第4話:僕の距離
玄関を出ると寒さが日を経つごとに尖っていってるのが分かる。
今日もグラウンドでは部活を頑張る生徒で溢れていた。
「はぁ」
変わらない日常、何の変化も訪れない生活、たぶん僕は飽きている。
部活を始めれば何か変わるかと考えたが、部活を始める根性も無く、何かを目指す努力もしない。
でもゲームを朝方までやるような根性は発揮し、周りから嫌われないような努力はしてる。
僕は所詮そんなもの。
人に誇れるものは何も持ち合わせていない癖に持つ努力もしない。
そんな物があっても自分には必要無いとか、そもそも興味すら示さないのが僕である。
「部活とかしないの?」
「興味無いから」
聞かれて即答した。
野球部の声が大きく枯れていて耳障りだ。
おまえら全員が野球選手になれる訳でもないのに。
マフラーに顎先を埋め早足で歩き出す。
「どうしたの?」
聞かれても答えが出せない。自分でも分からない苛立ち。
きっと何かを頑張ってる姿が嫌いなのかも知れない。
「家どっち?」
「俺こっちだよ」
「どこら辺に住んでるの?」
「この先にあるコンビニの裏らへん」
「途中まで一緒だ」
校門出て右に真っ直ぐ歩くと神社があり、その先を真っ直ぐ行くとコンビニがある。
僕は神社を曲がって数分のとこに住んでるから地区は一緒になりそうだ。
取りあえず神社まで一緒に歩く。
その間も彼は一人で話し続け、話し相手には相応しくないだろうになと考えながら相槌を打つ程度のことしか出来なかった。
別に話したくない訳ではないけれど、話したい訳でもない。
あまり興味が無いだけで、今日が終われば彼とも話すことも無いだろうし、そんな彼に気を使う必要も無ければ自分を教える必要も無い。
「じゃあここで…」
「家どっち?」
「こっち」
指を指すと、ふーんと顔が声を出した。
赤い鳥居を前に別れを告げ歩き出した。
「名前も教えてくれないのー?」
「興味無いから」
「俺の名前は高橋要、覚えといて」
「興味無いし」
小学生みたいに姿が見えなくなるまでばいばいを叫んでいる気分だ。
だんだん遠退いて行き曲がって彼の姿が見えなくなったときに響いた言葉。
「明日学校でな」
「興味無いし」
僕は零すように呟いた。
アホだな。
明日学校休みなのに。
懐かしい思いを感じた。これから少しだけ日常が変わる気がした。