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鳴から見た篝

篝視点では上手く書けなかったので、鳴視点。

私のマスターである稲光篝は、率直に申し上げると変人である。

異世界から飛ばされて来た人間だというのもあるのだろうけど、それを抜きにしても……変人と言わざるを得ない人物です。


争いとは無縁の場所から来たと言うには、命を奪うのに戸惑いが無い。罪悪感を抱いている様子も無い。

温室育ちの者ならば、相手が魔物だろうと、多少なりとも戦うという行為に戸惑いを覚えるもの。

しかし彼はそんな様子を一切見せることなく、魔物を狩っている。

……一緒に戦うと言ったからには、それが最初から出来ていることは喜ばしいことではあるのでしょうが…。


それだけではなく、精霊である私を娘として扱い、立派な父親であろうとしています。

私自身、今ではそれが嬉しく感じてしまっているので文句は言えませんが、少し狂気的な気がします。

家族という物に憧れるあまり、頭のネジが取れてしまっているように思えます。


加えて、ここ最近その変人っぷりに拍車が掛かっています。


新しく発見されたダンジョンを一緒に攻略することになった、Aランク冒険者のエレナさん。

マスターが寝惚けて彼女を辱めてしまって反省したか思えば、いきなり気持ち良かったなどと発言する。

精神的に多大なダメージを負った影響で、エレナさんを抱き枕にし出すなど、奇行が目立つようになりました。

割と被害者であるエレナさんにも、自業自得な部分が無くもない気がしますが…。


「俺はその口―――大好きですッ!」


そして今度は謎の告白をするマスター。

マスターに隠れて私からは見えませんでしたが、マスターがエレナさんがいつも隠していた口内を見て、急に場の雰囲気が悪くなりました。

かと思いきや、マスターの急な告白。一体何を見たのかわかりませんが、いつもの奇行だろうと思って、後方で腕組み待機します。


「はぁーッ!?急に何を言っちゃってるの!?」


しばらくフリーズしていたエレナさんが、口元を隠さずに叫ぶようにして言う。

マスターから離れているので、私からも口の中が見えました。

……ギザギザした、鋭い歯が並んでいる。とても人の口とは思えない物だった。

まるで獣のような歯です。


なるほど。エレナさんはアレをずっと隠していたのですね。

それをマスターに見られてしまって……しかし、当のマスターはというと。


「俺の嘘偽りのない気持ちですが、何か!?」

「なんで君がキレてるの!?」

「き、キレてはないです!ただ、そんな可愛い歯を見られただけで……いえ、すみません。エレナさんにとっては、“だけ”じゃ済まされないことですよね…。ですが、それで勝手に悲しそうな顔されたら……こっちも悲しくなります」

「か、かかか、可愛い歯!?趣味悪いんじゃないの、カガリくん!?普通は気持ち悪いって思うでしょ!」

「え?俺のいた国じゃ、普通に守備範囲ですが?寧ろストライクゾーンですが?(ヲタクに限る)」

「はぁーッ!?」


……私は何を見せられてるのでしょうか?

喧嘩が始まったかと思いきや、ただの中睦まじそうな痴話喧嘩に見えて来ました。


本心とは思えませんが、エレナさんはマスターのことを理想の男性であると言っている。

そしてマスターにも、恐らくエレナさんのことは好ましく想っている節がある。

……おや?そう考えるとやはり痴話喧嘩ですかね、これは?


「エレナさんが過去、それが原因で何があったのかは知りませんし、聞きません。ですが少なくとも、俺のことは信じて頂けないでしょうか?俺は絶対に嫌いになりませんので!」


このまま嫌われたくないからと、男性が必死に彼女のコンプレックスを褒めちぎる。

女神様の知識込みですが、私にはそういう人間の下手くそな求愛行動にしか見えません。

恐らくマスターは必死過ぎて、自分で何を言ってるのかよくわかっていないと思われますが。


「〜〜〜ッ!? わかった!わかったから、それ以上恥ずかしくなるようなことを言わないで!もう…」


そう言ってエレナさんは階段を上って来ました。


「え?エレナさん、どこへ?」

「こんな状態でまともに攻略出来る気しないから、休憩所に戻るの…。皆は先に偵察しに行くなりしてていいよ」


来た道を戻って行くエレナさん。

そんな彼女を見て、マスターはどうすればいいのか迷ってる様子。

……仕方ありません。ここは助け舟を出して差し上げましょう。


「マスターはエレナさんと先に戻っていてください。私はシルバーと共に偵察してから戻ります」

「え?……あ、ああ。わかった。気を付けてな。あれ?でもランプはエレナさんが…」

「明かりは雷で代用出来ますので、心配いりません。早く行ってあげてください。理解者が傍にいると、人は少なからず安心しますので」

「わ、わかった。じゃあ、偵察は任せた」


マスターの背中を押して、私はシルバーと先へ進んで行きました。


……正直に申しますと、私はエレナさんのことを信用していません。私たちと行動するのは、何か裏を感じますので。

ですが、マスターなら大丈夫だと、私は信じています。

マスターは変人ですが、簡単な泣き落としや色仕掛けで屈するような人でないことは、わかっていますから。

最近話が短くてすみません…。


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