雨の中の出会い 【月夜譚No.248】
何か声が聞こえると思ったら、店の軒先に濡れそぼった仔猫がいた。みーみーと高い声で懸命に鳴いて、真ん丸な黄色の瞳は今にも泣き出しそうに見える。
彼はしゃがみ込んで仔猫を抱き上げた。抵抗しないところを見ると、人に慣れているようだ。
最近は梅雨空ばかりで、客足も遠のいている。丁度今も、客がいなくて暇していたところだ。
仔猫を店内に入れ、バケツに水を汲んでくる。浅く汲んできたのだが、そこに入れようとすると、小さな身体に緊張が走るのが判った。しかし、入ってしまえばなんてことはない。仔猫も安全だと理解したのか、大人しく水の中に座り込んだ。
手で掬って水をかけてやると、薄汚れていた毛並みが徐々に綺麗になっていく。暫く続けていくと、純白の長毛が現れた。
清潔なタオルで水気を拭き取ったら、これはまた愛らしい仔猫ではないか。
「お前は、何処から来たんだい?」
尋ねると、高い声でみーと鳴く。
「良かったら、うちにいるかい?」
みーみーと二回鳴いた仔猫は、どこか笑っているように見えた。