到着
ゴブリンのコロニーから女性の皆さんを助けてから二日が経った。
人数が多いとかなり目立つもので、道中でゴブリンを初めとしたコボルトやオークと言った魔物が襲いかかって来た。
ゴブリンとオークが現れた時に起きたパニックはまぁ……お察しということで。
事前に気配を察知した鳴とエレナさんが倒しに行けば良かったかもしれないが、もし二人でも気付けないくらい気配を消すのが上手い魔物が潜んでいた場合に備えて、それは出来なかった。
自分の手の届く範囲でしか、人は誰かを守ることなんて出来ない。エレナさんがそう言っていた。
なんか名言っぽい。いつも迷言っぽいことばかり言ってんのに。
「カガリくん。今なんか失礼なこと考えてない?」
「なんのこと?完全に言い掛かりですよ」
とにかく魔物の襲撃も相俟って、移動にかなり時間が掛かってしまった。移動もやはりスローペースだったし、慣れない旅路にストレスを抱えてる人もいるだろう。
だけどそれも今日で終わりだ。なぜならようやく、目的の町に到着したからだ。
今は門番に彼女たちについて事情を説明しているところだ。
エレナさんは貸した服はそのままあげるという話を、彼女たちにしている。
「本当に良いのですか?この服、結構高級そうですが…」
「“全然?普通に古着屋で買った安い服だから気にしなくていいよ”。まぁAランク冒険者エレナの服ってだけで、結構高値で売れるんじゃないかな?ボクの非公式ファンクラブとかに。生活に困ったらそういう人に売っていいよ」
「い、いえ!そんなことはしません!大切に致します、エレナ様…」
「うん。それはいいけどなんで顔赤らめてるの?」
エレナさんは女の子にもモテるタイプの人だったかー。
だけど本当にあげちゃって良いのだろうか?あの人、今パーカー着てないから口元隠すのずっと大変そうだぞ。
というかシュリさんのスキルが反応したぞ。絶対高級品だろ。
「なるほど。事情は把握致しました。すぐに町長に報告します。見れば行方不明届けが出ている方も多いですし、彼女たちの御家族はさぞお喜びになることでしょう。ありがとうございます」
「それはよかったです。そうなってくれたら俺も嬉しいです」
門番さんの事情聴取も終わり、囚われていた女性たちの多くが町の衛兵たちに預けることになった。
ようやく肩の荷が降りたような感覚だ。思わず息を大きく吐き出す。
「大丈夫か?カガリ殿」
「え?あぁサクヤさん。はい、大丈夫ですよ。ちょっと疲れが溜まっただけですので」
なんせ護衛とか初めてだったからな。常に周りを警戒しなきゃいけないから、肩が凝る凝るわで…。
ハンマーでちょっと肩叩きしたいくらいだ。中身シュリさんだからそんなこと絶対しないけど。
「無理はするなよ?私はこれから冒険者協会に向かうが、カガリ殿たちは?」
「俺らもその予定です。けれど先にエレナさんの服の調達ですかね。彼女ちょっとイケない格好だし」
「ああ…。まぁ言わんとしてることはわかる」
エレナさんは今、上がインナーと下が太腿までガッツリ出てるパンツだけだ。
しかもスタイルがくっきり現れるタイプのぴっちりインナーだからエロい。目のやり場に困る。
「まぁそれはそれとしてだ。カガリ殿……この恩はいつか必ず返す。困ったことがあったらいつでも呼んでくれ。必ず駆け付ける」
「はい。その時はぜひ、よろしくお願いします」
こうして俺たちは、無事にアーロンの町に入ることが出来た。
まずは早急にエレナさんの上の服だけでも確保して、それから冒険者協会に今回の件の報告をしに行こう。
「という訳でエレナさん。服屋さんに行きましょう」
「先に協会に行くでもいいけど?」
「俺が良くないんで行きましょう」
「う、うん。わかったよ…。なんでそんなに食い気味なの?」
この人、ギザ歯には敏感だけど他への意識は低いよな…。
と、そこで鳴が唐突に切り込んだ。
「エレナさんの今の格好は、男性が欲情するのに充分な格好です。恐らくパパはそれで……」
「鳴さんちょっと黙ろうか!?」
「え?欲情って、え?そんな様子はダンジョンでも一切……えぇっ!?」
鳴の言葉で急に恥ずかしくなったのか、エレナさんは顔を真っ赤にしながら自分の身体を隠す仕草をする。
うーん。この、うーん…。その仕草もえっちぃなぁ。
とりあえず俺の上着を貸してあげて、服屋さんへと向かった。
その間「カガリくんのえっち…」という罵倒を何度か聞かされた。
ありがとうございますと言っておこうかな。心の中で。
女の子の罵倒は褒め言葉だって義父さんが言っていたし、そうしよう。
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モチベ上がります。




