不幸後の報酬&VSミノタウロス1
不幸後の報酬だけで済まそうと思いましたが、短かったので次回予定だった物を一部くっ付けました。
「ボクが行ってくるー!」と、ひとっ飛びで宝箱が落ちて来た天井の穴に入って行った生足魅惑の冒険者。そう、エレナさんである。
穴に入って間もなく「お!」と声を上げて、なにやらゴソゴソと引っ張り出そうとしているのが伺えた。
「よっと。ただいまー!」
「お早いおかえりですね」
降りて来たエレナさんは、その手に銀色の宝箱を二つ持っていた。
宝箱が落ちて来た穴だけ塞がらないことに、これは何かあるなと思ったら、まさかの割とレアそうな宝箱が二つもあったとは…。
「見るからにレア宝箱っぽいですね?」
「うん!金箱ほどじゃないけど良い物が入ってるよ~、これは。ありがとうメイちゃん」
「お気になさらず。たまたま違和感に気付いただけですので」
鳴は謙遜するが、彼女の洞察力がなければ完全に見落としていた、意地悪な仕掛けだったと俺は思う。
もしかしたらダンジョンはこういうトラップがあるという知識があったのかもしれない。女神様と鳴様様である。
「それでは早速、ご開帳~♪」
エレナさんが意気揚々と一つ目の銀箱を開ける。
中身は……空の瓶?
見た目やサイズは焼酎とか入ってるやつで、蓋はコルクになっている。
「なんですか?これ」
「う〜ん?なんかAランク仲間が似たような瓶を持ってた様な気がするなぁ。えっと確か……」
少し考えて、ハッとした様子を見せたエレナさん。
思い出したようだ。
「これ、『貯水瓶』だよ!」
「貯水瓶?」
「うん。こうやって魔力を流すと……」
そう言ってエレナさんが瓶に魔力を流し始めた瞬間。
なんとコルクから水が流れ始めたではありませんか!?
しばらくすると瓶の中身は満杯になり、エレナさんはそれをバッグから出したコップに移して一口……
「うーん!美味しい~」
「すっご!めっちゃ良いじゃないですか、その便利アイテム!水分不足に陥ることなんて無さそう」
「そうだよ~。ボクの知り合いも同じ奴を持ってて、それで知ったんだけど。なんと魔力がある限り永遠に水が出続ける優れ物なのさ!ずっと欲しかったから超嬉しいよ~」
良いな~、それ。飲み水から料理用の水まで買う必要が無くなるじゃん。
これはエレナさんがトラップにハマった不幸で見つかった幸運の品だから、当然彼女の物だ。
「ではでは~。もう一つの銀箱も、ごっ開帳ー♪」
気分も上々のままもう一個の方も開ける。
こっちにはハート型のネックレスが入っていた。きっとこれも何かしら効果があるアクセサリーなんだろうけど、パッと見じゃあ雷帝の下僕と同じく、全くわからない。
「やったー!これも凄い装備だよ!しかも金箱に入っててもおかしくないくらい」
「そうなんですか。どんな効果があるんです?」
「一回限定だけど、死ぬと生き返らせてくれるの。さすがに寿命での死だと発動しないけど」
「へぇー。生き返る……は?」
死ぬと生き返る…?
それってまさか―――
「ゾンビになるんですか?」
「発想が極端!?別にアンデッド化はしないよ…。これは後輩のCランクの子が運良くダンジョンで手に入れたことがあってね?これの名前は確か、『天使の恵み』だったかな?まぁボクは寿命以外で死ぬ気はサラサラ無いけどねー!あっはっは……おっと、危ない危ない…」
自信満々に笑おうとしたエレナさんだが、直前で口を隠してないことに気づいて、慌てて隠す。
……やっぱり見られたくないのか。若気の至りで舌を二又にでもしたのかしら?
結構気にしてそうなので、聞かないでおくけど。
「まぁ一応付けておこーっと。さっきみたいなトラップでまた死に目に遭うかもだし」
そう言って厚手のパーカーのチャックを開け放って、ネックレスを付け始めるエレナさん。
その下はピッチリした黒いインナーで、彼女の隠れていたスタイルが顕著に現れていた。
―――少し大きめのお椀サイズか。……なんとも好みの大きさだ。腰もほっそ。
「……よしっ。どう~?似合うかな」
「はい。バッチリ似合ってますよ。天使のようです」
「天使って、い、言い過ぎだよ~。も~」
「お転婆な」
「コラーッ!?一言余計!( "ºДº")ノ `-' ) ペシッ」
「いって」
前受けたビンタより強い。
しまった。あまり褒め過ぎるとうるさくなりそうなので、つい言わなくていい本音まで出てしまった。
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どうも。円形の通路まで戻って来ました。
思えばこの円形の通路の中をレイスによってグルグルさせられてたのかもしれないな。ここまでは一本道だったし。
「それで、次は『左』と『前』。どっちにします?」
「前で良いんじゃない?カガリくんが選んだ道だし」
ということで次は『前』へ進むことになった。道中でエレナさんが躓かないか気にしつつ。
特に魔物に遭遇することなくフロアにたどり着いた。
しかしそこには、如何にも強そうな、巨大な斧を持った二足歩行の牛が一体いた。
筋肉モリモリの身体。鋭く睨めつけてくる眼光。ツインホーンベアーより立派な角。
全長はオークキングにも引けを取らなそうだ。
……俺、コイツ知ってる。結構有名なあの怪物だよね?
「ミノタウロスじゃん」
「やっぱりミノタウロスか」
「パパ。牛肉です」
「ブルルルルッ…!」
一人だけ反応が食欲に引っ張られてるが、全員が戦闘態勢を取る。
大きさはオークキング並だが、なんか見た感じはCランクっぽい気がする。
油断しなければまずやられないだろう。
「気をつけてね。ミノタウロスはBランクの魔物だから、そこそこ手強いよ」
「えっ?」
「ん?どうしたの」
「いえ……なんでもないです」
オークキングと同じランクなのか?
……まぁ、エレナさんがそう言うならそうなんだろうけど…。んんっ?
「来るよ!」
エレナさんの言葉にハッとして、ミノタウロスに向き直る。
闘牛らしく突っ込んで、斧を振り下ろそうとしていた。
「こっちだよ、挑発!」
だがエレナさんがミノタウロスの横を通って、挑発を発動する。
挑発の効果でエレナさんに惹き付けられたミノタウロスは、彼女に斧を振り下ろす。
エレナさんはそれを紙一重で躱して、胴体に一発鋭い蹴りをお見舞いした。
足を地面に引き摺る形で蹴り飛ばされたミノタウロスだったが……
「ブモオオオォォォォォォォォォォッ!!!」
余裕そうに雄叫びを上げた。
今まではあの蹴り一発で仕留めれてたが、さすがにBランク相手だとそう簡単じゃないみたいだ。
……後の魔物に余力を残す為なのか、はたまた俺たちの経験の為なのか、彼女が本気を出してないってのもあるだろうけど。
「パパ。雷を溜めますので、エレナさんと一緒に時間稼ぎをお願いします」
「わかった。シルバー、鳴のことを頼む」
「ブルルッ!」
ミノタウロス以外に魔物の姿は見当たらないが、一応と鳴の護衛にシルバーを付けて、ミノタウロスの攻撃を躱しているエレナさんの元へ駆け付ける。
「オークキング並の相手なら、全力で殴った方が良いよ、なッ!」
奴の無防備な背中に向かって、回転も加えて全力でハンマーを叩き付ける。
すると……
―――ドゴーーーンッ!メリメリメリ……ドーンッ!
ミノタウロスが、壁まで軽々吹っ飛んで行った。
ミノタウロス戦はまだ続きます
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