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ゴーレムの素材

―――パリンッ!


エレナさんのかかと落としが炸裂し、何かが割れた音がした。

同時に、閉じられた入口も開いた。

これは……


「よっしゃー!やっと壊せたーッ!」


ゴーレムを倒した証拠だった。

念の為しばらく警戒したが……動く気配がない。

完全に沈黙している。


「……つ、疲れた…」


ドサッと地面に背中から倒れる。

鳴をマネて雷を身体に纏ってみたが、負荷が凄い…。全身の筋肉の質を無理矢理向上させて、パワーとスピードを跳ね上げてる感じだ。

全身が痺れて、しばらくマトモに動けそうにない…。鳴はいつもこんなことやってたのか。


でも一切負担を感じさせたことないし、きっと精霊の鳴だから出来ることなんだろうな。精霊ってすげぇ…。


「カガリくん!大丈夫!?」


エレナさんが心配して、急いで駆け寄って来る。

どこか怒りも滲ませて。


……汗は浮かべてるけど、疲れた様子がほとんど見えない。すげぇ…。


「全身ビリビリしてて辛いっす…」

「そりゃそうだよバカっ!むしろその程度で済んで良かったよ…。人の身であんなことしたら、下手すれば死んじゃうんだよ!雷に限らず、普通は魔法を使う時は魔力を外に放出させるようもので、身に纏ったりはしないの。二度とあんな無茶しないでよ!」

「う、うぃっす…」


鬼の形相で叱り付けて来る彼女に対して、俺は頷くことしか出来なかった。


「でも……」

「?」

「ありがと。頑張ってくれて。それに……助けてくれて。カガリくんがゴーレムの弱点に気付いて叩き落としたり、首を外してくれなかったら……ちょっと危なかった」


自分の頬を掻いて、情けないとでも言いたげな表情をする。

心配したり怒ったりお礼を言ったり、忙しい人だ。


「絶対回避の異名はしばらく返上かな〜。さっき被弾覚悟で突っ込もうとしちゃったし」

「エレナさんでも、焦る時はあるんですね?」

「ボクも人間だからね。ああもストレスを感じさせられる戦いを強いられたら、落ち着きを無くすさ」

「……それくらい、Aランクの魔物は厄介ってことですか」

「そういうこと。まぁ相性もあるし、特にあのゴーレムはボクとの相性が最悪だった。君からすれば、ボクの蹴りは超強力で頼り甲斐があるように見えると思うけど、ボクはあくまでもタンク。Aランクの魔物に有効打を与えるのは難しい。攻撃職のAランク冒険者には、どうしても力負けするのさ」


ダンジョンの硬い床や壁を余裕で壊せるエレナさんが、力負けするの…?

Aランク帯こわっ…。三郷の集いは俺と鳴はもうAランク並とか言ってたけど、全然そんなことないじゃん…。


「ん?そういえば……」

「どうしたの?カガリくん」

「……さっきエレナさんは、人の身で魔法を身に纏う行為は危険って言ってましたけど……鳴のことは疑問に思わないんですか?」

「……………あっ」


エレナさんが「やっちまった」みたいな顔をして、顔を明後日の方へ向かせた。

……まさかこの人…。


「もしかして、うちの子が人間じゃないって、気付いたんですか?」

「( ˙³˙)〜♪」

「口笛で誤魔化すな!?」


こっちだってたぶん墓穴は掘りまくってるんだから、下手に気を遣って誤魔化さないでくれ!

……つまりあれか?エレナさんはずっと俺たちの親子設定に合わせてくれていたってことか?


「いや〜…。実は一目見たときから、メイちゃんが精霊だっていうのには気付いてたんだよねぇ…。ボクたちエルフは精霊と隣人みたいなところもあるし、何よりボクくらいになれば、人と精霊の区別は余裕でつくし…」

「そんな……今まで騙してるみたいで申し訳ない気持ちでいっぱいだったのに、実は逆に騙されてたなんて…」

「別に騙してた訳じゃないんだけど…。……メイちゃんが精霊だって知られたら、見世物にしようとするバカが出て来るかもだし、親子設定は全然有りだと思うよ。なぜか二人の容姿は凄い似てるし、後ろめたい気持ちなんて気にせずに、どんどん騙しちゃいなよ!」

「……今晩はエレナさんのリクエスト料理にします」

「急になに!?」


エレナさんの優しさが身に染み、今回の戦いも凄いお世話になったので、エレナさんが食べたい物を作ることにした。


「あ。そうだ。まだしばらく動けそうにないんで、エレナさんの膝枕をご所望したいです」

「嫌だよ!冗談言わないで、はい。クッション貸してあげるから、これで我慢して!」

「ぶふっ」


柔らかいクッションが顔面に直撃。

仕方ない。これで我慢するか…(本気でご所望だった)


実は何度もエレナさんがお尻に敷いたりして使っているクッションだということに気付かず、贅沢な気持ちを抱きながらクッションを枕にして休んだ。


――――――――――――――――――――――――


しばらく休憩したら無事身体の痺れが取れて、動けるようになった。

俺が横になってる間にエレナさんがゴーレムの死体を回収してくれた。動かなくなった無機物(ゴーレム)に対して『死体』って言い方はなんかしっくり来ないけど。


「クッション。ありがとうございました」

「はいよ〜。どういたしまして」

「そういえば、ゴーレムは明らかになんかの宝石っぽい見た目でしたけど、あれってなんなんですか?凄く高そうですけど」


ゴーレムの身体は透明感のあるオレンジ色の身体をしていて、まるで宝石のようだった。

しかもある程度の知能も兼ね備えてるところを見ると、なんだかもの凄く高価な物で作られている気がしてならない。


良い作品は、良い素材からっていう偏見が多々あるけど、これにはエレナさんも同意してくれた。

しかし……


「ごめんね…。無知なAランク冒険者って思われるかもしれないけど、この宝石?鉱石?みたいなのも、見たことないんだ…。ダンジョンに入ってからずっとわからないことだらけで、本当にごめんね…」

「いやいや!別に謝るほどのことでは!?」


しゅんと落ち込んで、心做しかちっちゃくなった様子で言うエレナさん。

……でもそれって、逆に考えれば超貴重な石ってことにならないか?


だから俺はポジティブな考えを伝えた。


「Aランク冒険者でも知らない素材って、絶対凄い物ですって!期待が高まりません?ワクワクしません?これを材料に作った武具は、一体どれだけ良い物に仕上がるんだろうって」

「う〜…。カガリくんの前向きさと優しさが眩しいし、身に染みる〜…。およよぉ…」

「そんな大袈裟な…。ほら、鳴が俺たちを心配してるでしょうし、もう行きましょ。手繋ぎます?」

「お願〜い…」


瞳に涙を浮かべるエレナさんの手を引いて、鳴が待ってる最奥のフロアへ戻った。

無機物に死体っ言い方はしっくり来ない。by作者


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