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全ての始まり

 転送された先で俺は茫然と立ち尽くした。


 辺り一面が真紅に覆いつくされ、見知った人々が血まみれで横たわっている。

 いつも賑やかな村の面影はなく、そこら中から聞こえてくる苦悶のうめきと悲鳴が重なってまさに地獄のようだった。


 頭が思考を放棄したかのように止まる。だが、逃げてくる村の女の子を見て、いてもたってもいられず俺は走り出した。

 ただ一つ、ルルの安否を願いながら。




 ルルの家に向かう途中、助けを求めてきた人たちは何人もいた。からかってきた奴らもいた、親切にしてくれたお爺さんもいた。それでも、止まるわけにはいかなかった。今足を止めれば、自分は絶対後悔するだろうから。


「みんなごめん、俺はルルがー」


 その続きは炎にまかれて消えていった。





 ルルと俺の家に着き、俺はこれでもかというくらい大きな声でルルを呼んだ。ごうごうと渦巻く炎の音にかき消されないように、人生で一番大きな声で。

 それでも返事はなく、もう家にはいないのかと振り返った時。


 ...ザクッ


 あきらかに俺を狙った剣は、俺が間一髪でよけたことによりむき出した家の柱に突き刺さった。しかし、辺りを見回しても誰もいない。


 緊迫した空気が流れる。俺は腰の剣を抜いて構えた。いつも使っている木刀を握りしめて、静かに時を待つ。何秒たっただろうか、時間の感覚が長く感じた。


 ヒュッ


 空気がわずかに揺らいだのを感じて、静かに閉じていた目を開けた。瞬間顔まで迫ってきていた短剣を一閃し、剣が飛んできた方向に顔を向ける。


 見つけた。あの屋根の上だ。理解した瞬間、一気に距離を詰める。そして地面を蹴って、屋根へとのぼる。


 一番大きな村長の家の、レンガでできた屋根に男は立っていた。

 30~40代くらいだろうか、髪や髭はぼさぼさで清潔感の欠片もない。にやにやと笑っているのが不気味で思わず剣を構えた。


 男はなめ腐った様子でナイフを振り回しながら言う。


「あ?お前がさっきのナイフをよけたやつだよな、まだずいぶんとガキじゃねえか。ちっ、俺のナイフの腕も随分と鈍っちまったかな。」


 構えもせず男は無防備にあざける。だが熱をもったレンガが熱いからだろう。堂々と男は俺の前で屋根から地面へと飛び降りた。


 慌ててそのあとを追う。そして、男の取り出した剣を見てはっと息をのんだ。それは赤黒く染まっていて、いつも俺が狩りを終えた時の剣に状態がよく似ている。


 だが、そう考え事をしている間もなかった。男の剣が目前に迫り慌てて剣で受ける。男の素直な剣筋は読み易いがこちらは木剣、あちらは鉄剣ということもあり手首にじんじんとした衝撃が伝わった。重い。


 急いで身体強化のスキルを発動させる。

 だが、それも焼け石に水。男の猛攻にさらされ、なんとか流すので精いっぱい。一撃一撃のなかに明らかに突出して重いのもあり、カウンターを返すことすらできなさそうだ。


 なんとかこいつのスキルが分かれば...そうだ、!


(虚無・創造の創造スキルでスキル≪鑑定≫を創造!)


 うおっ、一か八かだったけどいけた!スキルの説明を見ている暇はない、もうやけくそだけど!


(目の前のおっさんを鑑定!)


 ≪鑑定からの報告≫


 ギルモラ・クラント 称号『盗賊の頭』


 Lv:52


 HP 50000 / 50000

 MP  300 / 4200


 スキル:多重攻撃(Lv;2)


 実績 :盗賊の頭 

     殺人


(スキル名多重攻撃を鑑定!)


「 多重攻撃 ランクD 消費MP 100


 Lv:2


  一撃一撃の攻撃・魔法を三倍の威力で放つことができる(Lv+1) 」



 なるほど、剣の性能の差だけではなかったのか、とやけに冷静になった頭で思う。

 これらの情報はすべて頭に浮かんできたもので、おかげで男の剣もなんとか気を散らさずに堪えれている。

 だが、ジリ貧だ。打開策として男に触れられれば虚無を使って勝つことはできる、とは思う。

 でも、なにより俺は人を殺したくなかった。そして、その甘さがあんな事態を引き起こした。


 嫌な、鈍い音がした。一拍遅れて剣が折れたのだと気づく。男の剣が迫る。男が笑ったのが見える。あわてて後ろに跳躍して、間一髪剣を躱す。


 あ、と思った。


 いつの間にか俺は数名の盗賊に囲まれていたようで、彼らは輪になって楽しそうにこちらを見ている。俺の着地点の先にいる盗賊が、楽しそうに剣を構えてー--



「だめっ!!!」


 聞きなれた声がして、辺りにおびただしいほどの鮮血が飛び散った。


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