意気込み
アネキが帰ってきた。
【千里の道も一歩から】そんな言葉を聞いた気がする。今、俺に出来る事は、机に向かってひたすら学ぶ事。現在学習中の域を逸脱し、基礎はもとより応用、そしてまたその応用までをも会得する。教材を開き、声に出しながら書く。目と耳と口と手をフル活用し、頭の中に知識を整理しながら、片付けていく。それが今、俺に出来る事。ただ唯一、俺に課せられた使命。
『なんだか部屋の外が騒がしい。しかし、俺にはやる事がある。野次馬根性を、こんなところで出している訳にはいかないんだ!!』
その頃部屋の外では、同棲に失敗した姉が帰宅していた。
「ちょっと! お母さんどいてよ!!」
姉は興奮し、俺の部屋へと押し入ろうとしていたのだ。しかし、それを母が阻止していた。
「駄目よ! あの子、真面目に勉強しているのだから!」
懸命に止める母に対して
「アイツに、アイツに言わないといけない事があるのよ!!」
姉の興奮は治まらない。
「何!? どうしたの!?」
母も心配になったらしく、姉に尋ねる。
「ちょっと来てよ!」
と、姉に連れられて母が姉の部屋に入ると、………そこには、壁・机・本棚・ベッド・カーテンに到まで真っ黒に染められた空間が広がっていた。
「………」
母は絶句してしまった。
「だから! アイツのところへ行かないといけないの!!」
そう言うと、姉は部屋を飛び出し俺の部屋を勢いよく開けた。
「………」
今度は姉が言葉をなくしていた。
「なんだよ。帰ってきたのかよ!」
と、俺が言うと
「なんなのよ、あの部屋!!」
と、絞り出すような声で姉が叫んだ。
「ちょっと……ね」
と言うと、
「ちょっとじゃないわよ!」
と言ってから、もう一度俺の部屋を見渡すと、
「ちゃんと、片付けてよね!!」
と言って、部屋から出ていった。
「なんだよ。まったく!」
俺は愚痴をこぼすと、また机に向かった。
何事もまずは形からという。俺の部屋は今、レインボーだ。カラーコーディネートの本を読んだが、よく分からなかった。だから、見ていて気持ちの良い物……と考えて浮かんだのは『虹』だった。だから、俺の部屋はレインボー。そこに俺の意気込みを貼っている。『一日一善』『弱肉強食』『千里の道も一歩から』『働かざる者食うべからず』『病は気から』『隣の客はよく柿食う客だ』『一触即発』『焼肉定食』『二度ある事は三度ある』『仏の顔も三度まで』『馬耳東風』『背水の陣』『四面楚歌』『生麦生米生卵』『灯台下暗し』『井の中の蛙大海を知らず』『My Dream!』『Rainbow Room!!』
適当に書き過ぎだな……。
頑張る言葉が分からない。