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VSダクネス4

「俺を殺す?はっ!随分大きく出たじゃねぇか。そのハンマーの前の持ち主も同じこと言って、結局俺を見逃すような甘ちゃんだったんだぜ?そんなアイツの関係者に殺す勇気があるとは思えねぇなー。……ま。威勢張ってられるだけでも偉いとは思うけどよ」

「本当にただの威勢だと思うか?」


俺の決意を嘲笑うダクネスに、睨むようにして言う。

本音を言うと、人を殺すという行為には少しばかり抵抗を感じている。

コイツにもきっと、故郷に家族がいるんだろうなって。そんな気持ちがチラついてくる。


だけど俺にも大事な家族がいる。

その家族が目の前で傷付き、さらには殺されかけたんだ。


「俺は威勢だけで終わる気はないぞ?」

「……へぇ。じゃあ…」


バカにするような表情から、真剣な顔付きへ。

グッと足に力を入れて、ダクネスが一足飛びで突っ込んで来た。


「やれるもんならやってみろよッ!」


「鳴、頼むぞ!」

「はい!マスターもお気を付けて」


ダクネスの爪による突きをジャンプして躱し、ハンマーを振り下ろす。

それをダクネスは空いてる手で受け止め、もう一度爪を突き攻撃をして来る。


俺はその爪の間に足を突っ込む形で受け止めて一瞬だけ足場にする。


「フリックアッパー!」


ハンマーを引き戻し、素早くハンマーでアッパーカットを繰り出す技で、ダクネスの顎を打ち抜く。

続けてハンマースタンプで顔面を潰しに掛かる。


「どうだ!」

「どうだもなにも、効かねぇっ言ってんだろうが!」


力で押し返され、ダクネスが俺の腹に蹴りを入れてくる。


「ぐふっ!?」

「オラオラどしたー!?俺を殺すんじゃなかったのか!」

「うるせぇ!パワースイング!」


しかし負けじとハンマーをフルスイングし、ダクネスの頭を打ち抜く。


「もういっちょッ!」


返す手でもう一度パワースイングを繰り出す。

少しふらつくような様子を見せるが……


「いいねぇ、その悪足掻き。よろめかせるだけでも及第点だ、ぜ!」


すぐに持ち直して爪を振り下ろして来た。

それを柄で受け止めるが、向こうの方が力がある為、徐々に押し込まれて爪が俺の肩に食い込んで来た。


「ぐぅっ!?痛熱い!」

「なんだぁ。もう終わりか?」


刃物とかで刺されると、痛いより熱いって感覚が強いっていうのは本当だったのか。

なんか焼かれてる気分だ!


「マスター!?今助けに……」

「大丈夫だ!」


我慢出来ずに助けに来ようとする鳴を止める。

まだだ……まだ電気は溜め込んでてくれ…!


「信じて待っててくれ。あとでいくらでも、説教は受けるから…」

「マスター…」


鳴に笑顔を向けて、ダクネスに蹴りを入れて離れる。


「フリックアッパー!」

「おぉっ?」


もう一度距離を詰めて、全力のフリックアッパーでダクネスを浮かせる。

そこから回転を加えたハンマースイングで頭を打ち抜き、ぶっ飛ばす。


「はははッ!やっぱいいなぁ〜お前!楽しくなって来た!?」


それでダクネスが地面に倒れることはなく、体勢を整えて着地して斬撃を飛ばして来る。

しかし……それは俺がいる直線上から外れており、半身で躱すことが出来た。


「あ?」

「……効果、覿面…!」


狙っていたものがダクネスの身体に現れ、思わず頬が吊り上がる。

ここからだ…。ここから奴に休む時間は一切与えるな!


「全力全開…!ハンマースタンプッ!」


ハンマースタンプを発動し、地面を思い切りぶっ叩く。

すると辺りは揺れ始め、軽い地震が起き始めた。


「ととっ!なんだ?一体何して……ッ!?」

「フリックアッパー!」


揺れでバランスを崩し掛けたダクネスの顎にアッパーを食らわす。その勢いを殺さずにパワースイングで今度は横から頭を殴打する。

するとさっきよりも大きくよろめき、戸惑った様子を見せ始める。


「な、なんだ?身体が、おかしい…」

「このまま一気に…!」

「ちっ!調子に乗んなー!?」


―――ドシュッ!


「ッ!?」

「悪いな。もうちっとだけ楽しみたかったが、嫌な予感がしたんでね。……チェックメイトだ」


ハンマースタンプで叩き潰そうとするが、その隙を突かれてカウンターで爪を腹部を貫かれてしまった。


「ごふっ…」

「マスターーーー!?」

「だい、じょ……ぶ…。死には、しな゛いッ!」


鳴の泣き叫ぶような声を聞いて、ハンマーを強く握り締める。


腹を貫かれたからどうした!それですぐ死ぬほど人間はヤワじゃない!

元より大怪我もしないで勝てるような相手だなんて思っちゃいないんだよ。

歯を食いしばれ、根性見せろ、鳴に俺の死体なんて見せるな!これ以上辛い思いをさせるな、情けない姿を晒すな!

ただでさえ心配させまくってんだからさ……鳴の主として、親として、我が子の泣け無しの信頼を裏切るな!篝ッ!


「ジュリ、ざん…。力を……貸してぐれ!」


俺の言葉で、ハンマーが光り輝く。

すると―――不思議と身体に力が入り、貫かれた腹のことなんてお構い無しに限界までハンマーを振り被ることが出来た。


「は?おいおい、致命傷だぞ?どこにそんな力が……」

「死ぬのは俺じゃない…。お前だッ!」

「ッ!?これは、まず……」


殺気を込めて言い放ち、ハンマーを振り下ろす。


―――ズガーーーーーンッ!!!


ダクネスの脳天に向かって、パワー全振りのハンマースタンプが炸裂。

それに押し潰されるようにして、地面に小さなクレーターが出来始める。

それだけの攻撃を与えたのに、闇の衣の兜を壊すことは叶わず、少々凹ませる程度しか出来ない。本当にとんでもない硬さだ。


しかし―――


「うぐぅーッ…!?なんだ?視界が、ボヤけて……気持ち悪ぃ…」


ダクネスの身体は闇の衣で守られていて、どんな攻撃も忽ち防いでしまう、防具として理想的な性能を発揮するスキルだ。オマケに強力な武器にもなるのだから、タチが悪い。

だがそんな理想の防具にも、弱点は存在していた。


それが……“脳震盪(のうしんとう)”だ。


どれだけ硬い防具で身体を覆っても、衝撃を全て防ぎ切れる訳では無い。

だから頭をとにかく思いっ切りぶっ叩いて、脳を揺らしてやった。

元々頑丈な身体だからか、最初は小さな変化しかなかったが……一度ここまで追い込めば、立っているのも辛いはずだ。


そうなれば闇の衣(スキル)の維持もしにくくなんだろ。それだって、脳が身体に命令して行っていることなんだからさ!


「これはマズい…!」


俺の腹から爪を抜こうとするダクネスの腕を引っ掴む。

脳震盪の影響で力もまともに入れられないから、逃げることなんて叶わない。


「ぜぇ……はぁ…。どうした?戦うの好きなんだろ?ピンチの時ほど楽しめよ…!」

「ピンチ、だと……俺が…?テメェ一体なにし、うぷっ!?なんだよ、この吐き気は…!?」

「ほら。それだと闇の衣を維持すんのも辛いだろ?だったら……」

「ッ!? や、やめ、ろ…!」


俺は片手でハンマーを振り被り、そして……


「さっさと解除しやがれーーー!!!」


ハンマースイングの連打で、頭部を往復ビンタしてやった。


―――ズガガガガガガガガガッ!


ハンマーを振るごとに、俺の口と鼻から血が吹き出している気がするが、そんなことはお構い無しに振り続ける。


「あ、が、ぎぎ!?や、やめろ!頭が、頭が割れそうだッ!?なんなんだっ?一体!?こんなの、効いてねぇはずなのに、頭が……頭がーーー!?」


まともに頭を働かせることが出来ず、上手く言葉を発することが出来ないダクネス。

やがて……ダクネスから闇の衣の鎧と爪が消え去った。


そうなると当然、爪で塞がれていた腹の風穴がポッカリ空く訳で……


―――ブッシャーーー…!


「あ……これ……………ポーションで、治る……か…?」

「5万V・天雷ッ!」


一気に視界がボヤけて行くと同時に、激しい音と共に大きな閃光がダクネスに降り注いだのは確認出来た。


―――鳴……ありがとう。信じてくれて…。


降り注ぐ閃光が遠ざかって行く。恐らく今は、鳴に運ばれてるんだろう。

それだけはわかった。


「―――ター!しっかり…………ないでッ!―――バカ!バカ!………死なない……ったじゃ………」


なんでだろうな。目の前すげぇボヤけてるし、鳴が何を言ってるのかわかんないのに……なんとなく罵倒されてるのはわかる。

娘の罵倒は効くねぇ…。マジオーバーキルっすよ鳴さん。


あー。やべぇ、もう意識が……むしろよく持ってるよな。とっくに気を失っててもおかしくないのに…。

俺って……随分、丈夫だったんだな……。


……………………………。


『しっかり私を握ってろよ?少年』


いよいよ意識が無くなり掛けたその時。

若い女性の声が、頭の中に響いた。

戦闘はこれからもこのように3〜5話くらいで終わらそうと思ってます。


面白かったらブクマ登録といいねと高評価をお願いします。

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