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カガリとエレナ1

エレナ視点。

ルミナリアに戻って、カガリくんたちが泊まってる猫の冠に向かう。

これからそこの食堂で、改めて彼らと話をする為に。


「……なんか裏が騒がしいなぁ?」


猫の冠前まで来ると、裏の方から人の声がした。

たぶん猫の冠に泊まってる冒険者とだと思うんだけど。


「まぁ気にしなくてか。今はそれよりも、カガリくんたちと話さなきゃ」


中に入って、まっすぐ食堂へ向かう。

夕飯までまだ時間が時間がある為、お客さんは少なかった。

その中に窓際の丸テーブルで食事を摂っている例の二人を見つけて、そこへ近付いて行く。


「おかわりしてもいいですか?」

「いいよ。今回のクエストで金貨200枚も手に入ったしな。満足するまで食いな」

「ありがとうございます」


……相変わらず、食事を必要としないはずの精霊がもの凄い量を食べてる…。お皿のタワーがいくつもあるんですけど。

一体どこにそんな量が入っているにだろうか。


お皿のタワーを難なく運ぶウェイトレスさんを横目に、ボクは二人に声を掛けた。


「やっほー。おまたせぇ」

「あ。エレナさん…」


カガリくんが気まずそうな顔でこちらを見て来る。

そんな彼に対して人差し指を立てつつ、二人の間にある椅子に座った。


「うわっ。なんか裏が騒がしいと思ったらシルバーか…」

「はい。とんでもない召喚獣が現れたって、かなり噂になってるみたいで」


窓から外を見てみると、シルバーが冒険者たちから遠巻きに注目されていた。


森で一夜を明けてからルミナリアに帰って来たボクたち。

しかしクエストの最大戦果の一つと言っていいシルバーの存在は、それはもう大騒ぎになった。

高ランクの魔物っぽい雰囲気というか、オーラみたいなのを感じるし、そうなっても仕方がないとも言える。


冒険者ギルドでも伝説の魔物だ、麒麟だのなんだのと結構な騒ぎになった。

ダンジョンで手に入れた雷帝の下僕で召喚したことを説明し、やや落ち着いてから従魔登録(召喚獣登録)をしたのが昼前。これをしないと、シルバーの身分が保証されないからね。


「それじゃあ早速本題だけどさ。カガリくん。昨晩の話は考えてくれたかな?」


人差し指を立てながら、昨晩の話の答えを求める。


その内容はルミナリア侵攻計画と、魔王軍へのスカウト。

魔王軍に入って、そのままルミナリアを落としちゃおうというものだ。彼らほどの逸材が手に入れば、くだらない戦争をより早く終わらせることが出来るだろう。


……だけどこれについては、ぶっちゃけ諦めている。だって彼の口から既に、戦争に参加したくないって聞いちゃってるんだし。


「……申し訳ございません。お断りさせていただきます」

「ま、そうだよねぇ…」


わかっていた。わかりきっていたことだ。

彼の夢を聞かせてもらったけど、彼は幸せな家庭を築きたいそうなのだ。

いつ死ぬともわからない戦争に参加しては、当然その夢が叶うかなんてわからない。


だから戦争に巻き込まれるようなことがあった場合、メイちゃんとシルバーと一緒に遠くへ逃げるつもりだそうだ。

しかし……ルミナリア侵攻計画を実行するなら、街の冒険者と一緒になって戦うとも言っていた。お世話になった人たちを見捨てることは出来ないからと。


実際そんなことになったら、ボクと戦うことになるのはわかりきってるのにね…。


「……そっか。君がそのつもりなら、止めはしないよ。じゃあ明日、この紙に書いてあるところまで来て」


折り畳んだ一枚の紙を渡す。

そして彼の耳元まで近付いて、囁くようにして言う。


「“そこが君たちの……墓場だから。”準備しときなよ、色々と」


それだけ言って席を立ち、猫の冠を出る。


近くの路地裏に入り、空に浮かんでいる目玉(・・)を睨み付けて、完全に視線が無くなったのを確認したあと―――ボクは堪えていた笑いを吹き出した。

その笑いは我がことながら、かなり酷く歪んでいた気がした。

2章が終われば楽しい話をいっぱい書く予定です。

なのでもうしばらくこの嫌な空気にお付き合いください。


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