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序章
あなたにこの言葉を言うために80年掛かっちゃいました。
私は、今にも消え入りそうなそんな声で、『好きです。』と4文字の短い言葉を彼女へ向けて発した。
やっと言えた。ホッとした。やっと言えた。何で言ったんだろう。その言葉には言葉とは裏腹に何の希望も無かった。
私の不安から不意に出てきた、後悔と安堵が言葉として現れたのだった。
もちろん答なんて期待していない。そんな意味も無い事なのに。まるで何かの答えを欲しているかのような、そんな短い言葉を聞いて彼女は案の定、黙り込んでしまった。