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ある何もない日の午前

更新一年ぶり!!元気にしていた!?まだ,読んでくれる人がいるかどうか怪しいですが・・。

一話物が3つ続きます。





 外務、つまり、ペアでの仕事がない日は、リースは魔法省で働いている。まだ新人なので、仕事は持ち回りだ。半年後、どこかの部署に配属される。リースは優秀なので花形の外務系になりそう、と周りの先輩の魔法師たちからは期待されているが、運動神経があまりないリースにとっては建物内に籠る事務系の仕事も嫌いではなかった。


 リースは持ち前の頭の良さで持ち回りの仕事をカバーしていた。だから、新人特有の余裕の無さはなく、ただ淡々と仕事をし、書類を抱えて、魔法省の廊下を歩いていた。






「どうした?もう終わりか?」


 廊下を歩いていると、外の練習場になっている広場から聞き覚えのある楽しそうなやんちゃな声が聞こえた。


 シンだ。


 騎士達数人が剣を携えシンを囲んでいて、5人ぐらい地面で伸びている。シンは余裕そうにやんちゃそうな笑顔で、長剣を肩に当てていた。シンを取り囲む騎士達の服が乱れていたが、こっちもシンに対して好戦的で面白そうな様子だった。


 シンのような、騎士ではない外部のパートナーは、午前中の騎士の練習に参加することが義務付けられている。


「おいおい、鍛え不足じゃねーか?不良っ子同士の喧嘩の方がもっと強えーぞ。」

「お前が規格外なんだ!シン!」

「今まで見たことがない型の動きだし。」

「そのスピードとパワーはなんだ!?それじゃ・・」

「つべこべ言わず、かかってこーい!!こっちは手加減してんだからー!!考えず、攻撃してみろってんだ!!!」

「「「うぉりゃーーー!!」」」

「はははっ、そうこなくっちゃ!!って互いに協力して攻撃しろよ!」

「「「イエッサー!!!」」」


 ・・えーっと、鍛え上げた騎士たちと一緒の練習で大丈夫かと心配していたけど、仲よさそうだし、シンは余裕そう・・・というよりは、なんか、指導官がシンになっているんだけど!?

・・まあ、とりあえず、良かった。パートナーに巻き込んだのは私だから、シンに何かあったらどうしようと思ってた。


 ・・・・それにしても、楽しそうだな・・。


 束の間、私は廊下の窓から晴れた空の下で賑やかに訓練しているシンたちの様子をのんびりと眺めていた。冷たく爽やかな風が当たって、仕事で使った頭を冷やしてくれて気持ち良かった。







「「◯+*#!?」」


 突如、横からよく分からない叫び声が聞こえた。


 え?何?


 私がそっちを向くと、同じ3階の5つ先の廊下の窓から人影が飛び降りるのが見えた。その窓から数人の魔法術師が身を乗り出し、何か必死に叫んでいる。・・って、あの人はっ!!


「やばいっ!!シン!!」


 その人影を理解して慌てた。その人影はシンにまっすぐ向かった。リースは外の広場を見ながら廊下を走って階段に向かった。


 ・・シン!気を付けて!辿り着くまで無事にいて!!


「うわっ!!後ろからの不意打ちとか、卑怯だ!!」


 広場からシンの叫び声が聞こえ、同時にカキンッと金属がぶつかる音が聞こえる。


「という割には、余裕そうだが?」


 建物から飛び降りてシンに剣を切りつけたのは、楽しそうにニヤつくフードの上司だった。






「・・くそっ!くたばれ!!くそフードっ!!!」

「っ!!・・ふっふっ、やはり、俺の相手に不足ないなっ。」


 リースが階段を駆け下りて広場にたどり着いたら、シンとフードの上司の戦闘はヒートアップしていて、ものすごい速さで戦っていた。速いせいなのか、交わす二人の剣からは時折火花が飛び散っている。・・フードの上司は最高にニヤけた顔のままだ。


 怖っ。誰も止めに入ることができなそう・・。

 というよりも、騎士たちは楽しそうに「シン!行け!」「ぶちのめせ!シン!お前ならいける!」とシンを応援している。・・・・・止めようよ、騎士たち・・。


 フードの上司の部下たちも汗だくになりながら広場にたどり着いた。

 良かった。止めてくれる人たちが来た・・・って、目の前の光景を見て驚いて体が固まったままだ。っ使えない・・。


「あっぶねっ!魔法も使うとか、卑怯だぞ!!」

「そういう割には、一度も当たってないじゃないか。相変わらずの身体能力だな・・。そうそういないぞ。魔法剣士の俺の攻撃をかわす相手はな!!!」


 そう叫ぶシンは動きが素早く、にやける上司が繰り出す魔法と剣を全てかわしていたって・・シン・・・。


 フードの上司は数少ない魔法剣士である。剣士としても凄腕ながら、魔法能力も類を見ないほど抜群で、魔法を出しながら同時に剣で戦えるという文武両道の超人だ。魔法はたとえ簡略化されても頭を使うため、剣士として動きながら魔法を使う同時作業はとても難しい。そのため、自称魔法剣士を名乗る人はいたとしても、国公認の魔法剣士は魔法導師最高責任者・フードの上司とローランド公爵の2人だけだ。ましては、フードの上司はこの国最高の魔力と武力を兼ね備えていることで有名で、若くしてその地位にいる。


 その国公認の魔法剣士の攻撃を全てかわすシンの身体能力・・・・。

 

 何それ・・。魔法使わずに魔法剣士と張り合うなんて、前代未聞だよ・・・。

 

 異常事態で固まる魔法師たちと、騎士たちの応援の状況から、誰も止める人はいない・・・。

 くっ。しかたない。私がいこう。この前みたいに、シンが考慮して止まってくれるはず・・。

 

 

「シンっ!!」


 期待を込めて、シンに向かって叫ぶ。

 

「お、リース、いいところに。」


 フードの上司の攻撃を躱しながら、シンが気づいて気楽に言った。・・余裕そうで何より・・。


 そして、近づいてきて、私の肩に手を乗っけ・・


「え?」

「見てろ!!くそフード!!おれとリースの魔法を合わせれば、互角だ!!」


 魔法で上空に浮かんでいるフードの上司に向かって、剣で差しながらシンはやんちゃに勢いよく叫んだ。ッて、え?


「ほぉー・・・・。面白い。見せて貰おうか。その二人の戦法とやらを。」


 その様子を、今まで見たことがないぐらいに、例えるなら悪の化身のような笑顔で楽しそうにニヤつくフードの上司がこっちを見下ろしていた。


 は!?っちょっと・・・


「おれらのコンビネーション、見せてやろうぜ!!リース!!」


 爽やかに近いやんちゃな笑顔で私に向かって言うシン。


 ・・・。



 待ってっ!!!やめてーーーーーー!!!その手を離せーーーーー!!!!

魔法師わたし剣士(シン)魔法剣士(フードの上司)じゃないから!!何、その公式!!間違っているっ!!!

とにかく、私を巻き込むなっ!!!私は喧嘩慣れてないからっ!!












・・・ここで自然と出たフードのセリフにツッコミをいれてくれる人がいない悲しみが・・・。

異世界ものは仕方ない。後書きでツッコミをしよう・・・。

「◯ャア◯佐ーーーーーー!!!」


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