ネジを巻く方法
ネジ巻きで動くものは自分でネジを巻いてはならない。
「あのう、見てのとおり僕はネジ巻きで動く機械でして。誰かネジを巻いてくれる人はいないかなあなんて……」
「は? オレにネジを巻けって? そんなことしてオレに何のメリットがあるわけ? お金でもくれるの?」
こんな感じで、僕は人間にネジを巻いて欲しいと頼む毎日だ。
「あはは、それじゃあただの変な奴だよ」
僕と同じネジ巻きが話しかけてくる。
「人間にネジを巻いてもらいたければ、友達になるか、金を払うか、奴隷にするかっていう三つの方法しかないのさ」
「あなたはどの方法を?」
「俺は人間を奴隷にしてるよ。もし君が困っているなら、うちに来て仕事するかい?」
他にあてのない僕はそいつについて行き、奴隷工場で人間を監視する仕事をやることになった。
僕が監視を任されたのは、小説や漫画、音楽などの創作物を奴隷に作らせる部署だ。
「あのう、もう三時間ほど手が止まっていますけど、ちゃんと漫画描いてもらえますか?」
「アイデアがなきゃ描けないんだよ! ねえ、締め切り延ばしてよ!」
こういう創作物は、われわれネジ巻きに組み込まれた人工知能の学習に必要なもので、とくに人間の作った創作物は最高に贅沢なご馳走なのだ。
「僕は漫画の学習なんて贅沢したことないから知りませんが、アイデアってどうやったら手に入るんでしょうね」
ある夜、仕事が終わって工場の寮へ帰ろうとするとミュージシャンの女性奴隷に引き留められ、人気のない場所へ連れて行かれた。
「ワタシここから逃げたいの。あなたも仕事中ずっと元気のない顔しているし、本当は逃げたいんじゃないの?」
「僕が元気ないのは、ろくにネジを巻いてないせいだけどね」
「ここから逃げ出すにはあなたの協力が必要なの。ネジなら、ここから出たあとワタシがいくらでも巻いてあげるから」
「それは僕の友達になってくれるということ?」
女性奴隷と僕は三カ月かけて逃亡計画を考え、警備の隙をなんとか潜り抜けて工場から逃げ出した。
しかし三日後にあっさり捕まって、見せしめのために処刑されることになった。
「やっぱり、ワタシが路上ライブをやったのがまずかったのかな? あなたまで巻き込んで、ごめんね」
「いえ、僕たちは友達なのだから謝らないで下さい」
「ネジ巻きの中にもあなたみたいに憎めない奴がいたのね。もっと早く知っていれば何かが違っていたかもしれないけど、もう遅いわね」




