいません」


「そんな……嬉しいですよ!」


 マリィさんはお茶を持って来てくれた。テーブルに並べたので飲んでみようかな異世界のお茶……どんな味なんだろう?


「頂きます……ほふぅ~。美味しいです。これは何と言うんですか?」


「たんぽぽ茶ですよ」


 ……たんぽぽ茶か……。初めて飲んだけど不味くはないしコーヒーにも似ているような……って、異世界にもたんぽぽがあったのか!

 あれ? 『たんぽぽ』はどちらにも在るから『たんぽぽ』で『スクレ』は異世界にしかないから『スクレ』って事か……。そうだ、『翻訳』魔法を改良出来ないか調べようとしてたんだ。忘れないようにしないと……。



「……どうしました? お時間のことですか?」

「あ、いえ。……東の門から馬車が出ていますから、まだ大丈夫です」


「そうですか……。お帰りは何時くらいになりますか?」



「えーと……。『後の四刻と三(午後八時)』くらいには……戻れると思います。……昨日はあんなお願いをしましたけど、遅いと思いますので晩御飯は――」

「大丈夫ですよ。ふたりも御一緒したいと言ってますから……お待ちしてます」


 マリィさんが晩御飯を待っていてくれると被せるように仰った。どのような料理なんだろう……楽しみだなあ~嬉しいなあ。

 それはさておき、時間も『翻訳』魔法に組み込みたいなぁ。


「……そうだよ~一緒にたべようよぅ……」


「タカシさんのお願いですから……楽しみです」


 ……。


 とてつもなく暖かい気持ちになる。これが嬉しみか……なんてな! 照れ照れでミーナに石盤を用意すると伝えて、レーナに勉強頑張ろうね、と言うと土産を要求された。果物が良いとか……『スクレ』以外にもあるのかな?


 マリィさんがまた俺のたんぽぽ茶を注いでくれたのでタイミングを合わせ一緒に飲んでみた……片目で追うと、目を瞑って甘噛するように飲んでいる。良いなあ。


 あー仕事行きたくねえ……とはいかないよな。まずは稼ぐのだ!


 …………。



「では! 行って来ます!!」


「「「いってらっしゃい!」」」

「はやく帰ってきてね~」



 みんなが宿屋の前から見送ってくれた……。なんだろうこの高揚感……初めての感覚だ。計り知れない。労働への意欲が増すね。素晴らしい。絶対に帰ってくる!

 ……。俺はテンション爆上げの状態で夜明けの東の門へと向かった。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 『みかづきのほとり亭』から東の門へは弓なりな道を東に向かえば迷う事はないので楽だった。そして、東の門に近づくにつれ人出が増えて喧騒の坩堝(るつぼ)となった。


 俺はまず昨日乗った馬車を探す。道脇には手配師と呼ばれる連中が仕事の内容や条件をがなり立てて人を集めている。昔に見たドヤ街のドキュメンタリーみたい。


 門の近くの寄せ場にナンザさんが居た。親方まで人集めしてるのか、と感心するけど人手不足ってのは本当みたいだな。声をかけられる状態でもないので一時離れ門の周辺を観察する事にした。場所を覚えたし時間はまだ大丈夫だ。


 『ミガルツの街』の北東方向にいろいろな遺跡やダンジョンなどがあるそうで、冒険者の人々が出発して行くのを眺められる。馬車で行く人、大荷物な徒歩の人。


 ケモミミの女の子と触れ合っていたからなのか、容姿や装備がコスプレには見えなくて、なんとなしに恐ろしくなった。あれで怪物(モンスター)を殺っちゃうんだ……。

 だいたい五、六人の固まりで移動している。女性の冒険者が多い気がした。男はリーダーっぽいのがいれば荷物持ちなのも……。男だけのパーティは逞しいな。


 女性だけ三人のパーティーも発見! 戦士風、剣士風、魔術士風……。なかなか凛々しくて格好良い! だけど、なにやら男と揉めてるぞ!! これはこれは。


「なあ、考え直してくれね? わりいのは俺でいいから。あいつらとは別れ――」

「ウルセーよ! テメエと付き合った覚えなんかねーぞ!! その勘違いがウゼーんだよ! 潰されたくなきゃトットと消えな! 朝っぱらからフザケンナ!!」


「ヘレンちゃん。出発前に剣を汚しちゃうのはどうかと思うのね。ケイトちゃんがブシュッ! としてジュッ! としちゃえば良いんじゃないかしら? ねえ?」

「やだよそんなの。きたないもったいない。アリサが溺れさせれば? 身も心も」


「ご遠慮いたします。使えない男は必要ないの」


「なあながっ――」

「ヤレやれ。お情けで組んでやったらコレだ。行くヨ!!」


「「……」」


 戦士風のが蹴りをブチ込んで絡んでた男は蹲ってる……。戦士風のおねいさんは獣人みたいだけど……アレを『もふもふ』出来るツワモノは存在するのかな?

 剣士風と魔術士風のおねいさんは普通の人種っぽいかな……。全員が若そうだけど相当な修羅場をくぐってそうな雰囲気……。仕事も人付き合いも……凄ッ!


 そういえば『冒険者組合員証(ギルドカード)』を作れって言われてたな……。怖いから後回しにしよう。俺にはチートがあっても、いきなり切った張ったは出来ないかなあ。

 とは言え、今後も肉体労働だけで生きていくのもな……。仕事を探さないと駄目だろうが、まずは情報収集だな。



 …………。


 そろそろ頃合いだろうと馬車の所に戻った。ナンザさんが疲れた顔をしている。


「おはようございます。ナンザさん! タカシです」


「あ? ……タカシ? ……タカシか。うちで働いている奴か?」


「そうです。馬車に乗っていいですか? メシは向こうで食っていいですか!?」


「おう! そうだった! タカシだな! 早く乗れ!! 食え!!」


 なんか全然、覚えていてくれなかったみたいだけど……まあそんなもんだろう。馬車に乗ると俺を入れて四人だけ……まあ俺の預かり知らぬ事情があるんだろう。


 …………。


 ナンザさんはこの場に残り人を集めるそうで馬車は現場に向けて出発した。面子は一人だけ獣人だった。特に会話もないので、魔法の確認をする事にした。


 ……。


 さて能力から行くか……。


『最適化』魔法、魔術式の最適化

『再構築』魔法、魔術式の再構築

『強化』自身の肉体強化。

『共有』対象は有機体限定。魔法、魔術式、魔力を共有。要契約。

『並列』自身の思考を並列化。使用時間の乗数(並列数二~)の行動制限

『支援』魔法、魔術式の自動適応

『探索』対象の探索

『解析』魔法、魔術式の解析


 なんか自由すぎて使い所が分からんな。『並列』なんか使ったら動けなくなるのヤバイじゃん。『共有』なんかも対象が有機体……契約ってのがな、文化の違う人とか条件の摺り合わせが面倒だし動物とか怪物? 意思疎通できるのかな?

 わかりやすいのは『強化』だが、昨日『過負荷状態』に陥ってるから何か怖い。実験するにしても加減が分からない。失敗したら稼げない身体になってしまう。


 だいたいあの脳内アナウンスがなんなのか分からない。あれが『支援』を使って物理障壁やら生体維持を使ったような気がするんですけど! ……返事がない。


 魔法の知識が足らないのが原因なんだろうけれど……。もし変な奴に知られたら利用されたり殺されたりするかもだし独学と言っても今日から文字を習うレベル。

 あまり人目のある所で魔法を使えないな。魔道具は、どうやって作られるんだ? 魔石とは? 結局、専門職なんだよ。素人がゴテゴテにした所で持ち腐れだ。


 まあ『四元素魔法』だけでも凄いからコツコツやりますか! ……それ『微風』指先から、ささやかな風が起きたぞっ! 凄いぞっ!! …………。


 …………。


 『翻訳』魔法に王国の時間と暦を組み込んで下さい!! お願いです! ……『記憶抽出……完了。変換情報設定……完了。魔術式再構築……完了。要検証』

 …………。え? マジ? ……では、さっそく御者さんに話しかけてみよう。


「えっと、すいません。今日は何月何日ですか? 現場はあと何分くらいですか」


「あ? 今日は三月三十一日じゃろ! 現場まであと二十分かの」

「あ、あ、ありがとうございました!!」


 ありがとうございます! ありがとうございます! またよろしくお願いしますね~。…………。返事はないけど、とてもイイヤツに違いない。ありがとう!


 ◇ ◇ ◇ ◇


 それから、馬車に揺られて二十分くらい? で現場に到着した。

 そして、仕事場に悠然と乗り込んだ。一番乗りである。


「今日も頑張ろうじゃないか! 労働者諸君!!」


お読み下さりありがとうございます。


ご意見、ご感想など頂けますとありがたいです。

よろしくお願いします。

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