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先輩3

俺たちは一度、男性が用意してくれた席に着いた。

執事服の男性も、もう一脚椅子を用意してお茶を飲んでいる。


本人曰く、俺の質問に対していたく驚いたから、一度落ち着きたいとのこと。その間にこちらの自己紹介は済ませた。

俺には目を見開いたこと以外に、驚いた様子はなかったように見えたけど。


「ふぅ…。お見苦しいところをお見せして、申し訳ございませんでした。まさか同郷の方だったとは…」

「顔が完全に日本人なのと、急に王様から魔王と戦えって話は最近じゃ王道っぽい感じになってますし」

「あ、あれからそんなに召喚に巻き込まれてる人たちがいるのですか?」

「今じゃ日本だとそういう創作物が多いってだけですよ。それを作ったのは、実際に召喚された人なのかもしれませんけど」


「……えっと。置いてけぼりをくらって話がよくわからないんだけど……カガリくんとこの人は故郷が同じってことはわかるけど」

「あ。すみません…」


鳴には日本のことをいくらか説明してるけど、この中だとエレナさんは完全に仲間外れだ。ちゃんと説明はしないと。

て言っても、俺とこの人が異世界から来たなんて話をしても信じられないだろう。

それにその話をするにはやめた方がいい。なので適当に誤魔化すとする。


「ここからすっげぇ遠い、世間に知られていない小さな国があるんですよ。俺とこの人はそこの出なんです」

「へぇ〜。そうなんだ。……なんか嘘っぽい」

「い、今はそういうことにしといて欲しいです…」


俺が異世界から召喚された人間だってことが世間にバレたら、召喚した国に追われるかもしれないんだ。

エレナさんなら大丈夫だろうけど、念には念を。


「ところでカガリさん。貴方のハンマーですが……」


俺の気持ちを汲んでか、男性が話を変えてくれる。


「これがどうかしたんですか?」

「はい。随分と懐かしい物を持っているなと思いまして」

「懐かしい?これが何か知っているんですか」

「ええ。うろ覚えですが。それに、私も同じ物を持っていますので」


そう言って男性は、懐から一本の短剣を取り出した。

あれが同じ物?どういうことだ…。


こちらが疑問に思っていると、男性は短剣を差し出してきた。


「こちらを持っていただけますか?」

「え?はぁ…」


男性から短剣を受け取るが……全く重みを感じず、羽のように軽いということしかわからない。

鞘から抜いてみても、銀色に輝いてて綺麗なこと以外わからない。


「では次に、エレナさんがお持ちになってください」

「へ?ボク?」


鞘に戻して、エレナさんに短剣を渡す。

すると……


「うわっ!?」


―――ドシーン!


短剣に引っ張られるようにして、椅子から転げ落ちた。

何やってんの?


「いくらドジだからって、それはさすがに…」

「違うって!?これ短剣とは思えないほど重いんだって!ふんぬぬぬーッ!」


袖から手を出して、両手で持ち上げようとするエレナさん。

しかし短剣は持ち上がらず、地面に転がったまま……どういうこと?


俺はもう一度短剣を持ち上げてみる。やはり重さなんて微塵も感じない。


「エレナさん。はい」

「ん」


エレナさんに短剣の柄を握らせて、しばらく二人で短剣を持ってみる。


「離しますね?」

「どうぞ」


そして俺が話すと、またエレナさんが短剣に引っ張られるようにして地面に倒れた。


「ド〇フかよ」

「なんで〜…。いくらボクでも短剣くらいなら持てるはずなのにぃ…」


いやアンタの馬鹿力なら大剣だって持てるだろ…。


「申し訳ございません。こうした方がわかりやすいかと思いまして。お怪我はありませんか?」

「うん。大丈夫〜。ボクってば頑丈だから」


男性が短剣を拾い上げて、懐にしまう。

再び席に着いて、話を再開した。


「こちらは勇者にしか持てない短剣でして。勇者以外の方は持つことすら出来ません」

「勇者にしか持てない?」

「おや?もしかしてご存知ないのですか。私はてっきり、カガリさんも国から勇者の武器である、そのハンマーを頂いたのかと」


……なんだって?


「初耳なんですけど…。それに俺、国に呼ばれたことないですし」

「では、どこでそのハンマーを?」

「とあるオークキングの住処にあったんですよ。そこで……」


オークキング戦のことを簡単に説明する。

オークキングとその娘を見逃した話は抜きにして。


「なるほど。ということは恐らく、オークキングに捕まった先代勇者の遺品でしょうね」


確かに捕まったな。たぶんハートを射止められて。

さすがにオークキング相手にシュリさんの方から好きになった訳じゃ……ないよな?

いや、この偏見は良くないな。うん…。


「そういえば、シュリさんって人を知りませんか?その、勇者に詳しい知人からそんな人がいたって聞きまして。その人がこのハンマーの持ち主だったそうで」

「シュリさん……すみません。同級生にそのような方がいた気もしますが、もう覚えてなくて…」

「いえ!いいんです。また嫌なことを聞いてすみません…」

「お気になさらず。この五十年で感情も薄くなって、怒りや悲しみも湧かなくなりましたので」


なんて闇が深く感じるお言葉…。笑顔で言ってる分、より深さを感じる。


「ふむふむ…。なるほどねぇ〜」


隣のエレナさんが、何やら意味深な笑みを浮かべている。

また置いてけぼりにしてる気がしたのだが、話に着いて来れてるんだろうか?


「それよりも、申し訳ございません。せっかくの同郷の人に、大した情報も教えられず。戦争のことも教えしたいですが、五十年前と今とでは、だいぶ違うでしょうしね…」

「大丈夫ですよ。戦争には興味ないんで」


赤い紙が発行されたり空襲とかされない限り、今の俺たちには関係ないことでもあるしな。

もし戦場へ行けって言われたら鳴とシルバーと一緒に山奥へ逃げるぞ。全力で。


「では、嫌なお話はこれくらいにしまして、少し楽しいお話をしましょう」

「楽しい話?」

「正確には嬉しいお話、でしょうか」


男性が手を叩いて、話を変える。

次に彼の口から出た言葉は俺たちは……特にエレナさんが、かなり驚愕することになった。


「勇者の武器にはスキルが込められている、というお話です。これについてカガリさんは、もしかしたらお心当たりがあるのでは?」

あと2、3話でダンジョンから出たい。


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