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1話 魂

魂の形模索中です!

「受付したいんですけど…」


「それではお薬手帳と魂をお願いします。」


「はい。」


俺はカバンからお薬手帳を取り出し、胸から魂を取り出した。


「お名前を呼ばれるまでお待ち下さい。」


待合室には数人いた。小さな女の子を連れている親子と老人、サラリーマンがケータイを見ながらイスに腰かけている。


「ねぇねぇママ、この絵本読んで!」


女の子は小さくだが期待に満ちた声で母親に話しかけた。


「良いよ。」


母親はニコッと笑い絵本を読み始めた。


「原貴さん。」


「はい。」


老人が診察室に入った。その老人は体の節々が痛むのかゆっくりと歩いていた。ごくごく普通の待合室の様子だ。俺はのんびりと名前を呼ばれるまで待った。


「ありがとうございました。」


老人がしゃがれた声で感謝を伝えた。その老人の手には魂が置かれていた。フワフワとしたマシュマロのような魂だった。


「相田聡さん。」


次はサラリーマンが診察室に入った。俺はサラリーマンの魂の形が気になり早く出てこないかと待っていた。


「はいおしまい。面白かった?」


「うん!」


女の子は次に読んでもらう本を取りに行こうとしたが、順当に行けば次は親子の番だから母親が次の本を持ってこないように言った。女の子は残念そうにしていた。


「笹原佳奈ちゃん!」


「はい!」


女の子が看護師さんに呼ばれ診察室に入った。母親は女の子の後ろ姿を幸せそうに見つめながら診察室に入った。


俺はサラリーマンの魂を横目に確認した。その形は綺麗な丸だった。コンパスで書いた円のように綺麗な丸だった。


俺は自分の魂の形を思い出した。それはモヤモヤとした煙のような感じでハッキリとした形はまだなかった。


俺は女の子の魂の形を確認することにした。


「良かったね何ともなくて。」


「うん!」


女の子たちが出てきた。女の子の魂はウサギのような形をしていた。小さな女の子ですら魂の形が明確なのに、俺は高校生になってもまだ不明瞭なままだった。


「魂田白斗《たまだはくと》さん。」


「はい。」


俺は診察室に入った。中には厳格そうなおじさんがいた。


「今日はどうしんだい?」


「不調とかではないんですけど、自分の魂の形が未だに不明瞭なままなんです…」


「君の歳でまだなのはかなり珍しいね。何か好きなものとかこういう人間になりたいとかない?」


「ありません…」


「そうか…何か悩んでいることとかは?」


「毎日が退屈なぐらいです。」


「そうか…」


医師は少し席を外した。俺はぼーっと診察室を観察していた。診察室の壁には余ったスペースを埋めるようにチラシが貼ってあった。魂のご相談にはソウルカウンセリング!行方不明な魂探します。真田探偵所などがあった。


「ごめんごめんお待たせ。」


「いえいえ…」


医師は手に一枚の紙を持っていた。その紙を机に机の上に置いて話し始めた。


「これは私の知り合いが勤めているところなんだけど興味ないかな?」


そこには魂省と書かれていた。魂省はその名の通り政府直轄の組織だ。そんなところを紹介してきたこの医師を少し怪しんだ。魂の形も定まっていない俺がそんなエリートたちのところに放り込むなんてどうかしている。


「俺がこんなところに行けるわけないじゃないですか。」


「誤解しているようだけど、ここには君の魂の相談に行くんだ。彼らの専門分野だからね。私は君を大学病院に紹介する代わりに魂省を紹介しただけだよ。」


「そうですか、誤解してすみませんでした。」


「いやいや謝る事じゃないよ。こっちこそ伝え方が悪かったね。ごめんね。」


俺は病院を後にした。魂省を紹介されたとはいえそんなすぐに行動に移せるような場所でもないため何ら変わらない日常を過ごしていた。


「ハク!こっちこっち!」


「おー!」


今日は高校の創立50周年記念でイベントを行っている。出店やライブ、劇など各クラス様々な出し物をしている。俺たち2-1はカレーの出店をやっている。


「カレー1つ400円ね!」


「はーい!」


みんな楽しそうにイベントを楽しんでいる。


「ハク!早く手伝えって!」


「ごめんごめん!」


俺はカレー屋の裏方でばたばたしていた。


「こんにちはー。」


「おっ!気前良さそうな兄ちゃんたち、カレー激辛まであるけどどうする?」


「オモロそうやんけ!挑戦してみるわ!お前もやるやろ?」


「当たり前やんけ!」


「毎度あり!」


ちょっとガラの悪そうなでも優しい兄ちゃんたちの魂の形はメラメラと燃える炎のようだが、熱いだじゃなく優しい暖かな炎だった。


「俺もあんな風になれるかなぁ…」


「あんな風にか!?俺はなりたくねぇわ。」


俺の独り言が変な風に誤解されてしまった。でも魂の形があんな風になれるのなら誤解されたままでも良いや。


「ハク!何ボーッとしてるんだ!カレー!」


「あっごめん!」


俺たちはバタバタとでもとても楽しい1日を過ごした。



プルルル!プルルル!


「はい?」


「白斗君かな?」


「あっ!この前の病院の先生ですか?」


「そうそう、最近調子どうかな?」


「あんまり変わりはないです。魂省にはまだ行けてないですけど…」


「そんなにすぐ行くとは思ってないから大丈夫だよ。でも早めに行くことをお勧めするよ。鉄は熱いうちに打て、ではないけど手遅れになる前に行ってほしいからね。」


「そんなにですか?」


「うん…一生モヤモヤのままで良いなら別に良いけどね。」


「それはイヤです!」


「うるさっ!電話越しでそんな大声出さないでよ。」


「すいません…」


「まぁ元気そうで良かったよ。君、病院に来た時全然元気なかったから心配してたんだよ。」


「色々ありがとうございます。失礼します。」


「はーい。」


(魂省かぁ…)

次回もお楽しみに

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