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エレナVSダクネス

賛否両論回。恐らく否が多め…。

―――エレナ―――


―――ゴロビッシャーーーッ!!!


「うわぁ!?なんだ今の?雷か!」

「こんないい天気なのに?嫌だ、怖いわね…」


ルミナリアの街中をブラついていると、突如雷の音が鳴り響いた。

音の方角からして、恐らく南東の森……カガリくんたちがいる所からだ。


「決着、かな?」


なんとなくそんな予感がして、ボクは南門へ向かうことにした。

きっと三人とも傷だらけだ。彼らのポーションでは治らない傷もあることだろう。

ボクのとっておきのポーションが必要かもしれない。


そう思って南門へ足を運ぶと、ちょうど門の向こう側から光速で向かって来る物体が見えた。


「あれはメイちゃんと……カガリくん!?」


目を凝らしてよく見てみると、メイちゃんが腹部に風穴が空いてるカガリくんを担いでいるのが確認出来た。

あれは完全に致命傷だ。下手したら死んでいるかもしれない。

でも彼に手には、勇者のハンマーが握られているし、きっとまだ生きている可能性は高い。

恐るべき生命力だ…。


シルバーがいないのが気になるけど、今はまずカガリくんだ。


「門番さん!医者を呼んで。怪我人が運ばれて来る!早く!?」

「エ、エレナ殿!?はい!急いで手配致します!」


メイちゃんとカガリくんの姿がまだ確認出来てない門番さんに指示を出して、マジックバッグから例のとっておきポーションを取り出す。


「メイちゃーーーんッ!こっち、こっちに来てー!これをカガリくんにかけるから!?」

「あれは……エレナさん?」


いくらか悩む様子を見せるメイちゃんだったけど、すぐにそんな余裕はないと判断したのか、ボクの前で止まってくれた。

うっ…。すっごい睨まれてる……って、そりゃそうか。

彼女の中では、ボクはまだダクネスの仲間なんだろうし。


「カガリくんは!?まだ息はあるんだよね?」

「……一応…。ですが、このままではマスターは……」


ならまだ間に合うはずだ。死んでさえいなければ、ボクのポーションで治すことが出来る。

白金貨一枚もするけど、人一人の命に比べれば安いものだ。


……だけど、失った血まで治すことは出来ない。その後は彼の生命力に賭けるしかない。


「カガリくん……死なないでね」


そう願いを込めて、風穴が空いてる腹部にポーションを振りかける。

このポーションは万能薬。死んでさえいなければ、どんな傷も病気も治すことが出来る優れ物だ。

ただ生産量は少ない上に高価だから、ボクでも一本しか持っていないのだ。


万能薬をかけたそばから、見る見るうちに空いた穴が塞がっていく。

心做しか、カガリくんの表情が和らいだ気がする。

でもまだ安心は出来ない。明らかに血を流し過ぎているし、目が覚めるかどうかも怪しい。


「エ、エレナさん……それは…」

「万能薬だよ。とんでもなくお高いポーション。見ての通り傷は一瞬で完治出来たけど……血までは元に戻せない」

「……マスター…」


瞳に涙を浮かべて、カガリくんに寄り添うメイちゃん。

ボクはなんて声を掛けてあげればいいのかわからず、そっとその場を離れることにした。


「どこへ行くのですか?」

「そう怖い顔しないでよ。ちょっとダクネスの様子を見に行くだけ」

「!? まさか……あの者にも万能薬を…!」

「さっきの一本だけだから無理だよ。持ってたとしてもあげないけど」

「……………」


すっごい睨んで来る…。まぁいくらカガリくんに万能薬を使ったからって、気を許す訳にはいかないよね。

だけどボクもこのままなのは嫌だ。せめてボクに害は無いという証明はしたいところだ。


「大丈夫。キミたちにこれ以上の危険は及ぼさない。それだけは信じて欲しい」

「……………わかり、ました…」


歯噛みした様子で頷いてくれるメイちゃん。

ボクは一言お礼を言って、ダクネスの生死を確認しに行った。


――――――――――――――――――――――――


南東の森の中を進んで行くと、明らかな激戦の痕がある場所に辿り着く。

クレーター、切り倒された木々。ひび割れ、黒焦げになっている大地。

ダクネスはクレーターの中心で倒れていた。彼も真っ黒焦げである。


「……死んでる?」

「……………」


返事がない。ただの屍のようだ。呼吸の音も聞こえないし。

まぁルミナリアまで聞こえて来るような雷だ。相当な威力だったのだろう。

でもどうやってダクネスの闇の衣を剥がしたんだろう?思えば時間的に一時間経ったか経ってないかの戦闘のはずだ。

それくらいだったらダクネスの体力が尽きるには些か早過ぎる。


カガリくんがやったのかな?彼の戦闘センスはピカイチだ。

ボクでも思い付かないような発想を用いたに違いない。


「さて。ダクネスは死んじゃったし、死体は冒険者協会に運ぶかな」


それで魔族を警戒したルミナリアの防衛が厚くなってくれれば幸いだ。

そうなればカガリくんたちの身に降り掛かる危険を減らせるだろう。


「ごめんね、ダクネス」


死体を抱き上げて運ぼうとした―――その時だった。

突如ダクネスの腕が動き出し、黒いオーラの爪でボクの腕を引き裂いた。


「いった!?」


急いで後ろに後退して、上級ポーションを飲み干して傷を治した。


「くそが…。万全の状態だったら、今ので仕留められてたのによぉ…」


身体を震わせながらも、ゆっくりと立ち上がるダクネス。

……死んだフリをしていたのか…。わざわざ息を止めてまで。


「酷いなー、ダクネス。この服お気に入りなんだけど?」

「うるせー!テメェのせいで散々な目に遭ったんだ!俺があんな……あんな、雑魚共に…」

「あの三人は雑魚じゃないよ。ボクが認めた相手なんだから」

「ああそうかい!てことはテメェ……やっぱり裏切ったんだな…」


闇の衣を前回にして、全身鎧と爪を作り出す。

……あー。これはもう、何を言っても聞き入れるつもりはなさそう。


「答えろエレナ…。なぜ裏切った!?なぜアイツらの……人間共の味方をした!答えろー!?」

「ごめんね…。そんなつもりじゃなかったの。ただボクが彼らを、カガリくんを殺したくなかったの。私情を挟んでこんなことをしちゃって、本当に申し訳ないって思ってる。でも魔王軍を裏切った訳じゃない。これからも人間たちの情報は集めるし、必要とあらば殺すよ」

「だったら今すぐにでもアイツらを殺して来いや!?」

「それは嫌だ!」

「我儘言ってんじゃねぇよ!……テメェやっぱり寝返ったんだろ?なぁ…。あのハンマー使いに絆されて、終いには惚れちまったんだろ!?お前惚れた相手は殺せなさそうだしな!」


ダクネスの指摘に、ボクは言葉を詰まらせる。

惚れた?ボクがカガリくんに?それはないはずだ。

なんかそんな疑惑はあったけど、数週間一緒にいただけで好きになる訳ない。


ただ彼はボクのギザギザ歯を見ても引かないし、むしろ可愛いって言ってくれて、ボクのドジやおふざけにも面倒そうにしつつも本気で嫌そうな顔はしない。

そんな人を殺すなんてこと、ボクはしたくないだけ……惚れたとかじゃない。


「……………」


だけどそんなことを言ったところで同じだ。絆されて、情が湧いてしまって、そして……結果。ダクネスを裏切った。

ほとんどダクネスの言う通りだ。


「沈黙は肯定を意味する…。死ねや……エレナーッ!」


怒り狂ったダクネスが斬撃を飛ばして来る。

それを横へ飛んで躱すと、斬撃の後ろに隠れて迫って来ていたダクネスが、爪を振り下ろして来た。


「死ねーーーッ!!!」

「……ごめん。ダクネス」


ボクは爪を蹴り壊して、そこから回転蹴りで蹴っ飛ばす。

壊れた爪と鎧を修復することもなく、ダクネスは向かって来ようとするが、その前に距離を詰めて空へ向かって打ち上げた。


「ガハッ…!?」

「ボクの我儘に、付き合わせて……本当にごめん。あの世でいくらでも、罰は受けるから」


打ち上げたダクネスを追って、謝罪する。

今までどれだけの貢献を魔王軍にして来たことか。それなのに突然のこの裏切り。許されるはずがない。

だから謝ったってどうしようもないのはわかってる。


―――それでも……ボクはこの我儘を、貫くと決めた。


「大切な人は―――全員守りたいんだ」

「エレ、ナ〜…!」

「メテオ、シュートッ!」


―――ドゴーーーンッ!!!


ボクの全力の蹴りを持って、ダクネスを地面に叩き付けた。


「ぐはぁ…!くそが…」

「……ねぇ。ダクネス……これ以上の裏切りはしないって誓うよ。だから、今回の件は目を瞑ってくれないかな。下級のポーションくらいはあげるからさ」

「……………」


何も出来なくなったダクネスは、ボクをただただ睨み付けて来る。

……やっぱり、ボクの我儘も許してはくれないよね。


「条件が……ある…」

「えっ?」

「それを呑めれば……今回の件は、黙っといてやる…」


しかしダクネスは、条件付きでなら、と言ってくれた。


「勘違い、すんなよ…。テメェを許す訳じゃねぇ。俺からの要求を、呑んだ上で、完遂出来たらの……話、だ。それまで、魔王軍の敷居は……跨がせねぇ…!」

「ダクネス……うん。わかった。どの道、ボクに選択権なんかないしね」


さっき言った通り、ボクは大切な人は全員守りたいんだ。

ダクネスは別に大切でもなんでもないんだけど……何度も一緒に戦って来た仲間だったことに変わりはない。

殺さずに済むなら、それでいい。


「それで、その条件って?」


ダクネスにポーションを振りかけながら聞く。

するとさっきよりもハッキリとした口調で、とてつもない無理難題を吹っ掛けてきた。


「アイツらを……もう一度スカウトしろ。方法はなんでもいい。いつまで掛かっても構わない。上には、勇者の中でも特に要注意の人物を監視させていると伝えておく」

「えっ?いやでも、彼は戦争に参加する気は……」

「そこをなんとかしろっつってんだ…。だから期限を設けないでやってんだろ。不器用なテメェに、一人の男を落とすのが難しいことは目に見えてんだからよ」

「ん〜?どういうことー?」


ダクネスの言うことがイマイチ理解出来ず、ボクはただ首を傾げることしか出来なかった。

面白かったらブクマ登録といいねと高評価をお願いします。

今日はもう一個投稿します。

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