表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

音の無い音。

ふわふわと前を歩く彼女から、再びメールが届く。


彼女のすごいところは、携帯を一度も見ずに、文章作成から送信まで行ってしまう事だ。

彼女は僕の顔を見ながら、ぱぱっと手元で携帯を操作し、そのまま送信までしてしまう。

画面を一度も見ずに。


だから僕は、彼女が口が利けないという事実を時々忘れそうになった。

まるで口の一部のように携帯を操作する彼女。その時の表情、感情が、手に取るように分かった。


「ところで一番好きな動物は?」と彼女。


振り返る。栗色の髪が揺れる。よく揺れる髪。そしてよく笑う。



えー、なんだろ??



…かっ、カメかな。。。。



僕はその通り送信。



携帯を見た彼女は、少し驚いたような顔をして、くすっと笑った。



僕の目を見つめながら、かたかたっ、素早く手元だけでメールを作って僕に送ってきた。



「カメって渋すぎ! ふつうあんまりいないよw」



と彼女。ま、そうかもしんない。ミドリガメとか好きだったんだ。


「小さい頃カメが好きでサ」と送った。


「ミドリガメとか?」と彼女。


「そうそう。」


「ミドリガメって、ホントはめちゃくちゃ巨大化するって知ってた?正式名称はミシシッピアカミミガメ!成体になると30センチぐらいになるのだよ!」と彼女。


へー。


「ただ、大半は、そこまでのサイズになる前に病気で死んじゃうらしいのだ。かわいそうだ。」と彼女。


そうなんだ。


「名前は?」と彼女。


「カメ吉」と僕。


少し笑って「ベタだねーw」と返ってきた。


「ジェニファーとかつけたらヘンだろ?」と僕。


「外国生まれなんだからOKなんじゃん?」と彼女。


「オレ的には外人名つけるとしたらロドリゲスだ!哲学者みたいでいいだろ?」と僕。


「カメはみんな哲学者なんだ!なんか意味深な表情してるだろ?」と送ったら少し笑って、



「呼びにくいから却下!>ロドリゲス」と返ってきた。



彼女はよく喋る。いや、口に出してではないけど。ハタから見ると、横にいるのにお互い無言でメールを打ち合ってる不思議なふたりに見えているのだろう。


まぁいいや。



「動物詳しいね」と僕は送った。


「うん」


「好きなの動物?」


「うん」


「どのへんが?」



「言葉が通じないから」



僕には意味が分らなかった。




「カメ吉君も天国できっと巨大化してるよ!150メートルぐらいに!」と彼女。



それじゃ怪物だよw




「一番好きな動物は?」と僕は聞いてみた。



「一番好きなのは人間!バカな事いっぱいするからw」




と彼女。



ま、その通りだね。そうなんだよね。




「ちなみみにカメがいる両生爬虫類館はここからだと一番奥なのだよ。そこまで別の動物を見ましょう!」と彼女。




「哲学者好き?」と再び彼女からメール。




「じゃ、白フクロウから始めましょう!彼らも哲学者だから!」と彼女。




「コンドルとかは?」僕は聞く。



「やつらは単なる女好き!頭からっぽだからw」と彼女。


「オトコマエはみんな女好きなの!」と彼女は続ける。



なんか意味深だ。



いろんな見方があるもんだと僕は感心しながら、彼女に連れられるがまま、白フクロウのいる東園に向かった。



歩くたび、彼女の髪がふんわりと揺れた。その髪はふわりと宙を舞う鳥の羽のように見えた。



僕はその羽に連れられ、彼女の後に続いた。



やわらかい髪の香りが、新緑のさわやかな香りと共に僕の元に届く。




音の無い音を心で感じながら。






(続きます!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ