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虚と実

デリフィスが立ち止まる。

それは、なんとなくテラントには予想できていた。


足下が揺れる。

突出する土塊を剣で砕き、波打つ地面を飛び越え。


「!?」


引っ張られる感じがした。

地面から生えた土の手が、テラントの足首を掴み自由を奪っている。


(やっべ……!)


見えてはいたのだ。

避けたつもりだった。

だが、捕まった。

どうにも咄嗟の反応に遅れが出る。


焦りながらも、寒さで痺れる指に力を込め、剣の柄で土の手を叩く。


急がなければ、遠距離魔法の格好の的となってしまう。


二、三度叩いたが、亀裂が入るだけでなかなか拘束が外れない。


狙撃はない。


デリフィスが、森の方向に突っ込むのが見えた。

敵の魔法使いを発見したのか。


テラントの位置からでは、錐のように飛び出した岩が邪魔で、敵の姿を視認することができない。


何度か土の手を叩き、ようやく自由になった。


衝撃に砕けたというよりも、自然に崩れる感じだった。


デリフィスの姿も、敵の魔法使いの姿も見当たらない。


術者が離れすぎたため、魔法が解けたのかもしれない。


シーパルとユファレートもいなかった。

無事に村へ向かえたのだろうか。


今からデリフィスたちを追っても、掴まえるのは難しいだろう。

ならば、やはり村に向かうべきか。


足を向けようとした。


「君は、そちらではない」


「……」


右手から聞こえてきた声に、頬が引き攣る。


背景の積雪に溶け込むように、エスが立っていた。


「お前はなぁ……」


相変わらず、心臓に悪い登場の仕方をする奴である。


言いたいことが色々湧くが、テラントは一旦呑み込んだ。


「……どういうことだ?」


「村の方は、シーパル・ヨゥロとユファレート・パーターに任せたまえ。君は、向こうだ」


ロウズの村の、北か北西だろうか、小さな山を指差す。


「ガド山。リンダ・オースターとティア・オースターが『コミュニティ』に追われている」


「ティアたちが?」


「二人とも、負傷をしている。すぐに、救援に向かいたまえ」


「……」


「……どうしたのかね?」


「……いや。なんでも」


この男は、いつも的確に指示や助言をし、導く。

掌で思うがままに動かす。


なんとなく、それに反抗したくなったのだ。


「……助けに行くよ、もちろん」


「気を引き締めたまえ。敵は、二十一人」


「……多いな」


げんなりと呻く。

普段通りに体が動けば、勝機も見えるだろうが。


「魔法使いが一人。『天使憑き』が二人」


「……『天使憑き』?」


「余り気にしなくていい。現段階では、『悪魔憑き』の劣化版のようなものだ」


「充分きついだろ……」


エスに聞こえるかどうかという声量で呟く。


「シーパル・ヨゥロとユファレート・パーターは、さらに厳しい戦いを強いられるぞ」


「……わかってるよ」


村人たちを守りながらの戦闘となる。


二人が、あとどれだけ魔法を使えるか。


多くの犠牲を覚悟しなければならないかもしれない。


「まあ、いい。行こう」


二人は、懸命に戦うだろう。

デリフィスも、何者かと戦っているだろう。


最悪の結果を想像して憂鬱になるくらいなら、頭を空にして動くことだ。


「道案内をする」


エスが、足音も足跡もなく歩き出す。


テラントは、それについていった。


街道の途中に枝道がいくつもあり、その一本はガド山に続くようだ。


エスはゆっくりと足を動かすが、それでもテラントの全力疾走よりも速かった。


足を動かすのは、普通の人間のように見せるためではないのか。


わずかに宙に浮いているように見える。


ガド山へと入っていった。

針葉樹が生い茂った低い山で、傾斜はなだらかである。


エスが、姿を消した。

声だけが響く。


『リンダ・オースターとティア・オースターに呼び掛ける。君は真っ直ぐに進みたまえ。なんとか合流させよう』


「……了解」


雪が積もった冬の山を登ることが、ただの人間にどれだけ重労働か、エスはわかっているのだろうか。


喘ぎながら、頂上を目指す。

整備された登山道を進むこと、しばし。


『来るぞ』


声とほぼ同時だっただろう。

ティアとリンダが、木々を掻き分けるようにして進み出てくる。


ティアは、自分よりも背が高く体重が重いであろうリンダに、肩を貸していた。


リンダは、脇腹を押さえている。

顔色は真っ青で、脂汗が額に浮かんでいた。


唇の端に、血で汚れた跡がある。

一瞬、内臓を損傷して吐血したのかと思ったが、どうやら唇を切っただけらしい。


ティアは、額を負傷していた。

だが、出血は止まっているようだ。


おかしな傷だった。


防寒着の肩から胸にまで、血が付着している。


かなりの出血だっただろう。

だが、額には真新しい傷跡があるだけである。


エスが、傷を塞いだのだろうか。

あの男のことだから、訳のわからない能力を一つ二つ隠し持っていても、全く不思議ではない。


防寒着のあちこちに血がこびりついているが、それは返り血のようだ。


「テラント……!」


ティアが、砂漠でオアシスを見つけたような表情をする。


「ティア、傷は大丈夫か?」


「あたしは、平気。ちょっとくらくらするけど、余り痛くもないし。あたしよりも、母さんが……」


地面に座らせる。

我慢強そうなリンダが、苦悶に表情を歪めていた。


内臓を痛めているだろう。

箇所によっては、早急に治療をする必要がある。


医者ではないテラントに、正確な診断はできなかった。


『追っ手がすぐ側まで来ている。包囲される前に逃げたまえ』


エスの声。

ティアにも聞こえているのか、きょろきょろしている。


「逃げるってもな……」


オースター孤児院には行けない。

戦えない子供たちの元へ、敵を連れていくことになる。


雪を踏む音や葉擦れが聞こえるようになってきた。


「仕方ねえなぁ……」


魔法道具を抜き、光を伸ばす。


「二十一人、だったな……」


逃げきれない。

だから、ティアたちを置いて前に出る。

包囲される前に、包囲されに行く。


それで、多くの敵を引き付けられるだろう。


「……テラント、剣貸して」


紛失したのか、ティアの腰に小剣がない。


「君が扱うには、重過ぎる。お袋さんに付いてな」


「でも、それじゃテラントだけで……。あたしも、戦う……」


立ち上がりかけて、尻餅をつく。

頭部を負傷しているのだ。

影響は少なからずあるだろう。


(そうか……)


ルーアと、重ねているのではないか。


「たまには、テラント兄さんにもかっこつけさせなさい」


テラントは笑って、ティアの肩を叩いた。


前を向く。


(二十一人、か……)


全てを引き受けることはできないだろう。

今の体調で、どこまで戦えるか。


坂を登っていく。

道の先に、兵士たちの姿が見えてきた。


テラントに気付いたか、立ち止まる。


全員ではない。

何人かは道を外れ、取り囲むように移動している。


風を裂くような音が、背後からした。


別方向からも追っ手が来ていたのか、ティアとリンダに接近していた兵士がいた。


喉に、ティアが投げ付けたのか、短剣が刺さっている。


テラントがティアたちの方へ眼をやったことを、隙だと思ったのだろう。

兵士たちが向かってくる。


兵士たちにとっては、下り坂で追い風である。

勢いは、かなりつくだろう。


テラントは、その場に踏み止まった。


定石ならば、逆落としはまともにぶつからずやり過ごすが、背後にティアたちがいる。


先頭の兵士の肩口に、光の剣を叩き込む。

しかし、後続の勢いに押された。


剣を合わせながら後退した。

後退しながらも、二人の首は撥ね飛ばしている。


テラントの脇を、兵士が走り抜けようとしていた。


かっとなる。

体を両断していた。

兵士たちが怯むのを感じる。


「……女を気にする余裕なんか、お前らにねえよ。俺を見ろ」


足下に落ちていた兵士の小剣を、背後に蹴った。

ティアが、上手く拾ってくれればいいが。


左手でも剣を抜く。


後ろで、剣撃の音が響いている。

ティアが、戦っている。


断末魔の悲鳴が、二つ聞こえた。

女のものではない。


正面から二人、右から二人、左から一人。

同時に五人襲い掛かってくる。


戦場である。

体が思うように動かないなどと、泣き言を口にしてはいられない。

動けなくなった奴から、死ぬ。


雄叫びを上げていた。

前進する。


一人の頭蓋を断ち割り、二人の腕を斬り飛ばした。


背後に回った槍遣いが二人。

突き出された槍を跳躍してかわし、左右の剣で首筋を斬り裂いていた。


雪が、赤く染まっていく。


ティアも、必死で戦っている。


なんとか、更に一人倒したようだ。


「なにをぐずぐずしている……」


風で、声が流れてきた。


少なくなった兵士たちの向こう。


顔は見えないが、アルベルトと骨格は同じくらいに見える男。

アルベルトやそのそっくりさんたちと同じく、魔法使いなのではないか。


そして、翼の生えた者が二人。


(『天使憑き』ってやつか……?)


喋っているのが誰か、暗くてよくわからない。


『天使憑き』たちが、無数の光弾を放つ。


木陰へ転がり、テラントは回避した。


飛行の魔法を発動させた魔法使いが、テラントの横を通り抜けていく。


追おうとしたところで、また光弾が飛んできた。


ティアの援護に向かえない。

まずは、『天使憑き』たちを倒さなければ。


(踏ん張ってくれよ、ティア……!)


今のティアには、無茶な注文かもしれない。


『天使憑き』が二人、兵士が三人。


(あと五人……)


一刻も早く倒す。


剣先を、敵に向けた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


シーパルはユファレートと並走していた。


テラントとデリフィスが追ってこない。


シーパルが使用した防御魔法で、全身が淡い光に覆われている。


距離があっても、日が沈んだ今ならかなり目立ちわかるはずだ。


二人は足止めされたのか、敵の魔法使いと戦っているのか。


「シーパル!」


ユファレートに呼ばれて、シーパルは前方の村に眼を戻した。


破裂音が響き、工場の近くから火の手が上がる。


「急ぎましょう……!」


村に入った。

工場まで、真っ直ぐに畔道が延びている。


「止まれ! 何者だ!?」


工場へ向かう途中で、誰何された。


十人ほどの村人の一団が、ボウガンを構えている。


魔法が、何度か炸裂していた。

村人たちではなく、侵入者たちの魔法だろう。


大半が魔法使いであるヨゥロ族のシーパルと、杖にローブ姿のユファレートを、警戒するのも仕方ないだろう。


敵意がないことを示すために、シーパルは両手を上げた。


「……ま、待ってください! 僕らは、オースター孤児院で世話になっている者で……」


「あの、わたしはユファレート・パーターです! ドラウ・パーターの孫の……どなたか、わたしを覚えている方はいませんか?」


「……あっ! あんた、前に助けてくれた……」


村人の一人が、松明の炎に照らされたユファレートの顔に反応した。


ユファレートは、以前ドラウ・パーターやハウザードとロウズの村を訪れ、盗賊団を撃退している。

記憶している村人は多いだろう。


「僕たちも、協力させてください。状況を教えてもらえませんか?」


村人たちが、顔を見合わせる。

村のために戦った恩人、ドラウ・パーターの孫娘という肩書きの効果は絶大だった。


それから少しやり取りをしただけで村人たちは、すぐに警戒心を解いてくれた。


工場を、遠巻きに包囲しているようだ。

自警団だろうか。


見ている間にも、村の若者たちが包囲に加わってきた。


手には、ボウガンなどを携えている。


農作業や猟などで鍛えられているのか、体格の良い者が多い。


工場に地下から侵入してきた者たちは、四十人くらいだったという。


大勢の従業員を人質に取り工場に立て篭もっているが、数人を除き解放されたようだ。


余りに多い人質は、邪魔になるとでも思ったのだろう。


『コミュニティ』の目的は、工場を占拠することではない。


偶然だろうが、包囲は絶妙な距離といえた。


これまでの戦闘で、敵の魔法使いの実力はある程度読める。


工場の外に出なければ、包囲まで魔法は届かないはず。


先程足止めに現れた魔法使いは、特別と考えていいだろう。


あれ程の高位の魔法使いが、そう何人もいるとは思えない。


というよりも、いないと楽観的に考えるしかなかった。


あんな魔法使い、今の消耗したシーパルとユファレートでは、手に負えない。


包囲の輪から工場まで届きそうな、二人掛かりで引く巨大な弓も用意されていた。


村の自警団に、なぜそんな大掛かりな武器があるのか疑問ではあるが。


外敵から『ヒロンの霊薬』や製造技術を守るには、それくらい物々しい兵器も必要なのかもしれない。


工場へ潜入すると、申し入れた。


『コミュニティ』の標的は、オースター孤児院である。


いつまでも工場に立て篭もるとは思えない。


いずれ、力押しで包囲を突破に出る。


こちらは、警官隊や正規軍ではないのだ。


そんなことになったら、どれだけの村人が犠牲になるか、見当もつかない。


そして、村中に敵が分散することになるかもしれない。


危険だった。

まだ、工場内に纏まっていられる方が戦いやすい。


正面から、工場に近付いてもらった。


工場の上階から、威嚇の火球が数発降り注ぐ。


工場に接近した村人たちは、蜘蛛の子を散らすように退散した。


呆気なさに、『コミュニティ』の構成員たちは陽動だと考えるだろう。


実際に陽動で、工場の裏手から少人数の部隊が接近していた。

見抜かれて、追い払われるだろう。


実は、それも牽制だった。


シーパルとユファレートは、正面の部隊に加わっていた。


防寒着で頭髪や体格を隠し、敵に悟られないようにしている。


火球が破裂したタイミングで、光を屈折させる魔法を使った。


これで、工場からはシーパルたちの姿は見えないはずだ。


一緒に行動した村人たちは、火球に逃げ惑っている。


夜の闇と炎が錯綜する状態では、人数が二人減ってもわからないだろう。


火球の破裂で破壊の魔力が渦巻いているため、シーパルたちの魔法が探知されることもない。


工場に潜入し、破壊の魔力が消え失せる前に、光を屈折させる魔法を解除した。


普段は周囲の気温を操作する魔法を使用しているユファレートは、防寒着が煩わしそうだ。

今は、我慢してもらうしかない。


簡単な魔法でも、他の魔法使いには魔力を感知されてしまう。


敵に魔法使いがいると、魔法は隠密行動に向かなくなる。


(もっとも、僕らには魔法しかありませんけど……)


見たことのない機械の陰で、意識を鋭くして敵の位置を探る。


工場の入り口に兵士が二人。

その間を通って、シーパルたちは侵入した。


裏口にも二人。

階段の前に四人。

他にも、一階のあちこちを巡回するように五人。


あとは、上の階か。

人質もそこだろう。


人質は、首筋に刃物を押し付けられてからが人質。


そんなことを、誰かから聞いたことがある。


したり顔で言ったのは、ルーアだったかデリフィスだったか。


愚かなことをしているのだろうか、ふと思った。


共に工場に接近した村人たちは、おそらく無事に逃げてくれただろう。


それは結果論で、一歩間違えれば死者が出てもおかしくなかった。


シーパルたちが潜入したことで、人質たちが更に危険になるかもしれない。


最悪の事態が起きたら、シーパルたちの責任は重いだろう。


焦っているのだろうか。

焦るなと、テラントには言われた。


わかっていても、この状況ではどうしても焦る。


ルーアならばどうするか。

彼は、『バーダ』という半警察半軍隊のような部隊に所属していたという。


こういった事態に、シーパルよりも慣れているだろう。


彼ならば、どういう行動に出るか。


説得工作や交渉をするだろうか。

持久戦に持ち込むのか、それともすぐにでも突入するのか。

人質で脅されたら、どうするのだろう。


いなくなった者のことを、しばらく考えた。


もう、侵入してしまったのだ。

今更後戻りはできない。


ユファレートと頷き合って、移動を開始した。


鍋のような物が取り付けられた機械が、いくつも並んでいる。

なにやら液体が湛えられていた。


機械の陰から陰に移り、ゆっくりと階段に近付いていく。


敵に気付かれないように上の階に行き、敵の主力であろう魔法使いを一瞬で倒し、人質を解放する。


それが理想だが、思い通りにいくことなどないだろう。


せめて工場の見取り図でもあれば、もっと綿密な作戦を立てられかもしれないが。


鉄の板が敷き詰められた床が、軋むような音を立てた。


見張りの兵士たちが反応する。


隠密行動の訓練など、受けたことはない。


それは、ユファレートも同様だろう。


敵の懐に飛び込み不意打ちを掛けられただけ、よしとするべきなのかもしれない。


「フォトン・ブレイザー!」


ユファレートが杖を振り上げ、工場の入り口にいた二人を吹き飛ばす。


まずは、退路の確保を考えたのだろう。

悪い判断ではない。


見回りをしていた兵士たちが、向かってくる。


「バルムス・ウィンド!」


いくらか加減して、シーパルは暴風を放った。


工場の機械の被害は、最小限に留めたい。


村人たちの生活に直結する打撃かもしれないし、故障した時になにを言われるかわからない。


機械は、鉄の床に固定されている。


加減をすれば、そう簡単には壊れないと信じたい。


暴風に巻かれ、天井や床、壁などに兵士が叩き付けられる。


機械に衝突する者もいたが、非常事態だと大目に見てもらえないだろうか。


同じく暴風を発生させ、階段の前の兵士をユファレートが蹴散らす。


不意を衝かれた兵士たちからは、まともな反撃がこない。


階段を降りてくる兵士たち。

五人くらいだろうか。


正確な人数を確認する前に、シーパルは暴風の魔法を炸裂させていた。


「ガン・ウェイブ!」


背後から迫ってきた兵士二人に、ユファレートが衝撃波を浴びせる。


「好き勝手に暴れてくれるな……」


階段を降りてくる三人組み。

シーパルが反射的に放った暴風が、三重の魔力障壁に阻まれる。


「……来ましたか」


三人とも、みんな同じ顔をしていた。

同じような外見の魔法使いたち。


その背後には、兵士二人の姿も見えた。


どういうつもりか、ありがたいことに人質を置いてきてくれた。

自信があるのだろうか。


だがユファレートと二人ならば、勝てるとシーパルは判断した。


決して、油断をしてはならない。


油断をしなければ、勝てる。

三人の魔法使いの実力が、これまでに対戦した同じ顔の魔法使いたちと、同程度ならばだ。


一階にいる兵士たちは、殲滅した。


階上の者たちを、ユファレートと睨みつけた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


意識を取り戻した時、ティアはリンダに背負われていた。

敵に追われているらしい。


ロウズの村の北部である、ガド山だった。


リンダが、倒れ込む。

どこか負傷しているのか、顔が真っ青だった。


ティアも、頭痛を感じた。

兵士に剣の柄で殴られたのだ。


こんな状態では、いつまでもは戦えない。

すぐに力尽きてしまう。


敵が迫ってくる気配があった。

リンダに肩を貸し、遊歩道を外れ森へと入る。


ガド山は、村人がハイキングに利用するような小さな山で、ティアも何度か登ったことがある。


逃げきれるか。


エスの声が聞こえたのは、そんな時だった。


テラントが、助けに来てくれたらしい。


エスの誘導でなんとか合流できたが、敵はかなり大勢のようだ。


大半はテラントが相手をしてくれているが、それでも何人かはこちらへ来ている。


短剣を投げ付け、足下に転がってきた小剣を拾い、ティアは応戦した。


普段ティアが使う小剣よりも、少し重く扱いにくい。


両手で持っても、振るたびに体が流される。

それでも、何人かは倒した。


血の臭いが、殴られた頭の痛みを思い出させる。

眼が霞んできた。


兵士の剣を受け止めるが、弾き飛ばされる。


だが、その勢いを利用して、他の兵士の懐に飛び込んだ。

脇腹に、小剣を突き立てる。


背後から追撃がきた。

剣が肩を掠りかけ、ひやりとする。


鈍い音と共に、兵士がよろけた。

リンダが投げ付けた石が、側頭部に命中したらしい。


首筋に、小剣の刃を叩き込む。


これで、向かってきた兵士は全員倒しただろうか。

へたり込みそうになった。


足下が、いきなり破裂する。

冷たい残雪の上に、ティアは倒れ込んでいた。


リンダの声が聞こえる。

抱き起こされたが、体が震え立ち上がれない。


魔法使いがいた。

アルベルトと同じ顔の魔法使い。

悠々と坂道を下ってくる。


「一応加減はしてやるが、死んでも恨むな」


魔法使いの突き出した掌が、歪んで見える。


そして、ティアたちを衝撃波が叩いた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


腕を斬り落とされのた打つ兵士の喉元を、テラントは踏み砕いた。


あと、『天使憑き』が二人に兵士が一人。


仕組みは不明だが、『天使憑き』の長大な翼は体内に収納できるらしい。


入り組んだ山中では無用の長物だとようやく気付いたか、翼は仕舞われていた。

そうすると、ただの人間にしか見えない。


光弾や光球を転がりかわす。


背後からも爆音が聞こえた。

ティアの悲鳴。


接近してきた兵士の首筋を斬り裂いた。


返り血を浴びることを気にせず、その胸元を掴む。


『天使憑き』が放った光球が、盾にした兵士の背中で弾ける。


圧力に逆らわず、兵士の死体を捨てテラントは後方に跳躍した。

着地と同時に、体を反転させる。


折り重なるように倒れた、ティアとリンダ。


二人に掌を向けた、魔法使いの貧相な背中。


テラントの背後には、二人の『天使憑き』。


彼らの眼からは、テラントの背中はさぞかし無防備に見えることだろう。


一撃で、魔法使いを斬り殺す。

その後、ティアとリンダを拾い上げ、木陰にでも身を隠して、確実にくるであろう『天使憑き』たちの魔法を回避する。


体が言うことを聞いてくれれば、できるはずだ。


地面を蹴った。

坂道を、跳ねるように駆ける。

体勢を崩してでも、急ぐところだ。


魔法使いとの間合いが詰まる。


「ランワゴ!」


それは、魔法使いの名前だろうか。


『天使憑き』の一人が警告を飛ばす。


魔法使いが振り返るが、もう遅い。


腕を伸ばし剣を突き出す。

魔法使いの頭蓋を、貫くはずだった。


「……っ!?」


右足に、神経を圧迫するような痛みが走った。


ズィニアに骨を砕かれた、大腿部か。


剣が、魔法使いの頬から眉間を裂く。

だが、浅い。


血塗れの顔面を押さえもがく魔法使いに、止めを刺す暇はない。


ティアとリンダの襟首を、薬指と小指だけで掴み引き摺る。

足が縺れた。


光球。光線。

背後から飛んでくる。


足下を撃ち抜かれた。

木々が薙ぎ倒される音が響く。


視界で光が弾け、熱波が体を叩く。

坂道を、盛大に転がり落ちた。


「くっ……そ……!」


空気が焦げる臭いがする。

肘を付いて、上半身を起こした。

血が眼に入り、よく見えない。


直撃は避けられたと思う。

出血は、転がる時に頭をぶつけたのだろう。


近くで爆音を聞いたためか、耳鳴りがして鼓膜も痛む。


ティアとリンダを見つけた。

体重が軽いためだろう、テラントよりも更に坂を転がっていた。


足腰が立たない。

這うように二人に近付き、木陰に引っ張り込む。


額から垂れ流れてくる血を拭った。


坂の上、熱で歪む景色。

『天使憑き』二人と、出血のためか朦朧とした様子の魔法使いが見えた。


隠れたところは、おそらく見られていない。


だが、ティアたちを引き摺った跡がはっきり残っている。

血痕もある。


薄闇が、どれだけ時間を稼いでくれるか。

稼げたとして、活路はあるのか。


『仕方ないな……』


声がした。

耳鳴りがうるさいのに、その声は脳によく響く。

エスの声。


魔法使いが立ち止まり、なにかを言っている。


倣うように、『天使憑き』も足を止める。


(……なんだ?)


魔法使いが、空を仰いだ。

魔法で顔の傷を治療しながらも、口は断続的に動いている。


誰かと会話をしているように見えた。


ティアとリンダは、意識を失っている。


やがて、魔法使いが『天使憑き』たちになにかを言い出した。


『天使憑き』たちは、反発しているようにも見える。


だが、不承不承という感じで頷き、そして、三人は別の道から山を降り始めた。


それを確認しても、テラントはしばらく動かなかった。


「……なにをした、エス?」


五分は経過したか、テラントは小声で聞いた。


『なに、虚構と事実で出し抜いただけさ』


得意気な様子もなく、ただ淡々としたエスの声が、頭の中に流れ込んできた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


敵の魔法使いたちが放った風塊を、ユファレートと張った魔力障壁で受け止める。


階段を駆け降りる兵士たちを視線で牽制し。


「なっ!?」


そこで、シーパルは信じられないものを見た。


敵の魔法使いの一人が、掌を向けている。


生まれた大火球が、渦巻き膨張している。


(正気ですか!?)


建物の中でそんな魔法を使えば、術者自身も危ういことになる。


他の魔法使いたちも、自分たちと同じ顔の魔法使いの愚挙に、驚いた表情をしていた。


「逃げますよ!」


ユファレートに説明はいらないだろう。


工場内で大火球が破裂したら、防御魔法を使用しても、下手をすれば炎に呑まれるか崩れた天井に生き埋めになるかする。


ユファレートと工場を飛び出した。


倒壊に巻き込まれることを警戒して、足を止めずに工場から距離を取る。


村人たちの工場包囲の輪が、狭まりつつある。


弓や剣で武装した十人ほどが、シーパルたちに続くつもりだったのか、近くまで来ていた。


「離れてください!」


工場が崩れれば、ここも危険だった。


村人たちが、色めき立つ。

魔法使いたちが三人、兵士が二人、工場から出てくる。


(まずい……)


まだ、地力を信じて工場で大火球を受け止めた方が、被害は軽減したかもしれない。


侮っていた。


先程の大火球の魔法は、はったりだろう。


おそらくは、戦場を建物内部から外へ変えるために、脅しとして発動させかけた。


大火球の魔法は、高位の魔法である。

必要となる魔力量も大きい。


魔力を炎に変換させた後では、発動を取りやめたとしても消耗するはずだ。


これまでに対戦した同じ顔の者たちの中には、たいした魔法使いはいなかった。


武装した村人たちに包囲されただけで、身動きが取れなくなる程度だと、侮っていた。


大火球の魔法を惜し気もなくはったりに使える魔法使いが、三人の中にいる。


そんな魔法使いに、自由に魔法を使える広大な空間を与えてしまった。


そして、強力な魔法の前には無力であろう村人たちが、周囲に大勢いる。


村人たちから、矢が飛ぶ。

魔法使いの一人が、手を振った。

広範囲に発生した力場が、矢の軌跡を変える。


(あの人だ……!)


同じ顔の魔法使いたち。

だが右端にいる一人だけ、表情に自信を漲らせている。


「逃げてください!」


シーパルは、大声で周囲に告げた。


村人たちを守りながら、戦える相手ではない。


「フォトン・ブレイザー!」


光線が突き進んでくる。

注視していた魔法使いではなく、別の者からの一撃。


「ルーン・シールド!」


魔力障壁で受け止める。


ユファレートが、シーパルの一歩前に出た。

魔法の激突を避けるように近付いてきていた兵士に、杖を向ける。


「ヴォルト・アクス!」


電撃が、兵士たちを焦がし尽くしていく。


魔法使いの一人が、村人たちを目指し移動していた。


「ユファレート!」


「わかってる!」


遮るために、ユファレートが飛行の魔法を発動させる。


シーパルが警戒していた、あの魔法使いが動いた。


「ファイアー・ウォール!」


炎が吹き上がり、魔法使いたちとシーパルたちを囲んでいく。


村人たちの邪魔が入らぬように。


そしておそらく、シーパルたちを逃がさないようにするために。


異常なまでの広範囲で、炎の壁が猛り狂っている。


「こんな……」


魔法を使う姿を見れば、その者の実力がある程度わかる。


精度も発動速度も、平凡な魔法使いのそれに感じられた。


だが、消費する魔力を何倍も増やすことで、威力を高め範囲を広めている。


そんな魔法の使い方をすれば、すぐに魔力が尽きるはずだ。


しかし、魔法使いの表情からは、余裕すら窺えた。

姿を消す。

光を屈折させる魔法で、視界から消えた。


もう一人の魔法使いが、手を上げた。


「ライトニング・ボルト!」


「ルーン・シールド!」


電撃を魔力障壁で受け止めて、シーパルははっとした。


あの魔法使いは、光を屈折させる魔法を解除し、別の魔法を発動させている。


伝わってくる魔力の波動。

これは、瞬間移動の魔法か。


背後。

振り返った時には、掌を向けられていた。

光が煌めく。


(速い……!)


いや、決して発動速度は速くないか。


瞬間移動の魔法は、大量に魔力を消費する。


そのため、次の魔法を発動させるためには、体内からまた魔力を引き出さなければならない。


だがこの魔法使いは、瞬間移動の魔法でも使いきれないほどの膨大な魔力を、常に垂れ流しているような状態だった。


「ヴァイン・レイ!」


光の奔流が、魔力障壁を叩いていく。


直撃は避けられたが、シーパルは後方に弾かれていた。


これまでの戦いで、魔法を使い過ぎている。


思うように防御魔法の強度を上げられない。


魔法使いの周囲に、光弾が生まれていく。


何十、何百と。


「……あなたは、一体……?」


魔法使いが、残忍な笑みを浮かべる。


「俺は、ドリ・クリューツ。他の出来損ないどもと、一緒にはするなよ?」


出来損ない呼ばわりされて、もう一人が微かに表情を変える。


ドリ・クリューツが、指をシーパルに向けた。


「ル・ク・ウィスプ」


何百の光弾が、様々な軌跡を描き襲いくる。


「ルーン・シールド!」


衝撃に、魔力障壁が揺れた。

光弾一発一発に、充分な威力が込められている。


魔力障壁が削られ、ひび割れていく。


「ぐっ!」


亀裂を通った光弾が、頬を掠め右足首を穿つ。


魔力障壁が、砕けた。


腰を掴まれる。

魔法で飛んできたユファレート。


間一髪、彼女に攫われるような形で、危険地帯を脱していた。


そのまま、ユファレートの飛行の魔法で移動する。


不安定な体勢だが、シーパルはもう一人の魔法使いに手を向けた。


「フォトン・ブレイザー!」


反攻を予想していなかったのか、光線が魔法使いの右太股を削る。


今のシーパルたちの状態では、ドリ・クリューツは簡単には倒せないだろう。


せめて他の魔法使いを倒したかったが、掠っただけだった。


回り込む者がいる。

村人を狙っていた魔法使いだろう。


ユファレートが、飛行の魔法の進路を変える。


だが、シーパルは地面に投げ出されていた。


ユファレートも、土の上を転がっている。


飛行の魔法の持続ができなくなったのか。


ユファレートの限界も、近い。


◇◆◇◆◇◆◇◆


燃え盛る炎の壁に、ユファレートは驚いていた。


同じことを、やろうと思えばやれる。


だが、どれだけ消耗してしまうだろうか。


先を行く敵の魔法使いは、炎に行く手を遮られ立ち往生している。


爆竹が破裂するような音が、連続して響いた。


「なっ!?」


一体、何百発だろう。

シーパルが展開させた魔力障壁を、間断なく光弾が叩いている。


圧力に耐えきれず、魔力障壁が崩れていく。


シーパルが全力で防御すれば、防げないことはないだろう。


しかし、今のシーパルでは無理だ。


「フライト!」


飛行の魔法を発動させて、シーパルの腰に抱き着き掻っ攫う。


シーパルが、反撃の光線を放った。


反動だけで、飛行の魔法が途切れそうになってしまいそうになる。


炎の壁の前で立ち尽くしていた魔法使いが、回り込んできた。


飛行の魔法を使ったのだろうが、なかなか迅速な反応だった。


アルベルトは、仲間と意思の疎通をできると言っていた。


それで、指示を出し合っていたのかもしれない。


逃げられそうになかった。

シーパルを抱えていては、いつものように速度を出せない。


向きを変えようとして、意識が白む。

地面を転がっていた。


「……あれ……?」


眼がちかちかする。


回り込んでいた魔法使いが、腕を上げている。


「ガン・ウェイブ!」


「……ルーン・シールド!」


跳ね起き、魔力障壁を発生させる。


また、意識が白むのがわかった。

ふと気付くと、両手を地面に付いていた。


魔力が尽きた。

それに、ユファレートは気付いた。


衝撃波に、魔力障壁が砕ける。

なにかが乱暴に体を叩く。


その時すでに、ユファレートは意識を失っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ディレイト・フォッグ!」


ユファレートが衝撃波を浴びた瞬間、シーパルは濃霧を発生させていた。


魔力の消費を多くし、より濃く、より広く。


疲労が、重くのしかかる。

周囲を、すっぽりと霧が包んだ。


ドリ・クリューツの戦い方を、上手いとは思わなかった。


膨大な魔力に依存した力押しである。


他の二人も、戦闘に慣れているようではない。

変化には弱いと読んだ。


視界に不自由しても、ユファレートの居場所を見失うことはない。


駆け寄ろうとして、右足首を砕かれたことを思い出した。


瞬間移動を発動させて、ユファレートの元に行く。


息をしていた。


魔力障壁で、衝撃波の威力が削られていたのだろう。


負傷よりも、魔法の使いすぎによる昏睡状態だった。


他人を抱えては、瞬間移動は使えない。


飛行の魔法は、魔力の波動が大きく居場所を特定される。


地面を這い、ユファレートを引き摺り、シーパルは移動していった。


足音が聞こえたような気がした。

光を屈折させる魔法を発動させる。


様々な魔法が連発された影響で、魔力が乱気流のように渦巻いていた。


簡単な魔法の弱い魔力の波動ならば、紛れてしまうはずだ。


息を殺す。

今は、見つかっていない。


いずれ、濃霧は消え去る。

炎の壁も消え去り、魔力の乱気流も治まる。


そうなれば終わりだった。

居場所を特定され、殺される。


あのドリ・クリューツが、滅多やたらに強力な破壊の魔法を振り撒くかもしれない。


今の状態では、逃げられないだろう。


魔力の乱気流が治まる前に、ドリ・クリューツが全方位の攻撃を思い付く前に、掴まなければならない。


勝機を。


(……どうやって?)


攻撃魔法を使えば、すぐにばれてしまう。


こっそりと背後から近付き、短槍で倒していくしかない。


暗殺者のように、急所を一突きにし、呻きさえも口にさせぬよう。


(……この足で? 三人を?)


不可能に決まっている。

他に手はないか。


解除の魔法が何度も叫ばれている。

霧が、徐々に晴れていく。


炎と闇と霧が入り混じった図の中に、三人の魔法使いの姿が見えた。


と、三人の動きが止まった。

しばらくして、今度は集合する。

話し合いでもしているのか。


怒声が響いた。

口調からして、ドリ・クリューツだろうか。


何度か、火球が叩き付けられる。

幸い、シーパルたちの周囲で破裂することはなかった。


なぜか、三人が去っていく。

遮ろうという村人はいないようだ。


口汚く仲間を罵るドリ・クリューツの声が、聞こえた。


霧と炎の壁が消えても、シーパルはしばらく動かなかった。


三人が去ったことを確認してから、右足の治療を始める。


「なんで……」


なぜ、勝利を目前にして彼らは立ち去ったのか。


武装した村人たちが、駆け寄ってきた。

シーパルの負傷に、絶句する。


「あんた……!」


「僕は……大丈夫です……。それより……他に怪我人や亡くなられた方は……?」


「何人か怪我をしたが、死んだ奴はいない……」


「そうですか……」


少しほっとした。


村人に死者が出ていたら、ティアに合わせる顔がない。


「怪我人の方を……治療します……」


「みんな軽傷だ。人質になってた奴らも、みんな無事だ。それよりも、あんたらが……」


「大丈夫です……」


ユファレートも、意識はないが命に別状はないようだ。


とにかく、村人に死亡者が出なかったことが、不幸中の幸いだった。


なにをするべきか、考えた。

敵は、まだ残っている。

オースター孤児院に戻らなくては。


ユファレートをどうするか。


治療はしなかった。

意識を取り戻しても、戦う力は残っていないだろう。


シーパルは、まだ戦える。

歩くことはできなくても、まだ魔法を使える。


ユファレートよりも、自分の治療を優先するべきだった。


仲間への情よりも、勝利の可能性を微かにでも上げることを考えなければならない。


ユファレートは、村に置いていくべきか。


村は混乱している。

情報が漏洩するかもしれない。


ユファレートが村に残されていることを知ったら、敵はどうするか。


ロデンゼラーでも、ユファレートは狙われていた。


おそらく、襲われることになる。

村人たちにも、犠牲が出る。


「僕たちを、オースター孤児院まで連れていってもらえませんか?」


歩くことができない。

村人たちに頼んだ。


オースター孤児院には、多くの子供たちがいる。

ティアも、リンダもいる。


テラントやデリフィスも、生きていれば必ず戻ってくるはずだ。


まだ、希望はある。

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