人工海の人魚
「人工海の人魚かぁ…」
にしきはそう言い、おはぎの方をみて反応を待った。
「…」
16cm位の大きさの人魚のおはぎは動揺しているようだった。しかしにしきは言葉を続けた。
「良かったね、おはぎちゃん。今後は海の人魚達と接触することは無いよ。」
だからマナに命を狙われることも無いし、2度と会うことも無いよ。そう伝えたつもりだったが、おはぎはなぜか元気がなく
「う…うん」
と答えた。
そして続けてこう言った。
「『人工海の人魚の世界』って…ここは、『海の人魚の世界』じゃなかったの?」
にしきも、ベッドメイクのたこの女性も、おはぎをみた。
「えっ…?ここは、元から人魚は人工海の人魚しかいませんよ。
飼い主から捨てられて川で泳いだり海で泳いだりする人魚も稀にいるかもしれませんが、元々この"人工海の人魚"は、"海の人魚"を人工的に、ペットとして飼えるように長い年月をかけて、作り替えたものですよ。」
「!」
「海の人魚もいたのですね」
「野生(!)の人魚は、人間に捕らえられて殺されて絶滅したのですよ」
おはぎは、たこの女性に言われてがく然とした。
【おはぎとにしき】がペアで次から次へとここの"海の人魚"がいる世界で、他の世界の【おはぎとにしき】ペアと入れかわっているのだと思っていた。しかし、ここの世界は、《過去に海の人魚がいた世界=元は海の人魚がいたが、人間に絶滅させられて改良されて作られた人工海の人魚しかいない世界》だったのだ。
つまり、純粋な海の人魚がいた世界とは違う別の世界に移ってしまっていたのだった。
いつそうなってしまったのかはわからない。
様々な【おはぎとにしき】ペアが入れ替わる中で、世界も変わってしまったのだろうか。
地上に戻って元の生活(おはぎは水槽の中、にしきは仕事)になっても少しおはぎは上の空だった。
小さな人魚のおはぎは昔の記憶、海の人魚だった時の記憶を思い出しているようだった。




