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二 旧知

 日本舞踊瑞原流宗家の家は、三村流ほどの巨大家屋ではないが、三村流より遥かに歴史が長いせいか、より一層の奥深い趣が感じられるようだった。

 木戸を開いてくれた家政婦さんに導かれて、低木に挟まれた細い石畳を通り玄関まで行くと、家元の瑞原州洋氏と、その母親が揃って出迎えた。

「ご足労頂きましてすみません。どうぞお入りください。」

 母親の瑞原広子氏のほうが、よく響く声であいさつした。息子同様、肉付きがよく大柄な人物である。

 広子氏も家元の州洋氏も、まずは葛城の顔をあっけにとられて見ていたが、これはどのクライアントにも共通した反応である。

「・・・すみません、お写真でも拝見していましたが、あまりにお綺麗なので・・・・・」

「恐れ入ります」

 こういう反応は慣れっこである葛城は笑顔で答え、隣の茂を紹介する。

「今回メイン警護員を務めます河合警護員です。」

「よろしくお願いいたします。」

 客間に案内され、茂と葛城はクライアントと向かい合って座る。

「波多野がお邪魔させていただき全体の内容は大丈夫と思いますが、今日は警護員との顔合わせを兼ねた、最終のご確認となります。」

「はい。」

 手元に紙のスケジュール表を示し、今回は茂が確認を進めていく。

「ご出発は金曜の午後、そして公演は土曜の朝十時から夕方四時まで。お家元のご出演は午後三時半。その後レセプションを経て会場車寄せからホテルまで、予約のお車で戻られる。」

「車は手配済ですので、ナンバーなど後でお渡しします。」

「お願いいたします。警護は公演当日のみとなっていますが、ホテルのお部屋までお迎えに行き、帰りはお車に乗られるところまで、でよろしいですね?」

「はい。公演会場への出入りのときが、危ないと思っています。」

「そうですね、襲撃しやすいポイントです。」

「それに・・・・この日は、あの瑞原州麻さんの命日で、そのご遺族も公演にはいらっしゃいますから・・・・州洋を疑っている人たちならば、公演会場で襲うような気がします。」

「はい。」

 広子氏は茂と葛城に茶を勧め、自分も一口飲んだ。

「あれは、悲しい事故でしたが、我々宗家に疾しいことはなにひとつありません。」

「はい。」

「しかし、州麻さんが亡くなったことで、州洋が家元になったことは事実でしょうし、誰がトクをしたか、ということと、誰がそれを仕組んだか、ということをごっちゃにする人々がいるのもまた仕方がないことでしょう・・・・。」

「そうですね。」

「でも、だからといって州洋を襲うことだけは、許しません。すでにもう三回も・・・・」

 広子氏が顔を青くして、うつむいた。

 隣の州洋氏は、母によく似た丸顔に硬い表情を浮かべたまま、やはりうつむいている。

「波多野からもお尋ねはしたとは思いますが・・・・」

 茂は州洋氏のほうを見て言った。

「・・・襲撃未遂をした犯人に、具体的な見覚えは、ないのですよね?」

 州洋氏は、もともと若いがその丸顔のせいで余計に若く見える顔を上げ、頷いた。

「はい。知らない人だったと思います。顔はかくしていましたが、知り合いじゃないと思いました。」

 葛城が言葉を挟む。

「襲撃方法は極めて稚拙で、プロへ依頼したようには見えませんでしたので、ご遺族が直接手を下された可能性も高いと考えたところです。」

「はい。」

「しかし数回失敗した後は、専門の人間へ襲撃を依頼することがよくあります。公演の日が特別な日であることを考えると、次はかなり実効性の高い攻撃が行われる可能性もあります。」

 茂と葛城は計画書に目を落とし、ふたたび茂が口を開く。

「・・・・私はボディガードらしい姿でずっとついていますが、ここからここまで・・・・控室での空き時間は、葛城も関係者に扮してお部屋近くに控えます。」

「了解しました。」

「当初は客席で待機の予定でしたが、より近いところでの態勢を取ります。」

「はい。・・・・相手が、あくまで流派ではなく家元個人を狙うという、予想のもとということですね・・。」

「そうです。」

 茂と葛城はクライアント宅を後にし、路上に停めてあった事務所の車へ乗りこんだ。

 運転席でエンジンをかけ、車を発進させた茂は黙ったまま葛城の言葉を待った。

 低いため息が聞こえる。

 葛城は車が三つ目の信号待ちをしたところでようやく言葉を出した。

「犯人は誰なんだろうって、ずいぶん色々考えているみたいですね?茂さん。」

「はい・・・・。葛城さんは、そんなこと、ないんですよね・・・」

「そうですね。」

 美しい両目を葛城が窓の外へ向けたのがわかった。

「今のお家元が亡くなったら、その次の家元になれそうな人はたくさんおられますが、たくさんおられすぎて見当もつかないし・・。」

「はい。」

「やっぱり怨恨なんだとすると、瑞原州麻さんのご遺族。噂って、本当なんだろうか。そう考えてしまいます。」

「家元になるために、州洋さんが州麻さんを殺したという噂ですね?」

「ホームから誤って転落するような、そんな人じゃなかったそうですよね、たとえ酔っていたとしても・・・」

「ええ。ただし・・・」

 葛城が、運転する茂の横顔を少しだけ見た。

「・・・・」

「ただし、たとえ州麻さんの死が事故じゃなく事件だったとしても、その後三度にわたって州洋さんを襲った犯人は、なぜ州麻さんを殺したのが家元の州洋さんだと確信しているんでしょうね?」

「・・・・」

「そこが不思議です。専門家に調べさせたとするならば、逆にその後の三度の襲撃の稚拙さとの落差が不自然です。」

「はい。」

「まあ、こういうことは・・・・」

「・・・・・」

 車が再び発車し、葛城は左の窓から再び外を見た。

「我々警護員が考えるべきことでは、ありませんね。」

 茂は黙って頷いた。



 瑞原流の稽古場は宗家の家から程近い、古い日本家屋を改装した建物の一階の、二間続きの広々とした和室だが、英一の稽古風景と全く違うのは見学者を一切許可していないことだった。

 木曜夜は、いつもは家元が若手の弟子を対象に少し稽古をしているが、翌日に家元自身が遠方への公演へ出かけるため、この日は州洋自身が共演者たちと自らの最終稽古をしていた。

 稽古が終わり、着替えて助手たちに挨拶をした州洋は、洋装が和装同様に似合うその肉付きの良い大柄な体を、少しかがめて稽古場の玄関を出たところで、少し驚いて立ち止まった。

「蒼英先生・・・・」

 黒髪の長身の美青年が、やはり洋装に着替えた姿で、玄関先で待ち構えていた。

「お疲れのところすみません、州洋先生。少しお時間ありますか?」

 英一は静かに言い、そして後ろの自分の車を振り返った。

 助手席で、州洋は身長は英一に近いほど高く、さらに幅はもっとある体を少し狭そうにしながら、その丸顔の小さな両目で正面を見つめた。

 運転席の英一がハンドルを切り、車はちょうど前日の夜に茂と葛城の車が通過した宗家の家の裏を過ぎ、さらに大通りへと出ていく。

「明後日の公演は大成功しそうですね。州洋先生の仕上がりは私などから見てもいつも以上に素晴らしく思えます。」

「恐縮です・・・。今回、蒼英先生と共演できるのは夢のようです。」

「それは私のセリフですよ。」

 二人の声にはいずれもあまり活力がない。

 英一は少し街の外れまで出ると、広い公園の駐車場へ車を入れたが、そのまま降りようとはせず、再び口を開いた。

「・・・警護のご依頼をされたとうかがいました。」

「はい。お父上の・・・三村蒼先生のご紹介で・・・・。」

「このようなことをお尋ねしてしまいましてすみません。州洋先生は、これまで何度か襲撃をされた・・・・そうですよね。」

「はい。」

「お心あたりは、あるのですか?」

「・・・・・・」

 どれだけ立ち入ったことを聞いているか十分承知している、という様子で、英一は答えを待つように正面を向いたまま沈黙する。

 夜が更け、街灯の弱い光を時折かき消すようなヘッドライトの明りとともに車が通り過ぎていく。

 州洋氏が低くため息をつき、言葉を出した。

「僕を襲った人間は本当に知らない人間でした。しかし、なぜ襲われたのかは、想像できています。」

「想像、ですか・・・・」

「・・・・・」

「州洋先生、あなたと私は、短いつきあいではない。今は亡きお父上の、前の瑞原州洋氏は、私の父と親友でした。私も幼いころから、あなたが子役で出られる舞台を拝見し、何度もお目にかかった。他流でもあり、あまり一緒に遊んだりはできませんでしたけれどね・・・・。でもあなたのお考えになっていることは、私は多少は想像できますよ。」

「・・・・」

「それから、あの警備会社の人々と何度か接触して・・・・私自身や関係者の警護もしてもらったこともありますが・・・・・こういう場合の襲撃のパターンのようなものも、なんとなく想像できる気がします。」

「どう、思われますか?」

「今まであなたを襲った犯人は、素人だった。それは、攻撃の方法もそうですし、そしてそれはつまり、なぜあなたを襲ったのかについても、だと思います。」

「・・・・」

「そして何度か失敗すると、プロに今度は依頼する、ということが、よくあるそうです。」

「はい。確かに、大森パトロールさんもそのようにおっしゃっていました・・・。」

「襲撃方法についてだけのプロならば、次回は、あなたを、格段に確実な方法で襲うでしょう。」

「はい。」

「それは、きっと、河合警護員と葛城警護員のことですから、きちんとあなたを守ると思います。ただし、私が気になっているのは、そのことではありません。」

 州洋氏はちらりと英一のほうを見た。英一は正面を向いたままだった。

「・・・蒼英先生。」

「はい。」

「あなたはどうして、そんなに僕のことを心配してくださるんですか?」

「・・・・・・」

「確かに小さいころからよく会ったし、その後も公演などの機会ごとに今もよくお目にかかってはいる。でも、あなたがおっしゃったように、他流ですし。ましてや身内でもないし。」

「そうですね。」

「それに僕は、あなたは僕のような人間をあまり好きじゃないと思っていたんです。」

「なぜですか?」

「あなたと色々なことが、全然違いますから・・・・。私は父を亡くしましたがずっと母がいて、そして実力はそれほどでもないのに家元にまでなってしまった。蒼英先生、あなたは逆に、すごい実力の持ち主でありながら、父上の養子である兄上が次期家元に決まってしまった。それに、母上はあなたが生まれてすぐにお亡くなりになり・・・・。母親に甘やかされ、そして流派に甘やかされてきた僕など、取るに足らない人間でしょう。」

「・・・・・・」

「僕の何倍も、きっと、お淋しい思いをされてきたはずです。僕を見て、なんという幼い人間だろうと、お感じのはずですよね。」

 英一は意外そうな顔をして、隣の丸顔の青年の顔を見た。

「・・・・州洋先生、私は淋しい思いなどしたことはありませんよ。母がいないのも、確かに、物心ついてから亡くしたのであればそうでしょうけれど、生まれてすぐでしたから、母がいないことが私にとってはむしろ当たり前のことでした。舞については、兄が私より上なのは明らかです。そしてそんな兄だから・・・・」

 言いかけて、英一は苦笑して口をつぐんだ。

 州洋氏は英一のほうを遠慮がちに見た。

「蒼風樹さんは、最近ご結婚されたんですよね。兄上の蒼淳先生と。」

「・・・・・」

「僕にも、わかります。蒼英先生は・・・・」

「州洋先生。今日は、私があなたの心配をしている話題だったはずですよ。」

「・・・・・」

「警護の予定は、だいたい想像はつきますが・・・・・。私にも、内容を教えていただくことはできますか?」

「はい、それは構いませんが・・。」

「私などは素人ですが、何かお役に立てるかもしれないです。しかし、そのためにも、州洋先生。」

「はい。」

 英一はその端正な両目で、州洋氏の顔を改めて見た。

「きちんと、うかがいたいことがあります。もちろん、秘密は絶対に守ると約束します・・・・。たとえ、どんなことであっても。」

「はい。」

 大通りを行く車の数は次第に減り、夜空に星が増えては瞬き始めた。



 金曜夜、小雨の降る鬱陶しい天気の中、茂と葛城が空港に降り立ちホテルのリムジンバスに揺られて三十分かけて現地に到達したとき、既に深夜といってよい時刻になっていた。

 クライアントと同じホテルに泊まる必要はなかったが、念のためとの波多野部長の計らいだった。

 ホテルの車寄せからロビーへ入ったところで、茂は荷物を落としそうになり立ち止まった。

 ロビー奥から逆に車寄せのほうへ向かって、英一が州洋氏と並んでこちらへ歩いてきたからだった。

 向こうもこちらに気がついて、州洋氏が先に会釈をした。

「・・・こんばんは、今ご到着ですか。明日はお世話になります・・・・。」

「こんばんは、こちらこそよろしくお願いします。」

 笑顔で挨拶を交わす州洋氏と葛城の隣で、英一と茂はそれぞれ相手に目線を合わせないでじっと立っている。

 州洋氏は次に英一と茂とを見比べた。

「たしか、蒼英先生と、河合警護員さんとは、昼間の会社の同期とか・・・・」

 葛城が笑って答える。

「そうなんです。三村家の皆様には、河合は昼も夜もお世話になっております。」

 葛城に腕をつつかれて、茂は営業スマイルで会釈した。

「州洋さん、これから外出ですか?」

「はい、リハーサルが長引いて遅くなってしまったんですが、これからちょっと食事に出てきます。車で行きますし、人気のないところには行きませんから大丈夫です。」

「くれぐれもお気をつけて。」

 英一と州洋氏がタクシーに乗るのを見送り、茂はため息をついた。

「なんでわざわざ危ないことを・・・・。三村は事情を知らないのかな。」

「そんなはずはありませんよ。むしろいつも以上によく状況をご存じなのではないでしょうか。」

「・・・・・」

「今回警護をご紹介くださった三村蒼氏は、ご自身は海外公演と重なってこちらへ来られないので、きっと心配して、色々息子さんの蒼淳さんと英一さんとに話していると思いますからね。」

「確かにそうですね。・・・・それにしても・・・」

 茂はタクシーが去った後を見つめた。

「?」

「三村が誰かとあんなに親しそうに歩いているところ、初めて見ました。」

「ははは。」

 葛城は笑って、そして茂の顔を見た。

「・・・・葛城さん?」

「茂さん、ひょっとして州洋さんに、嫉妬してませんか?」

「そんなわけありません」

「そうですよね、茂さんは英一さんと仲悪いですもんね。」

「そうです」

 茂はさっさとフロントへ行き、チェックインの手続きを始めた。



 土曜日は金曜と打って変わって快晴となった。

 公演は瑞原流のものだが、三村流の宗家から、家元が出られないとはいえ次期家元を含む三人の若手舞踏家が出演するため、会場のつくりもスタッフもそして観客も、両派にまたがる、規模の大きなものとなっていた。

 もちろん、英一目当ての女性客たちも大量に座席を確保している。

 瑞原流発祥の地の街は歴史があるがあまり大きくはなく、大規模なホールは街でひとつだけだった。そのホールの年間の主要なイベントのひとつがこの定期公演であり、地元市役所の肝いりでテレビ番組もつくられ、マスコミ関係者も多く出入りしている。

 警護には決して良い環境とはいえず、茂たちが外聞を気にするクライアントを説得してあえて目立つかたちでの警護をすることにしたのも、そのためだった。

 午前中から始まった公演は、瑞原流の師範たちが順に出演し、午後からは三村流の三人、そして瑞原流宗家と家元という順で、最後に両派の共演する出し物で締められる。

 当日の最後のリハーサルを終えて控室へ向かう州洋について、ボディガードらしい動きやすい服装の茂が廊下を歩いていると、前日とは違い和装の正装姿の英一と二度目の遭遇をした。

 英一は前日とは異なり、州洋に会釈をすると茂のほうをしっかりと見た。

「おはようございます、大森パトロールの河合警護員さん。」

「お、おはようございます、・・・・三村蒼英先生。」

 ふたりの間に流れる奇妙な空気に、州洋は少し身を引いた。

「メイン警護員へのご昇任、おめでとうございます、河合さん。」

 英一はその端正な顔に皮肉な笑みを浮かべた。

「そういうわけじゃないです。まだ先輩警護員のサポートが必要ですから。」

「そうでしょうね。昼間の会社でも、同僚のサポートが必要ですからね。」

「・・・・・」

「しかし会社ではなにかあっても人は死にませんが、州洋先生は瑞原流の大切なお家元で、そして私の大切な友人でもあります。私からも、よろしくお願いしますよ、河合さん。」

「・・・・はい。」

 苦虫をかみつぶしたようなという言葉が文字通り当てはまる顔で、茂はすれ違いざまに英一の顔を思い切り睨んだ。

 が、隣の州洋氏がじっと自分のほうを見ていることに気がつき、慌てて顔をもとに戻す。

 州洋氏は丸顔の小さな目で、茂の琥珀色の目が泳いでいるのを見つめて、不思議そうに言った。

「河合さん・・・・三村蒼英先生って、あんなふうにいつも話すんですか?」

「え、あ、はい。基本的に、そうです。」

「そうなんですか・・・・」

「あの、なにか・・・?」

「いえ」

 州洋氏は控室に入り、続いて入って内側から扉をロックした警護員に、お茶を勧めながら再び話題を戻した。

「僕は、蒼英先生とは、子供のころから何度もお目にかかっているんですが」

「はい。」

「確かに、ものすごく頭がいいし、理路整然としたもの言いだから冷たく聞こえることもあるし、そしてそもそも他人に対してあまり愛想とかを言うかたではないですが」

「はい。」

「・・・でも、自分から誰かにあんなに積極的に嫌味をおっしゃるところって、初めて見ました」

「・・・・・・」

 鏡の前の椅子に座って湯呑を傾けながら、州洋氏はその小さな目をさらに細めて、微笑した。

「なんだか、おもしろいなと、思いました。河合さん、あなたは彼に、そうさせるような人なんですかね、もしかしたら。」

「は・・・・」

「河合さん、警護員さんは、命がけでクライアントを守ってくださると聞きました。」

「はい。」

「三村蒼先生・・・三村流のお家元は、そう言って僕に大森パトロールさんをご紹介くださったんです。」

「はい。」

「だから、今まで申し上げていなかったことがひとつあるのですが、やはり正直に・・・いまさらなのですが、正直に・・・申し上げたいと、思います。」

 茂はその透明度の高い琥珀色の両目を見開いて、少し思いつめた様子のクライアントの顔を凝視した。

 インカムのスイッチは既に入っていた。

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