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ある何もない日の午後 *シン視点


シン視点のお話です。




 ペアの仕事がない日のおれの午後の生活は、そのまま魔法省にいて非番の騎士団の奴らと一緒に遊ぶか、リースが帰るまでリースのそばにいるか(これは暇だし、くそフードと顔をあわせるから極力嫌だ)、一足先に伯爵邸に帰って家のお手伝いをしてリースが帰る頃に迎えに行くパターンだ。


 ということで、今は伯爵邸に帰ってきて、庭の手入れを手伝っている。力持ちで脚力があるおれは、庭師にとって嬉しい存在らしい。そこで使用人たちから聞いた話が・・・


「嘘をついていい日?」

「ええ。今日がそうですよ。嘘をついても今日は許される日です。」

「きちんとすぐに嘘でしたと伝えればね。」


 つまりエイプリルフールか。


「リース様にやってみたらどうですか?」


 面白そう!

けど、リースはまだ仕事だしな〜。せっかくだから伯爵にやってみるか。

・・・だけど、あいつ、おれが何の嘘を言っても反応してくれなさそうだな。うーん・・・そうだな・・、リースの話題ならいけるか!おれも交えた形であいつの反応しそうな内容は・・・



 伯爵の部屋の扉は開いていた。

伯爵は書物を読んでいて、飲み物を口にしている。

扉は開いていてもシンはノックをする。


コンコンッ


 扉にもたれかかるシンは爽やかな笑顔だ。伯爵は怪訝そうにする。

 

「なんです・・?シン。」

「伯爵。おれ、リースと付き合うことにした。」


























「伯爵っ!!待てっ!!落ち着け!!!」



 伯爵の部屋の中はボロボロだ。

・・後で片付けが大変そうだ。


 伯爵の息が上がっている。その手には剣を握っていて、シンに振り下ろそうと力が入っている。

シンはしゃがんで剣先を両手で挟んで、頭の上で剣をなんとか防いでいる。着ている服もボロボロ。


 先のシンの言葉を聞いた伯爵は、瞬時に手元にあった杖から剣を取り出し、シンに斬りかかったのだ。それをシンは服が切れるギリギリで避け続けて、今に至る。



 ・・伯爵の手元にあったその杖って仕込み剣になっていたんだ!

ってか、伯爵めっちゃ強いじゃねーか!避けるので精一杯だったぞ!!

真剣白刃どりって、どんだけピンチな状況だよ!!



 なにより・・・・・・伯爵の目がマジだ。




「これは、嘘だって!!今日が何の日か知っているだろ!?つい、からかっただけだ!!」


 シンは真剣白刃どりしながら必死に叫ぶ。


 伯爵がまさかこんなに本気で信じるとは思わずに、一番食らいつくだろう思い付き嘘を言ったシンは、「なんちゃってエイプリールフールでーす☆」と気楽に言えない場面に陥っていた。



 頼むっ!嘘だと分かってっ!!!




「なるほど・・。今日はそういう日でしたね。」



 伯爵は何か思い出したようにシンから剣を離して体制を立て直した。

シンは剣が離れたことにホッとため息をついた。



 伯爵は剣を持ち替えシンを見下ろして、


「それで、言い遺すことは?」


と怖い真顔で言い放った。



ひぃーーーー!!

真顔でそのセリフっ!!

ブラックな伯爵、降臨だーー!!!

嘘ついて遊んですみませんでしたーーー!!!

リースっ!早く仕事終えて戻って来てーーー!!!

このブラック伯爵をホワイトにできんの、お前だけだーーー!!!!










【数時間後】

「シン、今日は迎えに来なかったんだね・・・・って、何しているの?」

「リースっ!!良かったっ・・!!早めに帰って来てくれた!」

「リース。おかえりなさい。どうかしました?」


 ボロボロなシンが部屋の惨状を見て呆れているリースに涙目で声をかけた。シンの後ろで気楽な伯爵の声がしたので振り返ると、伯爵は剣を杖にしまってボロボロのソファにくつろいでいた。


 っ、伯爵!!? 変わり身、早すぎだろ!!!


 あ、でも、いつもの、リース限定の本当の(ホワイト)微笑み顔に戻っている(基本的に、伯爵はおれにも微笑んでくれるぜ。目以外は・・・。)。




「どうしたの?この部屋の状況・・・・。」

「シンが悪ふざけをして暴れたのですよ。まったく、やんちゃですねー。」



 !!? 悪ふざけの主語はおれでいいとして、暴れたところの主語が違う!?伯爵だろ!!


「シン・・・・。」

「待てっ!誤解だ!!確かにおれは悪ふざけをしたけど、暴れたのは・・。」

「シン、悪い嘘は嘘ついていい今日でも駄目。部屋の傷は剣の跡だよ。伯爵にここまでの剣術ができるわけないじゃない。めんどくさがり伯爵だよ。」


 !? リースは伯爵の実力に気づいてない!?? 長年一緒なのに??


「そうですよねー。ここは罰としてシンに片付けてもらうとして、リース、向こうでお茶にしませんか?」

「それはいいけど、シン、手伝う?さすがに、この片付け、大変でしょ。」

「・・・・・・いや。いい。仕事後だし、疲れてるだろ。いいから、リースは伯爵の元に行ってくれ・・・・。」

「え?そう?・・・わかった?」


 こうして、伯爵限定精神安定剤(リース)は無事に伯爵の元に届いた。

シンは長いため息をついた。


 ・・・・もう、伯爵で遊ぶのはやめよっ。





************************

お読みいただきありがとうございます!

次の連載がまとまるまで、またしばらくの休載です。

では、また連載するまでの間、皆さんお元気で過ごされるようよろしくお願いいたします!

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