鳴の閃き
左膝から下を失ったミスリルゴーレムが、地面に倒れる。
まだ電光石火の電力は残っています。
追撃を仕掛けるべく壁を蹴ろうとしましたが、そこでミスリルゴーレムの顔が180度回転してこちらを向いていたので、横へ飛びました。
瞬間。私がいた壁にレーザーが放たれました。
あと少し早く追撃に出ていたら、焼き殺されてましたね。
危ない危ない、です。
「ふむ。空中でも自由に方向転換する術を身に付けるべきですね」
魔法で無理矢理、方向を変えることは出来ますが、今やれば消費魔力量がバカになりません。
同じ魔法でも少ない魔力で、空中を駆けるようになりたいです。
足を失ってまともに動けなくなったミスリルゴーレムが、私とシルバーにレーザーを乱射して来ます。
それを避けつつ、二人で首に向かってライトニングブラストを撃ちますが、普通に腕で防がれてしまいます。
やはり腕も外す必要がありますか。
「もう一度、電光石火をしたいところですが…」
さすがにそれは甘えですね。レーザーの良い的になります。
近付いて攻撃しようにも、ミスリルゴーレムが倒れてる分、レーザーの着弾距離も短いでしょう。避けるのも一苦労しそうです。
というか今でもそのレーザーのせいで、近付くのも困難な状況です。
「でしたらやはり、すぐにでも首をもぎ取りたいですね」
狙うなら一撃でやりたいところですが、これまたかなり厳しいですね。
左膝の時とは違って、首にはダメージが蓄積していませんから。
「ではどうしますかね?」
引き続きレーザーを避けつつ、フロアを見渡しながら考えます。あの嫌な首を取る方法を。
レーザーでボロボロになるフロア。地面と壁が破壊されて、凸凹しています。
エレナさんみたいに躓かないよう、気を付けなくては。
そこまで考えたところで、壁の一部が小さく剥がれ落ちたのが目に入りました。
瞬間。とある情景が浮かび上がりました。
『とりゃあー!』
地面を蹴り壊す、エレナさんの姿が。
それで一つ作戦を思い付きました。
「1万V―――」
これは賭けに近いです。ミスをすればレーザーの餌食となるでしょう。
しかしそれでも、やらないより全然良いです。
それにもしこの作戦を思い付いたのがマスターだったら、迷わず実行するでしょう。
私を……家族を守る為に、と。
それが出来る実力は、まだマスターにはありませんが。
「電光石火!」
先程よりも速度は落ちますが、それでも十分です。
私は飛ぶ。天井へ、ミスリルゴーレムの真上へ向かって。
そんな私に向けてレーザーを放とうとしますが、それを隙と見たシルバーが光速で駆け抜けて、ミスリルゴーレムの頭に横から体当たりしました。
おかげで軌道が逸れて、余分に魔力を使って回避する必要が無くなりました。ナイスアシストです。
シルバーが作ってくれた時間を最大限活かすべく、天井へ向かいながら足に雷をチャージしていきます。
電光石火を使いながらでは難しいですが、そちらに使えなかった分、なるべくこちらに集めるつもりで。
やがて、天井の眼前まで迫りました。
そこからさらに足りない分を補うようにして、回転も加えて天井を蹴り放ちました。
「1万5000V・飛翔雷脚ッ!」
―――ドゴーンッ!……ビシビシビシビシ…!
硬い。罅が入るだけで、壊すことには至りません。マスターの力でまともに壊せないだけあります。
ですが、問題はありません。
悔しいですが、私には出来ないことはわかっていました。
むしろちゃんと罅を入れられたことに喜ぶべきでしょう。
喜びませんが。
「ヒヒイィィィィンッ!?」
ミスリルゴーレムから距離を取っていたシルバーから、悲惨めいた嘶きが聞こえました。
見るとミスリルゴーレムから、今度こそレーザーが私に向かって放たれようとしていました。
どうやら私に注意を呼び掛けていたようですね。
シルバーが慌てて邪魔に入ろうとしますが、腕に阻まれてるせいで間に合わなそうです。
しかしそれで良いのです。初めから、これが狙いでしたから。
もう一度1万Vの雷を纏って、レーザーが放たれるのを待ちます。
そして放たれると同時に電光石火で躱し、天井にレーザーを当てさせました。
するとレーザーで天井が爆発した後、瓦礫となって崩れて、ミスリルゴーレムに落ちて行きました。
―――ドドドドドドドドッ!!!
いくつもの瓦礫がミスリルゴーレムに直撃していきます。
あれだけ硬いんです。ダメージは相当でしょう。
それに少しの間ですが、まともにレーザーの照準も合わせられないでしょう。
「これで……ほぼチェックメイト、ですね」
全身に雷をチャージしていき、電光石火の準備をする。
一辺倒は芸がありませんが、一番の有効打がこれしかないので仕方ありません。
瓦礫の雨が止み、ミスリルゴーレムが顔を上げてレーザーを放とうとしてきます。
「残念ながら、もう遅いです」
2万Vの電光石火で駆け抜ける。レーザーを撃つよりも、こちらの方が僅かに早いです!
「1万V・飛翔雷脚ッ!」
ミスリルゴーレムの首に、回転も加えて全力で蹴り放ちます。
膝の時とは違い、かなり抵抗を感じましたが……無事に首を外すことに、成功しました。
「やり、ました…」
さて……後は残ってる四肢を外して、じっくりと装甲を剥がしていき、コアを破壊するだけです。
さすがに疲れて来ましたが、もうひと踏ん張りです。
次回はカガリ&エレナペアに移ります。
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