ブラックブル生息地帯までの旅路1
どうも。Aランク冒険者兼、魔王軍のスパイであるエレナさんを奴隷として従えることになった変態。篝です。
ただいまブラックブルという体長5メートルもあるCランクの牛を狩りに行く途中でございます。
俺は別にエレナさんを従えてるつもりはないが、奴隷契約中は俺の従者みたいな感じになるので、表面上だけでも彼女を従えてることになる。
「ブラックブルのお肉はね、口に入れた瞬間に溶けてなくなるんだよ〜。ホルモンも独特の臭みがなくて食べやすいし、とにかく全部が美味しいの!」
「じゅるり…。美味しいお肉…!」
「こらー。鳴がバカになるようなことを教えないでー」
「はーい」
「お肉ぅ…!」
「あ。手遅れだこりゃ…」
目がお肉になってる鳴の手を引いて街道を進む。
シルバーに乗って移動すればもっと早いのだろうが、残念ながら傷はまだ癒えていない。
なんとか食事出来るくらいまでは回復したが、走ったり戦闘を行うのは難しい状態だ。
ポーションを使ってもいいんだけど、使い過ぎると免疫力の低下に繋がるらしく、基本は戦闘中などに隙を見て使うのが適切らしい。
エレナさんからそう教えてもらった。
「久々のブラックブルのお肉だ…。腕がなるね!」
「でも俺と鳴の試験も兼ねてますし、エレナさんは手を出さない方がいいんじゃないですか?」
「むむっ。確かに…。それじゃあ、道中の危険はボクが積極的に排除するよ。それくらいなら別に良いでしょ?」
「じゃあお願いします。後で美味い魚料理をご馳走しますね」
「よっしゃー!気合い乗ってきたぜー!?」
エレナさんはどうやら肉より魚の方が好きなようだ。
ダンジョンでは肉ばっかで飽きたってのもあるんだろうけど、喜びようが段違い。
魚を含む食材は、出発前に以前の比にならないくらい買い込んだので、どれだけ食っても(主に鳴)三日以上は確実に持つはずだ。
エレナさんの超高級マジックバッグもあるのでな。安心して買いまくれた。
「最近はDランクとCランクの魔物が街道にまで出るようになったらしいから、警戒を怠らずに行きたいですね」
「ふふん。ボクに任せてよ。そんなのボクからすればFランクも同然なんだから」
「……まぁ。そうですね」
確かにエレナさんがいれば、戦闘は頼もしいことこの上ないのだが……
―――ガッ!
「あ」
「「あ」」
……やっぱりか〜。
道端の石に躓いて、顔から地面に倒れていくエレナさん……の手を咄嗟に取って、それを阻止した。
これがあるからなぁ。この人は…。
こっちはエレナさんのドジも警戒しなきゃいけないのを忘れてはいけない。
じゃなきゃ虎の尾を踏むような事故が起きる可能性がある。見晴らしの良い街道でそんなことにはならんだろうけども。
ここにさらに不幸体質があるからな。予想外のことが起きかねない。
「うへぇー…。ありがとう、カガリくん。危うく顔面から行くところだったよ…」
「どういたしまして。なんか久々にドジってるところを見た気がします」
またすぐフォロー出来るように、そのまま彼女の手も引いて歩くことにした。……真ん中が鳴だったら仲の良い家族だなこれ…。
エレナさんはそれに何も文句は言わずに、ただ笑顔で「ありがとう」とお礼を言ってきた。
……ギザ歯、いいなぁ。
「ちょっと。あんまり歯をガン見しないで。恥ずかしい…」
「すんません」
そうして穏やか空気に包まれながら、数時間ほど歩いたところで昼休憩を取る事になった。
ここまで珍しいことに、ゴブリンにすら会わずに進めたな。前は結構見かけてたのに。
「ゴブリンに出くわさないことって、結構よくあるんですか?」
「ううん。クエストに出掛けたら一日十匹くらい必ず遭遇するよ。アイツら数は人より多い説あるし」
「それは嫌だなー…」
「マスター。本日のお昼ご飯はなんですか?」
「ああ。名前は忘れたけど、この白身魚のムニエルにしようかと。今はダンジョン外で昼ですけど、エレナさんはニンニク入れますか?」
「モチ。前にも言ったけど、冒険者は臭いなんて気にしてられないからね!……キスする予定がある時とかは、さすがに遠慮したいけど…」
「それは俺も同感…」
ということで、早速鳴に焚き火をつけてもらってフライパンを置く。
ムニエルは最初は作るのが難しいイメージだったのだが、やってみると至って簡単だった。楽に魚料理を食べたい時にオススメなほどに。
まず魚に塩、胡椒を擦り込んで、小麦粉を軽くまぶす。
温めたフライパンにバターとニンニクを入れて、皮面から焼いていく。
焼き色がついたらひっくり返して、フライパンを持ち上げて、少し火を弱めた状態で焼いていく。焚き火だと火を調節出来ないから、少々苦労だ。コンロが恋しい。
焼けたら皿に移して、味変用のレモンを添えて……
「白身魚のムニエルの出来上がり。レモンは味変用です。お好みでどうぞ」
「おー!美味しそう〜っ。さっそくいただきます……と、行きたいところだけど。お客さんだね」
そう言ってエレナさんは皿を置いて立ち上がる。
彼女の視線を追うと、何やら草むらに隠れてこちらの様子を伺っている魔物がいた。
気付かれたことがわかると、もはや隠れる気は無くなったようで、シュバ!と飛び上がって俺たちの前に降りたった。
その姿は……二メートル前後ありそうなデッカイ、カマキリだった…。
「キシャー!」
「鳴。あれは?」
「ツジギリマンティスです。Dランクの魔物で、非常に好戦的な性格をしています。ですが不思議なことに、人を襲いはしても殺しまではしない謎の魔物として有名です」
「なんじゃそりゃ…」
メイペディアから訳のわからない説明をされたぞ…。
ただ単に強い奴と戦うのが好きなのか?野菜の惑星から来た宇宙人かよ。
「へぇー。ボクとやろうっての?いいけど、死んでも知らないよ。何せご飯を前にお預けを食らってるんだから、加減は出来ないよ」
「キシャー!」
エレナさんの言葉が通じてるのかわからないが、それを無視して飛び掛かってくるカマキリ。
―――スパーンッ!
クロスした鎌の攻撃を紙一重で躱したエレナさんは、俺では到底反応することが出来ない速度で、カマキリの首を蹴り切った。
飛んでった頭は綺麗に残っており、ゴロンと地面に転がった。何が起きたかわかってないって感じの表情だ。
……南無三…。
「ん?ボクの蹴りってここまで綺麗に切れたっけ?……まいっか!さて、ご飯ご飯〜♪」
「死体の片付けは後回しか…」
まぁ別にいいけどさ。俺も温かい内に食べたいし。
視界に入れさえしなければ気にならないくらいの胆力は付いてる。
「んふ〜!美味しいー!」
「はい。レモンをかけるとさっぱりして、また違った味わいで美味しいです」
「喜んで頂けて何よりだ」
その後、何十回か彼女たちのおかわりを作って、ツジギリマンティスの鎌と目と牙を回収してその場を後にした。
あれもその内、どっかの魔物が食うから放置で良いそうだ。
―――そういえば、ツジギリマンティスの出血量が随分少ない気がしたけど……カマキリに血ってあんまないのかな?
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―――グチュグチュグチュグチュ……ポン!
「キ、キシャ〜…」
料理は一度ハマると止まらなくなる。
面白かったらブクマ登録といいねと高評価をお願いします。




