3 不憫
起きました 背中が痛いです アーティファクトにも痛覚ってあるんだ?
「痛ぁい...せめてクッションとか敷いとくんだった...」
日の傾きから午前7時 昨日は3時ぐらいに寝たはずだが人間でないからなのだろうか睡眠時間はあまり長くないようだ
改めて周りを見渡せば所々岩肌が見える砂地の荒野が広がっている 到底生き物が住める環境ではない
その証拠に現在腰を下ろしている岩群の隙間に白骨化した死体が転がっているのだ 正直居心地が悪い
「さて アーティファクトだから食事はいら(グゥゥゥゥゥゥ)...」
はて?今まるで飢えている獣が発したような声が聞こえたような...さては近くに魔物が!?
すいません虫です 僕がお腹に飼っている虫さんです
「おのれ自由意志め...ここでも僕の行動を妨げるか...でも食料を持っていない僕は欲など持たない!」
ただ単に欲を満たすことが出来ないだけです ハイ
それからという物 光学迷彩は起動したままだったので即座に移動を開始したミストボルディア
この荒野実は神代初期から存在しており名はないのだが食料を譲り受けるため近くの兵舎に立ち寄った時 円卓と聞いたので間違いない
名前の由来はまず荒野が円形である事 数々の武勲を打ち立てた者のみが集う場所 強者を決める場所という理由から円卓と呼ばれているそうだ まるで勝利の剣と理想郷な鞘を持つ王様が出てきそうな場所だ
それはともかく
ガツガツとはしたなく干し肉を貪る彼女は今多少の砂埃を巻き上げて走行している
彼女が装備している赤黒い鎧は全て神代アーティファクトなのは言うまでもないないだろう
その足装備には車輪が付いており自動で回転しているのが分かる 魔力で回転させているのだ
そのおかげで移動時間は大幅に減っていて数日は掛かる荒野の出口まであと僅かなのだが...
「検問...通らなきゃだめ...かな?」
人族&土人族領に入るには当然と言えば当然なのだが検問がある
しかも厄介なのが入国許可書を配るのも兼ねている ご丁寧に書類によるあれこれとかも
あの場をスルーするのは簡単なのだがその後が大変なのは言わなくても理解できよう
「ならば一択 正々堂々正面突破!」
ミストは考えるのを辞めた!
起動していた魔法を解除したあとさりげなく検問の列に紛れ込むと数分後順番が回ってきた
「次の人ぉ 名前と出身地をぉ...」
呆けて顔で固まる検問官 そこで固まるのはよくない でも仕方ない なんせ造形美と思えるように彼女は可愛いのだから もう一度言おう可愛いのだから!
「ミストボルディア 出身地はレイディバル王国です」
簡潔明瞭に答える すぐ行きたいのだがそれは検問官の欲が許さない
「な...なぁ! この仕事終わったらよかったらお茶「お断りします」...」
項垂れないでよ...やはく通りたいんだから...
姿を変えればいいだろって?最初は幻影で姿を変えようとしたよ?でも門の枠組みを見て断念したよ
門型神代アーティファクト カンパー 看破の魔法を埋め込んだアーティファクトで機能は通った者の姿や嘘を見抜く物だ 前提条件としてプロフィール兼調査用紙を組み込む必要があるため手間がかかるのだがその性能はアーティファクト第1号である僕にも通用する程だ
なので正々堂々正面突破しか手段がない
「そ...そっか...じゃあまた会うことがあればお茶しようね...?」
「おいおい何ナンパしてんだよ後輩 そういうのは仕事が終わってからにしろ 俺だって我慢してんだぞ?」
「す...スンマセン!」
ナンパの対象を見ながらそう言うのは些かどうかと思うけど仕事熱心なのはいい事でしょう
「おら嬢ちゃん後輩が邪魔したな また絡まれない内に速く行きな!」
「はぁ〜い では先輩さんまたいつか〜!」
すこし頬を赤く染めながら手を振る先輩 男気溢れる中に優しさを感じるいい男が第一印象でした
僕が去ってから数分後
「さっきの娘可愛かったなぁ...俺ももう少し若ければなぁ...」
「いや無理だろ お前数年前までデブだったじゃん」
「先輩...」
その後 銀髪のアーティファクトに求婚しようと心に決めた検問官が仕事を辞めて旅に出たのは別のお話