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第3話 わたしとあなたは小人族

はい、第3話です。

キャラは1話1話で徐々に出して行きたいです。


「え?」


 いきなり耳に入って来た聞き慣れない女の子の声。

俺は反射的に後ろを振り向く。

すると後ろで俺とそんな大差ない歳の女の子が、俺をただ見つめていた。


「え?」

「え?」

「いや、誰?」

「え、誰?」

「いやだから俺が聞いてんの誰?」

「誰?」

「俺は御伽(おとぎの) 一寸(いっき)。ある村から出て来た、ただの小人だ。君は?」

「わたしは、小末名(こまつなの) 若宮(わかみや)。な〜んて大層立派な名前なんだけど、やっぱりちょっと古臭いかな?」


 とニコニコしながら俺に問う彼女は、日本では珍しい黄緑色のショートカットに、薄紫色の着物を着て、裸足の元気で明るそうな印象。

俺は彼女に問われた事を思い出し、軽く話す。


「あ、ああ俺は別にいいと思うぜ? 今時、そんな形式ばった名前なんてそういないし」

「あ、そう? よかった」


 と言ってニコッと笑う彼女。

俺はその笑顔に、何故か親近感が湧いた。

だが、それもそうだ。何故なら俺は、同じ同族に、しかも初めて女の子と話したのだ。

内心嬉しくもあり、少しドキドキしながら彼女を見ていた。

なんて思っていると、彼女がまた聞いて来た。


「君……小人……だよね?」

「え? ああ、うん」


「わたし、何気同じ小人族に会ったこと一度も無いんだよね〜」

「奇遇! 俺もだ。そう、だからちょっと今内心ドキドキしてるんだよね」

「あー、わかる! そんでなんかすごい親近感湧くんだけど」

「そうそうそうそう」


 と二人で笑って話し続ける。

どうやら彼女もこの寝殿で育ち、貴族達に可愛がられて来たようだ。

そんで暇してるらしい。


「あー、なんか似た者同士だね、わたし達」

「確かにな。同族だからか?」


 双方初めての同族の仲間に出会って、ここまで分かり合えるとは。


(ん? 待てよ? もし、ここで彼女と仲良くなって、良ければ共にお供してくれたりしたら……

……俺としてもかなり助かるな……よし、いっちょ誘ってみるか……。)


「で、まぁいきなりなんだけど俺、旅してるんだ。一人で」

「へぇ〜。こんな小さくても行けるもんだね、案外」

「ああ、全然案外行けるもんだ。ちょっと面倒な所もあるけど、俺はその『小人にしか』出来ない事が面白くて仕方がないんだ。

だけど、俺が目指す道は、苦難の相次ぐ孤高の旅。

たった一人で行くには少々心細いのだ。

それで……今回は同じ小人族で、話が分かる君に……」


「旅のお供に、なってくれないか?なんて」


「……」


 彼女は俺のその発言に、少し驚いた様子で、まっすぐ俺を見て黙り込んでしまった。

だがそれも一瞬だった。


「いいよ」

「え、マジ? いいの?」

「うん」

「苦難相次ぐんだよ?」

「いいじゃん、それが旅ってもんじゃない?」

「……」

「それに……わたしなんて言うか、今のこの現状に、なんか満足出来ないんだよね。

でも実際ここに住んでて、自由に出来るし、美味しいご飯も毎日食べて、夜はぐっすり寝て、本当に幸せだと思う。

でもなんか……本当に『それだけ』って感じ」


「……」

(もしや……)


「だから正直に言うと、現状日々の生活、安定し過ぎてつまらないってのがあるのよ。

だから何か『刺激』になるものがないかなって色んな事してた所を、ちょうど君とこうして出会ってるから、あ、これは何かあるかなって思って」


(一緒だぁぁぁ‼︎ 『刺激』とか言っちゃってる時点で話し通じるどころか思考まで似かよってんじゃねぇか! どんだけ小人暇してんだよ!)


「……」

「おーい、聞いてるー?」


 と言って彼女が眼前に手を振ってくる。

俺はその事に気付き、


「お、おう。よし、気に入った‼︎そうなりゃ早速出発の準備だ。奴らが食い終わるまでにある程度道具揃えるぞ!」

「オーケイ。まずはわたしの部屋と小道具部屋に行くよ。それから、みんなに挨拶して…」

「あー、それはダメだ」

「え? なんで?」

「そりゃそうだろ。今途方もない旅に出るっていきなり言われても、快く許す奴はいるか?それに、それで俺まで巻き込まれて面倒事になるのだけは避けたいしな」

「んー、でもね〜、あの人達には今までずっとお世話になって来たからな〜。ちゃんとお礼はしたいわけなのよ」

「じゃ置き手紙とかにしろ。何もせずただ出て行くのもあるが、相手が貴族なら侮れん」

「ふーん、じゃそうしよう。後は……道具と身なりとかかな」

「うん、身なりや装備は、自分のスタイルに合った奴を選べよ。俺達小人は、素早さと自由だけが取り柄だからな」


「よく知ってるね」

「伊達に14年暇してた訳ではないからな」


「じゃ後でまた此処で。くれぐれもバレるなよ? 頼んだぜ『若』!」

「うん! そっちもね、『一寸』!」


そう言って二人ともその場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それからしばらく経ち、二人ともまた此処に集まった。

彼女は緑の風呂敷を首に巻き、丸い菅笠を被り、小さな編み棒を背中に携え、そして手には青い球体を持っていた。


「それは……」


と用途を聞いてみると、


「あ、これ? これはね、

テッテレー! 『ゴムボール』ゥ〜」

「文面越しには伝わりにくいと思うんだけど⁉︎」

「説明しよう、このゴムボールは、その名の通りゴムを丸めてボールにした、超弾性球体なのである‼︎」

「なのであるじゃねぇよ! でそれ何使うんだ?」

「あ、いや、わたしこんな体だけど、蹴鞠は得意なの。でしかもこれゴムじゃん? だから、これ使えばわたし、絶対的エースストライカーになれると思わない?」

「いや思……わないけど、まぁいいや、ある程度準備出来たな」

「で、いつ出るの?」

「出発は奴らが起きてこない早朝に出る。だから今宵は最後の夜、存分に楽しむといい」

「……そうだね」


 そう言った彼女の言葉からは、少しの悲しみと寂しさが伝わってきた。

別れの寂しさはいつだって、日々の当たり前を尊く思わせるものだと感じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 深夜。闇夜を照らす月が見えた頃、第1拠点から俺はその月を眺めがら、あの老夫婦を思い出していた。

俺が昨日、こんな事を思い立たなければ、今頃まだあの家で暇してるんだろう。


 だがあの人達にはこんな形でしか別れられなかった。

どうせ別れるなら、ちゃんとした形で別れたかった。

それが、俺の唯一の心残りである。


「今頃どうしてるんだろうな……」


 あの二人を想う。

すると何故か突如悲しみが腹の底から襲って来た。


「へへ……やっぱりなんだかんだ言って、あの人達が結局は好きだったんだよな……」


 そんな悲しみと温かさを抱いて目を瞑り、

眠りに落ちた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「よし、じゃあ行くか!」

「うん」

「どうだ? 気分は」

「最高だね。実は昼に寝ちゃったんだけど、そのおかげで今全然眠くないよ」

「ふーん。あれ? 昼、台盤所で寝てたのは……」

「あ、それわたしだわ。あとなんかあの時お尻触られてた様な気がしてたんだけど……」

「……すまん」

「……」


すると彼女が顔を赤らめて言う。


「……いや別に良いんだけど、、その、そういうのは、もっと交友を深めて……」

「やらねぇよ⁉︎」


 二人は外に出る。町は日中のあの雰囲気とは打って変わって、非常に静かで、まるで誰も居なくなったみたいに不思議な雰囲気だった。

そんな中、俺と若は寝殿の南門の前にいた。

彼女は後ろの門を見上げ、


「お世話になりました」


とそう小さく呟いた。


 それから少し経ち、町の端の方まで来て、

色々喋りながら歩いていた。


「で、一寸の『夢』は何?」

「夢?そうだな……。……うん。俺の夢は、この日本中を旅して、その人の考え方とか、在り方とか、そう言ったものや、土地や歴史とか、そう言ったもんまで、そいつらの『欲望』から生まれたものを見に行きたい。まぁ〜言うと『日本の全てを見に行きたい』ってとこかな」

「お〜」

「それと、これまた外せないのが、小人だけが手にすることが出来る『欲望の願望機』ってのを手に入れて、いつか絶対幸せになってやるってのがある」

「……ねぇ、なんでそこまで『欲望』に拘るの?」

「なんでだろうな。俺、もしかしたら、バカみたいに真っ直ぐ、自分の欲望に嘘をつかない……『馬鹿正直な奴』が好きなんじゃないか? 俺、最初に彼処(あそこ)を出る時に初めて嘘をついて、その時に気づいたんだ、『嘘はありのままの自分を削って行く』って。だから、これから真っ直ぐに、決して自分に嘘をつかないと、誓ったんだ」


 すると、彼女は俺の話しに心打たれたのか、そのキラキラした黄緑の両目を向け、熱く話し出す。


「素敵! 同じ小人でも尊敬するよ! その志、その夢、すっごい良いと思うし、いつか絶対叶うとも思うよ!

だってあなたはとても優しくて、今の自分に満足してない、その『欲望』がある! わたしは君みたいな人を探してた。この日本を、変えてくれそうな人」


 なんて熱弁されたら、すんげー自分でも恥ずかしくなってくる。


「え〜、ちょっとそんなこと言われたら俺照れちゃうじゃねぇかよ〜やめろよ〜」


「……分かった! わたしの夢は、『あなたのその欲望を叶える事』。あなたの夢を叶える事がわたしの夢。だから絶対叶えるって約束してよ」


 と言って、彼女は小指を差し出す。

俺はその小指に自分の小指を引っ掛け、


「ああ、約束だ」


 そう言って共に誓いを結んだ。

『俺の夢を叶えることが夢』と言ってくれた彼女は、少し頬が赤くなりながら、照れた様にニッと笑ってくれた。


 その日、俺に大切な人が出来た。


この出会いが、俺の人生最大の起点になる。



 互いに笑い合った二人の小人は、優しく照らしながらも落ちて行く月を背に、明日の光に向け、薄紅に染まる町を歩いて行った。



つづく


ニコニコ超会議が終わりますね。

昨日バーベキュー行ったからあまり見てませんが。

次回もお楽しみに。バーイ。

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