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神代兵器の自由意志  作者: ぶくっと醤油
1章
10/32

10 神代アーティファクト

魔物が跋扈するラキュース王国外壁正面の草原

その異様さは魔物がひしめき合う事によって生み出されたのではなく 人が魔物を 魔物が人を殺さないことによって生み出されたのですらなく 草原の中心 魔物と人が入る事を拒む巨大なクレーターによって生み出されたのですらない

ならその異様さは何か

1つは銀髪でとても小柄な少女と薄緑色髪の少し背の高い少女が殺しあっている事

2つはその少女達には似合わない巨大な槍と巨大な弓

3つは銀髪の小柄な少女の魔力が脈打つ空色の左目に背中から生える白銀の3枚羽と白銀の鋭い爪と鱗の左腕

薄緑色の少し背の高い少女の金色の竜眼の左目と漆黒の翼 漆黒の爪と鱗の左腕と脚

まるで竜人のようなその姿は見た目以上の迫力を持っている


2人で殺し(壊し)合っているそれらは人外のような必殺級の技を躊躇いなく打ち込んでいる

素人から見ても間違いなく人を殺せる威力

希に見せる強者ですら見えない速度の攻撃

近づくのを拒絶するような地を抉る衝撃波の嵐


破壊と穿壊 壊すことに適した2人がぶつかり合うその光景は伝説にある勇者と魔王の戦いなのではと疑いたくなるレベルだろう


「リーリエ 壊して元通りにしてあげたいのだけどなんか強くなってないかな?」

「まさかぁでもミーディアに褒められるなんて嬉しいわぁ 今の私リミッターが常に外れてるもの」


クレアシオンシリーズには共通の機能 格納庫 魔力操作 魔力変換 飛翔 意思凍結 リミッター解除がある


格納庫はドレッドノートを取り出したように武具や食料といった固形物を格納できる

魔力操作は体内の魔力を放出して体や武具に纏わせて性能を高める事が可能

魔力変換は魔力を火や水といった魔法の概念に沿った物質に変換することが出来る 応用すれば無詠唱といった魔法名だけで起動できるのと似たことが可能だ

飛翔はその名の通り

意思凍結は一時的な自由意志の凍結を行い完全な兵器として行動が出来る機能 正確には理性が無くなると言った方が正しいだろう


そしてリミッター解除 能力向上系の機能で身体に負荷が掛かる高速機動を制限したり一部機能が使えなくなるが解除してしまえば自らのコンセプトに沿った最大最善の行動を常識外れの動きで実行可能となる

━━━まぁ負荷が大きく自壊する事も否めないが...


リミッターを解除しているならリーリエの通常以上の近接戦闘も納得できる

それには遠距離攻撃だけでなく近接戦闘にも適したリーリエ専用の弓カタストロフィドライブの恩恵もあるのだろう


「自壊機動...ね...やっぱり外されてるかぁ...モードセラフにリミッター解除 これじゃ僕もモードセラフとはいえ押されかねないかな?仕方ない リミッター解除!」


クレアシオンシリーズに搭載されている共通機能の他にも固有の機能がある

僕の場合モードチェンジと呼ばれる機能で暴走状態になるハザードと半竜化状態のセラフ

アリサに置いては神聖特攻と神聖耐性という神やその直属の部下である天使や使徒に有利な固有機能

リーリエは僕と同じモードチェンジセラフが搭載してあるので身体の半分が竜のようになっているのはその為だ 固有機能に関しては身体強化系が殆どだろう


「ミーディアの白銀のモードセラフ好きよ?神々しいもの でもリミッター解除で黒くなるミーディアのセラフも好き!さぁお互いに本気になった所で殺し(壊し)あいましょうミーディア!?」

「どうもありがとう!でも僕は死ぬ気なんて毛頭ないからねリーリエ!」


会話によって止まった金属がぶつかり合う火花と金属音 辺りを抉る衝撃波が再び騒ぎだす

本気を出した神代アーティファクト同士の戦闘は先程とは変貌し最初から高速域の戦闘となる

両者惜しみなく機能を使用し 宙で火花が舞ったと思えば次の瞬間3メートル離れた先の地面が爆ぜる

かと思えばいつの間にか中央のクレーターに鍔迫り合う2人が現れ皆が姿を捉える前に姿を消し去る


それを遠くで見ていたラキュース王国現国王が隣に立つ神代アーティファクトに問う


「あれは...あの力はいったいなんなのだ...アリサ殿...」

「先程の問いの回答ですがあれが本物の神代アーティファクトです 国が保管している武器のような紛い物とは違う本物同士の戦闘 何故神代ではアーティファクトが恐れられていたのか目の前の光景これが答えです」


必然や当然ではなく()()()()()と思わせるアリサの言葉に分かりきった事を聞いた国王は落ち着かなければと己を恥じるように顔を下げる


その間にも目の前で起こる異常は激化していく一方だった


「りゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ガァーンッ!!!と槍と弓がぶつかったのでは起こらないような まるで戦縋で打ち合ったかのような轟音

今まで捉えられなかった2人の姿が今度は皆の目に映る

明らかに一方の動きが鈍くなっている証拠だ 言わずもがなリーリエである


「そろそろマズイんじゃないかなリーリエ? 自壊まであとどれ位だい?」

「えぇとてもマズイわ持ってあと5分くらいかしら でも逆に言えばその後は解放されて晴れて2人の元に居れるって事でしょ?なら残りの5分 ないと思うけどしっかり耐えてよね!」


そう言い放つリーリエは飛翔し天高く飛び上がる ミストも追いかけ並べばたちまち火花が飛び交う

4分経ってもう少しという所でそれは来た

余力を残さないつもりか一瞬で遥か上空まで飛翔し上を取ったリーリエが下方に弓を向け言葉を発する


「ゴメンねミーディア やっぱり最後はこれを撃たなきゃダメみたい」

「まぁ最後はそうなるよね...通常攻撃で相殺出来るのがないから僕も遠慮なく撃たせてもらうよ」


それは人間にとっては突然に訪れた


『我は穿壊の権化 真理を穿ち 理想を壊す』

『我は破壊の権化 真理は壊れ 理想は破滅の道を辿る』


リミッターを解除した時にのみ扱える必殺技がある


『全てを穿ち 1点に繋ぐ 其れは祖の始まりにして終わりの姿』

『希望は断たれた 全ては廃れ 我が名の元崩れ去る』


最上級クラスという数百人いてやっと扱える魔法がある


『目覚めるは星の息吹 吹き荒れるは穿壊の星矢』

『破滅を 滅亡を 破壊とは絶望を辿る不変の1刺し』


それを超える 正しく神殺しと称された技


『星屑と化せ《スーパーノヴァ・エクスプロージョン》』

『崩壊を見よ《ラグロンドニア・オーバードライブ》』


星とも見える巨大な槍が落ちてきた

太陽のような巨大な熱線が放たれた


相対する神殺しの力 収束しあい巨大なエネルギー球が生まれ巨大化していく


一拍


ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!


爆発 爆裂魔法ですら到底及ばない轟音と爆風と衝撃波がミストとリーリエを包み込む

それは地上にも影響を及ぼし 地や木々が衝撃波によって抉れ 折れ 爆風によって土や木 人と魔物を巻き込んで吹き飛び 爆風に連れられた煙が周囲を覆い 灰色の世界を作り出す

外壁は衝撃波をまともに浴びせられヒビが入る

轟音が王国中に響き渡り 民が怯え 生き物は逃げ出す

世界が終わる前置き そう見えはずだ


暫くして煙が晴れた しかし一瞬前までは草原だったそれに冒険者や騎士 国王を含め魔物ですら目を向いた

煙が覆う前までは確かに草原だった しかし見えたのは荒野 土と石が剥き出しになった緑のない場所

円卓を模倣したようなそこは30キロメートル先まで続いていた


それを見た騎士や冒険者はこう思っただろう''化け物''と

本物の神代アーティファクトと知らされた国王は知っただろう''神代の恐ろしさ'' ''円卓の正体''を

そして皆こう捉えただろう''逆らってはならない絶対強者''だと


「ははは...見事に相殺されちゃったよ...貫通特化なのになぁ...最初の神代アーティファクトにして最後の最高傑作とは...よく言ったものだよ...」

「主が言ったことだから事実だよリーリエ それに僕のだって貫通特化だからおあいこだよ それじゃ自己修復は起動しておくし時間が経ったら起動式を読み込んであげるから今はグッスリ休んでね 隊長命令だよ」

「ふふふ...相変わらず仲間には甘いわね...命令なら仕方ないわ...数時間後にまた...それじゃお休み...」


中央のクレーターに降りていた僕はリーリエを抱えアリサの元に行く


「お疲れ様です隊長 陛下には全て説明しておいたのでリーリエに罪は及ばないでしょう」

「ありがとうアリサ こういうのは僕の仕事なんだけどね...」

「いいんですよ リーリエはお調子者に見えますがとても仲間思いですからね とても好感が持てる仲間です それに...同志ですから」


最後のはよく理解でき...いや思い当たる事はある...けど考えないようにしようそうしよう


「っさ 取り敢えず脅威は去ったし これにて一件落着かな リーリエの修理もあるしちょっと忙しくなるよ?アリサもランガル公爵家だっけ?頑張ってね」

「もちのろんです!」


ほんの数日の間 ちょっと出向いた先で親愛なる姉妹(アリサとリーリエ)と出会えた


これから向かう先では親愛なる兄弟(殺戮と消滅)と出会えるかもしれない


新たな出会いもあるだろう


世界を滅ぼせる兵器である僕が言うのもなんだがここが1つの分岐点だろう


これからの主のいない世界での目標


安心して暮らせる安全な場所を探そう

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