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第10話 月光下の廃旅館

最近マジで太りたいなと考える今日のこの頃。


夜。

二人の旅人と別れた後、薄暗い竹林を、提灯片手に俺らは何処か泊まる宿屋がないか探していた。


「にしても良かったね。菅笠買って貰って」

「ほんとですよ。僕が鬼だと知られれば人間に大分軽蔑されますからね」

「……なぁ。なぜ人と妖怪はこうも僻みあっているんだ?人と妖怪同士、共に支え会ってけば日本の未来は明るいのに」

「……ま、種族の違いもありますが、そうしたいのならもう既にしている筈です。だけど現状、日本と妖怪が共存して暮らしているなんて方が少ないでしょう。それぐらいお互い信頼していないんです。だからお互いに種族の『(テリトリー)』を作ってしまったんです」

「種族の壁……」

「まあ、て言ってもこの日本有数の巨大村、『天幻村(てんげんむら)』という村は、今でも多くの妖怪や人が共存して生きているらしいです。どうやって行くのか謎ですが」

「そいつはいいや」


そんなことを話しながら目の前に現れたのは、月の光が微かに当たる大きな旅館だった。


「おお、丁度いいところにあるじゃん。どうするお二人とも」


と聞くと、若は


「いいよー。どこでも」


鬼童丸は、


「なぜこんな所に旅館が?……まぁいいか。じゃあ二人とも、隠れて」


とのことなので、俺と若はポーチの中に隠れ、鬼童丸はゆっくりと扉を開けて中に入ると、中は以外にも綺麗で、和の木造建築ので、薄暗かった。


「お待ちしておりました。さぁさ中へ」


と出迎えてくれた白髪の老婆の仲居さんは、そろそろと奥の方に歩いて行く。

鬼童丸は少々疑心に思いつつ、仲居さんに連れられ、襖を開けると8畳の部屋。

仲居さんは


「それでは今夜はごゆっくりお休み下さい。それとですが、この旅館の掟で御座います、

決してこの部屋から出ることがないようにお願い致します。では」


と言って理由も聞けずにさっさと出て行ってしまった。


俺らは安全を確認し、ポーチから出る。


「おい……この旅館、なんかおかしくないか?」

「確かに、あの仲居さんもなんか変だし、他の旅行客がいる気配がない」

「わたし、ここなんかいやだな」


と若が言い出す始末。

俺らはまた何か厄介事に巻き込まれたらしい事に気づいた。


「とりあえずは……眠たいかね君たち」

「半々ですね」

「わたしは結構眠たいわ。団子食い過ぎた」


「そういや今日俺なんも食ってないわ」

「あ、あれありますよあれ。羊羹」

「おっ、いいねぇ。てかなんで羊羹を……高いのに」

「細かいことは気にしないのが鬼ですーー」

「あ、うめぇわ。流石は羊羹だ」

「人の話は最後まで聞きなさいよ‼︎」

「お前人じゃないだろ‼︎」


「いやにしても美味いーー」


(もっと…… もっとくれ…… もっともっともっと……)


「ーー⁉︎」


その時、羊羹を平らげた俺の中から、『何か』の声が心の扉を叩くように囁いた。

心は満足しているのに、心の壁を叩くように食欲が襲いかかる。その感覚がやけに気持ち悪かった。


「どうしました?」


と鬼童丸が話しかけた時、ふと我に返り、


「あ、ああなんでもない」

「……?そうですか。じゃあ若様は僕が寝かしますよーーてもう既に寝てるやないすか」


なんて事いいながら、暫くすると鬼童丸もつられて寝てしまった。


(にしても怪しいな。本当に怪しい。「お待ちしておりました」と言ったという事は前々から知っていたということか?それに客に対する対応がまるで出来ていない。まるで最初から返すつもりもないように……)


ふと時計を見る。時刻は夜10時30分頃。

普段は11時頃が消灯時間だ。

そこで俺は思い返す。


(あの仲居さんは「決してこの部屋から出ないでください」と言ったわけだから、こう捉えることもできる。

消灯時間が11時なら、『消灯時間の11時まで、部屋を出ないでください』か、

『消灯時間の11時から、部屋を出ないでください』のどれかだ。

普通の旅館なら、どっちかっていうと後者の方が当てはまるが、今のこの現状、この旅館に関してそれはないだろう。ならば前者の方か。奴?か奴ら?どちらにせよ、敵の素性が分かっていない以上どうにも出来ないんだよな……)


と考えながら窓の外の月を見る。何故か今日の月は普段より強く輝いていて、辺りを明るく照らしていた。


「綺麗だな、今日の月は。ん、あれは……」


よく見ると、下の景色の一角、近くの池の周りの草むらに、目立つ白い物体があった。

何故かそれが妙に気になり、目を凝らして見てみるが、薄暗くてよくわからない。


俺は鬼童丸の鞄から手鏡を取り出し、月の光を反射させ、その白い物体に当てると、どうやらそれは、


「"卵"か……!」


そう、卵だった。数個の抜け殻が置いており、 しかも蛇か何かの卵のようだ。

まぁ、考えられるのは蛇だろう。


(ふぅーん。なるほどね……)


「じゃゆっくりしてる暇はねぇな。若たち起こしてーーいや、やめとくか」


武器の爪楊枝と魔ゴムを持ち、速攻で襖を開け姿勢を低く、素早く移動する。

廊下はやけに暗く、そして冷たい空気感だった。


その廊下を歩いていると、誰の気配も無いのに、となり襖の奥が妙に薄明るい部屋があった。


嫌な予感しかしない為に覗きはしなかったが、そういうのは大抵見ないのが無難だ。


暫くして、辿り着いたのは大きな扉の部屋の前。


さっきよりより嫌な予感がしたのだが、何かに後を押されたように体は動く。

魔ゴムをドアノブにかけ、下に引きながら音が鳴らないように押しながら中を覗くのだが、暗くてよくわからない。どうやら生物の気配は無いようだ。


(じゃあ、この嫌な気配は一体……ん?)


恐る恐る中に右足を踏み出したその時、何か柔らかな感触が右足からした。

それを見た時、俺は目を疑った。

なぜならーー



「"人の髪"だ……。それも全部女の……!」



それは見るからに他の生物の毛ではない、人間故の頭髪が、あちらこちらに散らばっていた。その時点で既に気味が悪かったのだが、

このタイミングで最悪のモノを見てしまう。


「……‼︎」


目が慣れ暗闇の中、部屋の奥にあるモノは、見たくはなかった"人の山" があった。

しかも、比較的に綺麗な状態で女性の死体が積み重ねられていることが、余計に体中の血液が冷え返っていくように不気味さを感じさせた。


(ヤバイ!早く此処を出ないと……‼︎此処はマジでヤバイ‼︎‼︎)



と悟った直後、後ろを振り向いたその時、目の前の扉がギィィと音を立て、その先に居た者はーー


「お、おい……冗談……だろ?」



つづく


修学旅行が木曜日からなので、暫くは更新出来ません(´;ω;`)

明日は更新出来たらしたいです。

次回もお楽しみにほんじゃバーイ?

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