古き者達
「やはり来たか……!」
フーヤオの術とドワーフ達の奇襲により、先手はとった。
だが、数では圧倒的に相手が上回る。それにいち早く体勢を立て直したのはウァラクの部隊だった。
早くもドワーフ達と交戦し、奇襲による混乱から立ち直りつつある。
フーヤオは引き続け援護を続けてくれてはいるが、それでもあの男を倒すには至らないだろう。
本来ならばアシェンが真っ先に向かわなければならない相手だが、その視線は別の方を向いていた。
ジェレミーという男の背後に控えていた、鎧の兵士。
全身を鋼に覆われたその奥からは、吐き気がするほどの悍ましい魔力を感じる。
「古き魔力か」
門を通ってやってきた、古の世界の力を持つ者達だ。
あの鎧の中に人は入っていない。腐った肉の塊のようなものが、鎧の内部に詰まって蠢ていているだけだ。
既に生命とは呼べない何かが、この世界を侵蝕する。奴等が歩いたその足元の草木が枯れていることに、この戦場では誰も気付いていないだろう。
「まずはあれを仕留める。……カイ、時間を稼げよ」
木の上からアシェンは飛び降り、古き鎧に奇襲を仕掛ける。
奴等は素早く剣を抜き、アシェンを迎撃した。
数体で囲んで武器を振るうが、それは一発とてアシェンに掠ることはない。
それでもその動きは人間離れした速度で、空ぶった剣撃が木を切り裂けばそのまま腐り落ちさせる力を持っている。
「吹き飛べ!」
風の魔力が爆発し、一気に古き鎧達が吹き飛んだ。
だがそれでも、奴等は全く堪えることはない。ダメージなど殆ど入っていないかのように、ゆらりと立ち上がるとアシェンに向かって突撃してくる。
どうやら向こうも倒すべき相手がアシェンであると気付いているようだった。
これはむしろ、アシェンにとっては都合がいい。この鎧を相手にさせては、味方にどれほど被害が出るかわかったものではないからだ。
炎の剣を呼び出し、古き鎧と打ち合う。
兜の奥でぎょろりと、目玉のようなものが動く。
鎧達は再び、瞬く間にアシェンを取り囲んだ。
お互いの攻撃が仲間にあたることも厭わない斬撃。仮に当たったとしても、すぐに起き上がり戦線に復帰する。
「変わらず厄介な相手だ……!」
片手に込めた風の魔法で、一体を弾き飛ばす。
仰向きに倒れた鎧に呼びかかり、兜の部分に炎の剣を突き刺した。
悲鳴をあげることもなく、もがくこともなく鎧は静かに動かなくなり、どろりと鎧や兜の隙間から腐った肉のようなものが流れ出ては周囲の草木を萎れさせていった。
「……やはり骨が折れるな」
古き鎧達はまだアシェンを取り囲んでいる。
その数は十体以上。これらを全て片付けるのは、アシェンの力を以てしても決して楽なことではなかった。




