前代未聞の奴隷墜ち(仮)
追記。
牛は英語でブルのはずなのに、間違ってパイソンって書いてしまいました。蛇じゃん…。
ブルに修正しました。
―――ルドルフ―――
俺の名前はルドルフ。ルドルフ・アッシュバーン。
ルミナリアで活動しているBランク冒険者だ。
最近ずっとクエストで街を空けていたんだが……今ようやく、帰って来れた。
「うーん!やっと帰って来れたなー」
「ああ。ここら一帯の魔物の生態調査は、さすがに骨が折れた。お主もそう思うだろ?ルドルフ」
俺の後ろで、一緒にクエストを受けた二人のBランク冒険者がそんな話をする。
二人は俺の同期で、昔から何かと縁のある奴らだ。
左の水色の髪の軽装の奴はここルミナリア出身のランディ、右の赤髪の和服を着た奴が東方出身のユウガという。
俺はユウガの声に同意するように頷いた。
「そうだな。ここ最近は街に近くにCランクの魔物が出没することが多くなった。さすがにそれらに囲まれた時は、ヒヤッとしたな」
「よく言うよ。お前が一番多くの魔物を倒した癖に」
「全くだ。おかげで拙者たちの獲物まで横取りされた気分だ」
「悪かったって。今夜は俺の奢りだ。存分に飲んでくれ」
「お!太っ腹だな。では、遠慮なく頂くとしよう」
「賛成ー!俺、猫の冠がいい!」
「もっと高い店でもいいんだぞ?」
「アソコが一番ボリューミーで食いごたえがあるじゃねぇか。それに高い店だからって美味いとは限らないだろ」
二人のご機嫌取りをしつつギルドへ向かう。
その道中で、ランディが「そういえば」と話題を変えた。
「今ルミナリアに、あの『無敵のエレナ』が来てるって話を聞いたけど、本当か?」
「ああ、それは拙者も聞いた。街中でも冒険者たちがそのことで話しているのをチラホラと聞くし、きっと本当なのであろう」
「マジでか!?確かエルフの中でも飛び抜けて美人で、Aランクの中でもトップクラスに強いらしいじゃん!かー、会ってみてぇ」
「ははは。ランディ、失礼のないようにな」
「当たり前よ!俺をなんだと思ってやがる」
「美人に弱い童貞」
「右に同じく」
「おい!?」
「「はははははははっ!」」
そんな男同士の馬鹿な会話をしながら歩き、ギルドに到着する。
しかし、何やら中が騒がしい。何かあったのか?
「なんだ?また高ランクの魔物でも出たのか?」
「さぁな。とにかく入って話を聞いてみるか」
喧騒からしてただ事ではないと思い、急いで中に入る。
するとすぐに、騒ぎの中心がクエストの掲示板前にいる三人であることわかった。
「うーん。どのクエストもパッとしないねぇー、カガリくん」
「そうですね。Cランク昇格試験が、『Cランク以上のクエストを五つ達成』なのはたぶん楽で良いですけど、食えそうな魔物が少ない」
「完全に鳴ちゃん基準だね…」
「既にダンジョンで食べた魔物ばかりですしね。……ん?パパ、エレナさん。このブラックブルとかどうでしょう?生息地は三日も歩いた先ですが、高級肉として人気が高いそうですっ」
「目が肉になってんぞ…。まぁ鳴がそれを食いたいってんなら、それにするか」
あれは……カガリくんとメイちゃんか。
あの二人は俺が連れて来た、遠い山奥出身の期待の新人冒険者であり、少しばかり怪しい人物でもある。
明らかに何か隠し事をしている雰囲気だったのでな。魔族の手先か何かかと思って、監視の為に冒険者になってもらった。ちょうど高ランクの魔物がよく出没するようになったタイミングで出会ったのでな。
結局ここのところはクエストのせいで監視など碌に出来ずじまいだったが……あの様子だと、真面目に冒険者をやっているようだ。
単純に身の上のことを話したくなかっただけで、俺の完全な杞憂だったのかもしれないな。
しかももうCランクの昇格試験まで受けれるようになったのか。
まぁオークキングを倒したという話は聞いていたから、順当な出世とも言うべきか。
まだ完全に信用した訳ではないが、自分が推薦した者がこうも活躍すると、嬉しいものだ。
しかもそこに、さっき話題に上がっていたエレナがいるともなれば、この喧騒も納得だ。
「な、なぁ。あれってエレナじゃねぇか?」
「そうであろうな。手が隠れるほど長い袖のパーカーを着たエルフ……そんな変わった格好をした冒険者は彼女くらいであろう。話に聞いていたが、本当にあれがエレナ殿の装備なのだな」
「装備って言うのか?あれ…」
「ん?あ!ルドルフ。良かった、帰って来てくれたか…」
思わず掲示板の前で話をしている三人を見ていると、一人の冒険者が声を掛けて来た。
彼は俺たちよりランクは下だが同期だ。だからこのように気さくに話し掛けてくる。
「どうした?そんなに慌てて」
「どうしたもこうしたもねぇよ。Sランクの魔物が空から降って来たみたいなことが起こってて、皆頭がこんがらがってんだ」
「なんだそれは?その様子だと、本当にSランクの魔物が現れた訳ではなさそうだが」
「あれだよ、あれ。エレナさんの首をよく見てみろよ!」
「「「首?」」」
そう言われてエレナの首を見てみる。
パーカーで半分以上隠れててわからなかったが、彼女の首にはとある首輪が着いていた。
それがチョーカーなどと言ったオシャレアイテムであれば、別に慌てるようなことではない。
だが、あれはそんな良いものではない。
「お、おい二人とも…。俺の見間違いかな?俺には、あのエレナの首に着いてるのが、その……」
「いやランディ。拙者も同じである。あの首輪は―――“奴隷の首輪”だ」
「どうなってやがるんだ、おい…」
俺たちがいない間に、何があった…?
ここまでが2章です。
次回は幕間的なもので、ずっと放置してた篝のクラスメイトをやって、その後に3章です。
3章からは楽しい冒険者生活をもっと書いて行きます。
とにかくクエストをこなして行きます。
あと放置していた複合属性魔法とかも……覚えてたら書きます!




