ゴブリンコロニー戦3
「おまたせ〜。そっちはどう?」
全員に服を渡し終えたエレナさんが戻って来る。
しかし何故かパーカーは着ておらず、上はあの身体のラインが丸わかりのピッチリインナーだけだった。
……こういう格好って裸よりエロくね?
「パーカーどしたん?」
「結構な巨乳の子が何人かいて、替えのパーカー全部貸しちゃった」
「なるほど…」
エレナさんのパーカーはブカブカだからな。それしか貸せる物が無かったならしゃあない。
「町に着いたら大きいサイズの服とかパーカーとかもっと買っておかなきゃなぁ。で、こっちは?」
「ああ、はい。相変わらず鳴の蛇が暴れ回ってます。でも数が尋常じゃないですね…。減ってる気がしません」
「昨晩だけでも相当倒したのにね。よく今まで人にバレずに繁殖出来たものだよ」
サンダースネークがゴブリンを既に何百と葬ってるというのに、数は減るどころかどんどん増えてる気がする。
コロニーの広さに見合っていない。
「あ!そういえばメイちゃんが、女の子たちは建物の地下にいたって言ってたよ。他の建物にも地下洞窟みたいなのを作ってるのかも」
「それならこの数も納得ですね。かなり広く作ってありそうだし、ゴブリンキングも地下奥深くにいそうですね」
「だね。メイちゃんの話だと、あの比較的まともな建物にあと数人ほど女の子はいるって言ってたよ。その子たちをメイちゃんが救出した後は……」
「俺たちも暴れちゃって良いんですね?」
俺の言葉にエレナさんは親指をグッと上に突き出した。
助けた女性はもう一匹サンダースネークを出して守らせてるらしい。安心してゴブリンどもを殲滅出来るな。
「メイちゃんが合図を送ってくれるらしいから、それまでもう少し待とうか」
「うぃっす。……ん?地下深くまで洞窟が作られてるとしたら、もしかして他にも捕まってる女性がいる?」
「それは大丈夫。メイちゃんが女の子たちに聞いて、ほとんどが一箇所に捕まってたって話だったから。さっき言った通り、あの建物にいる女の子たちで最後だと思うよ」
「そうですか。良かったー…」
あまり地下深くまでは連れて行かないのか?
ゴブリンも臭いを気にしてるのかな…。アイツら自身、元から臭そうな癖して。まぁどうでもいいか。
にしてもサンダースネークに守られてるあの人……ずーーーっと口を半開きでポカーンとしてるな…。
理解が追いつかな過ぎて自分が裸なのも忘れてそうだ。……首から下は見ないようにはしてる。
「エレナさん対策で作ったらしいですけど、実際どうです?鳴にあんなのを差し向けられたら」
「うん。ボクからすればめちゃくちゃ相性悪いね!ボクって遠距離攻撃は得意じゃないし、触れたらほぼアウト。仮に巻き付かれようものなら数十秒くらいで死んじゃいそうだよ」
裏を返せば数十秒は耐えられるってどんな身体してるんだよ…。
明確な数値は忘れたけど、人って確か100ボルトも耐えられずに死ぬんじゃなかったっけ?
まぁ即死しない魔物もそれなりにいたし、異世界ということもあって地球人の俺とは違うんだろうな。鍛え方とかも含めて。
「あの人も。もう大丈夫そうだね」
サンダースネークに守られてる女性を見て安堵するエレナさん。
だけど油断は出来ないよな…。いくらほぼ能無しっぽいゴブリンでも、勘の良い奴がいるかもしれないし。
それに建物を作ってその下に地下を作るとか、敵を油断させるカモフラージュ感が強い。
鳴のサンダースネークが無かったら、俺たちが囲まれて苦労する羽目になるところだったろうな。
……しかしどうしたものか?鳴が無事に全員を助けたところで、まだまだ大量に残っているゴブリンどもと戦うのはちょっとばかし面倒だぞ。ブラックブルのクエストもあるし、時間は掛けたくない。
何か一掃出来る手立てはないものか。
「地下の洞窟か…。ダンジョンとは違うし、中で俺やエレナさんが暴れたら崩れそうですね」
「そうだねー。ボクも同意見」
「……………」
「……………」
「「地下洞窟かー…」」
キラーン。と、俺とエレナさんの目が光って、互いの考えがシンクロした気がした。
「俺。ちょっと良い作戦を思い付いたんですけど」
「奇遇だね〜。ボクもだよ」
「でもあそこの人がいたら危ないですね。どうします?」
「そこはボクに任せてよ!キッチリ助けるから」
「ドジしません?」
「大事な局面ではしないよ!?」
まぁそこは俺も信頼してるから心配していない。
よし。そうと決まれば、鳴の合図が来たらさっそく……
―――ビシャー!
と、奥の建物から雷が上へ向けて放たれたのが見えた。
恐らく今のが鳴の合図だろう。
ハンマーを強く握り締めると、激しく光り輝いた。
シュリさんもやる気満々のようだ。
「それじゃあエレナさん。柵を壊したら俺を打ち上げてくれます?俺がぶっ壊しますんで」
「お?そういう感じ?いいよー。それで行こうか。女の子はボクがキッチリ回収しとくから、遠慮なくやっちゃって!」
「了解っ!」
短い作戦会議を終えて、柵を叩き壊す。
そうするとサンダースネークに気を取られていたゴブリンどもも当然気付く訳だが、問題ない。
その場でジャンプして、エレナさんが自分の足に俺を乗せる。
「それじゃあ、お願いしまーす!」
「よっしゃ行ってこーいッ!」
バビューン!と俺は天高くまで打ち上げられる。うっは!安全バーなしのジェットコースターみてぇだ!?
「ありゃ?なんか思ったよりも高く打ち上がってる…?まぁいいや!そこをどけー、ゴブリンどもー!風切舞ッ!」
その後エレナさんはすぐに女性の元へ、ゴブリンを真っ二つに蹴り切りながら駆け付けて救出を完了した。
……昨日から思ってたけど、あの人前より強くなってね?気のせいかな…。
そんな様子を見ていると、ゴブリンどもが豆粒に見えるくらいまで打ち上げられたところで、俺は自由落下をし始めた。
たっけぇー。百メートル以上は飛ばされたなこれ。
「それじゃあ。俺もキッチリ仕事しますか。お願いします……シュリさん!」
ハンマーが光り輝き、高速で縦回転しながら落下していく。……ん?今なんか隣を通った?まぁいいや。たぶんなんかの鳥だろう。
落下して来る俺に嫌な予感でもしたのか、逃げ出そうとするゴブリンもいるがもう遅い!
地下洞窟なんてものを作ったことを後悔しやがれ!ゴブリンども!?
「彼女たちが受けた屈辱の、十倍返しだ!ハンマースタンプッ!」
―――ドガーーーーーーンッ!!!
回転と落下の勢いをそのままに、ハンマーを地面に打ち付ける。
するとコロニー全体の地面が割れて崩れ初め、周辺のゴブリンが建物ごと埋もれていった。
俺はというと、崩れ落ちて行く地面を上手いこと足場にして乗り移っていき、地割れの範囲外へと脱出した。
……こんなスタイリッシュな動きが出来た自分に驚いています、はい…。これもシュリさんが俺の意識に干渉してるからだろうか?
付喪神ってちょっと怖いけど便利ね。
コロニーを見ると、もはや見る影もなく、まるで地震の影響で陥没して出来た瓦礫みたいになっていた。
「さて。鳴とエレナさんはどこに……ん?」
二人と合流しようと探しに行こうとするが、そこで崩れた地面を突き破って這い出てくる血だらけの存在が一匹……ゴブリンだ。
しかし通常のゴブリンよりも大きく、二メートルはありそうだ。恐らくゴブリンキングだろう。恨みがましそうに俺を睨み付けてきている。
明らかに瀕死の状態だな。絶対俺のせい。ざまぁみろ!
「確かCランクだっけ?その程度で、しかも瀕死なら俺一人でも十分……」
「きゃーーーーー………!」
「ん?」
なんか空から女性の悲鳴が……しかもこれさっきエレナさんが救出した人の声だった気が…?
空を見あげると、なんかエレナさんが女性をお姫様抱っこした状態で落下して来ていた。
しかも落下位置はちょうどゴブリンキングがいるところで……
「風切舞!」
―――スパァーーーン!
そのままゴブリンキングの首を足で切り落とした。
空に退避してたんか、この人…。
オーバーウ〇ッチにかまけて投稿し忘れるとこだった危ねぇ!
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