プロローグ⒈
今回から『7つの大罪』編です。
ーー昔、昔日本国のある何処かの平原に、大きな灯台と、多くの家畜が養殖されている、日本の農家でも特に大きな農業施設を持つ、二人の老夫婦が居ました。
その二人は農業が上手く行き、食料にも恵まれ、何不自由ない生活を送っていました。
二人は食べる事の喜びを感じ、他の家畜にまで上級の餌を与えていた。
そんな二人を見つめる、ある小さな子豚が、あんまりに羨ましそうに見るので、二人は母性そのままに持っていた果実を与えてしまった。
その果実を食べた子豚は、まるで魚のようにその場に跳ね上がり、ブヒッと鼻を鳴らし、「もっとくれ」というようにせがんできた。
しかし、勿論あげる訳もなく、二人は彼にあげる食料は、1日1個までと決め、養殖場を出て行った。
そのあくる日もあくる日も、毎日彼は、二人が持ってくる美味しい食べ物を1日1個ずつ食べていた。
故に彼は満足出来なかった。
何故あの二人は自分にだけ1日1個だけしかくれないのだろう。
何故あんな美味しい食べ物をたらふく食わしてくれないのだろう。
日に日に彼のその思いは強くなっていった。
そして、彼に最高のチャンスが舞い降りた。
満月の夜。皆寝静まり、二人はこの農場には帰りいない。
そして、何よりも自分達の自由を奪っていた、閉じ込め枠の鍵が開いていたのだ。
動くなら今しかない。あの時、あの果実を食べた時のあの感覚。忘れられるわけがない。
彼はのそのそと歩き、枠を飛び出し、養豚場を抜け出した。
自慢の嗅覚を使い、大量の食料が置いてある大きな倉庫に忍び込んだ。
彼は歓喜した。
忍び込んだ目の前には、大量の食料や、果実、普段の餌が、あらゆる所に置いてあったのだ。
彼は、鼻を鳴らし、小麦の袋を破り、食らいつく。
棚を開け、餌袋を引きずり出し、また食らいつく。
果実も、肉も、野菜も、餌も、魚も植物もなんでも全部食らいつくした。
『食欲』が満たされていく。
やがて欲望を忍ばせた彼の腹は大きく膨らみ、歩くのも精一杯だった。
その日の朝、農場にやってきた二人は倉庫に行くと、それは見るも無残なありざまになった部屋に、一匹の大きな豚が、大きな音を立てて横たわっていた。
この状況で二人は事を察した。
男は怒った。
その豚の腹を蹴り回し、罵声を飛ばす。
女は嘆いた。
食い荒らされた食物達を拾っては泣いた。
豚はーー
殺した。
二人の老夫婦を、己の牙と爪で、何度も何度も踏みつけて。
やがて彼は思い立つ。
果たして人間の肉は美味しいのだろうか。
自分は昔、仲間が無理やり何処かに連れていかれ、二度と戻っては来なかった仲間の事を思い出した。
恐らく昨夜食べた肉は、それらのものなのだろう。
彼は実行に移した。
二人の人間の皮膚を被り、肉や内臓を喰らう。
味覚が研ぎ澄まされ、新鮮な味わいが口の中に広がる。
血の味が酸っぱく下に絡みついてくる。
その日からその豚は『殺し』に快感を覚え、農場のありとあらゆる食物を食い荒らした挙句、遂には己の食欲の為に、仲間や他の家畜おも手を出し、全てを喰らった。
以後、その有名な農場は、日本各地でも有名になる程、その残虐な事件として、人間や妖怪達から、
『大食の化け豚』
と呼ばれた。
今もなおその農場事件は解決されていなく、毎回何人もの妖怪や人間が調査に乗り出し、訪れたが、その全員が、二度と戻ってくる事はなかった。
ーー今回は…
そんな化け者が住まう平原の農場に、二人の小さな旅人が、迷いこんでしまうお話。
つづく
GW初日。家でYouTube見ながら描いてます笑。
今回からは『大食編』です。3話ぐらいですかね一編につき。
じゃ次回もお楽しみに。ほんじゃバーイ。