6話
思い込みで本当に高く跳べなくなるノミの話を聞いたことがある。
狭い場所に閉じ込められたノミは、その高さに慣れてしまい、自分がその高さまでしか跳べないと思い込む。
そして広い場所に出ても、それ以上跳ぼうとしなくなるのだという。
本当はもっと高く跳べるのに。
自分の限界を自分で作ってしまっているのだ。
その話を聞いてから、アシュレイはずっと思っていた。
自分こそ、そのノミなのではないか。
周囲から魔法が使えない、落ちこぼれだと言われる度に肩身が狭くなる。
貶められているうちに、本当に自分の駄目だと思って、本来頑張ればできることまで出来なくなってしまうのでないか。
人は自分一人で人格が決まるのではない。
人にどう扱われるかも大きく関係がある。
美しいと憧れられていれば、たおやかに。
尊敬されていれば、立派に。
周囲の目に合わせて自然とそれらしくなっていくのだ。
アシュレイはどうだっただろうか。
優しくしてくれる人はいた。心配してくれる人もいた。
でも、信じてくれる人はいなかった。
大丈夫、お前ならできる、と。
ノミが跳ぶのを邪魔する蓋のように、上から圧し掛かってきて自分を委縮させて散々な評価から、アシュレイは逃げ出したかった。
一度魔法学園を離れて、背中に張り付いたレッテルから離れて、自分というものを見つめなおしたかったのだ。
その行動のもとにある気持ちは、変わりたいという思いだ。
変わりたい。
自分が望む自分に、変わりたいのだ。