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雷帝の下僕

エレナさんが発動させた罠の岩を破壊中の男。どうも篝です。

率直に言って、ただいま凄い苦労してます。この岩は凄く硬くて頑丈だ。

俺が本気でハンマーでぶん殴ってやっと削れる程度。


あの広い通路を埋める程の大きさしてるから、相応に時間が掛かってしまう。

しかも俺はこういう破壊作業をやったことがない。下側ばっかやってると、衝撃で上側が落石となって襲い掛かって来そうで怖いから、上下均等に削ってる状態だ。だから尚のこと時間が掛かる…。


「ふぅー…。やっと3分の1くらい削れたか?」


この岩の中に何かが入ってるって鳴は言っていたが、全くそれを発掘出来る気配がない。

まぁこういうのって、岩の中心部に何か埋ってるって想像しちゃうし、やっぱりそこまで削らないといけないんだろうなぁ。


「もしそうなら、もう半分くらいか…。さすがに疲れて来たぞ…」

「パパ。こっちは終わりました」


魔物の素材を剥ぎ取り終えた鳴がそう報告して来た。

30分くらいであの量をもう…?早いな。


「そうか。こっちはまだ掛かりそうだ。もうしばらく待っててくれ」


しかし30分か…。俺も30分でここまで壊したとなると、まぁそこそこ早いんかね?


「カガリくん。なんで派生スキル使わないの?そうしたらもっと早く壊せるのに」


岩の破壊作業を再開しようとすると、エレナさんからそんなことを言われた。


「派生スキル?」

「あれ?ハンマー使ってるから、てっきり『破壊者』のスキルを持ってるのかと思ったよ」

「いえ。俺は『パッシブ身体強化』ですよ」


本当は精霊魔法使いもあるんだけど。


「パッシブ身体強化か〜。それじゃあ仕方ないね。パッシブ系のスキルは、派生スキルを習得出来ないのが難点だよね〜」

「あはは…。すみません」

「いいよいいよ!ボクも手伝うから、ちゃっちゃと壊しちゃお」

「えっ?」


そう言ってエレナさんが岩を蹴ると、俺ほどではないが確かに岩が削れた。

……バケモンや…。


「うぅわ、硬っ!これを一人でここまで壊すとか、カガリくんのパッシブ身体強化ってかなり恩恵がデカそうだね…」

「はい。おかげで助かってます」


二人で協力して、俺は下側を、エレナさんは岩の上に乗って上側を重点的に破壊していく。

エレナさんはまるで工事現場の機械のようにスムーズに削って行くから、見ているとなんだか気持ちが良い。


―――下から見る生足って、結構魅惑的に感じるな…。見る角度によって違いが出るもんだな。


そんな邪な気持ちを若干抱きつつ、岩を壊して行くこと10分。

岩とは違う感覚が手に伝わって来た。


そこからは慎重に岩を削っていくと、金色の四角い箱が姿を現した。


「なんだこれ?」

「おー!カガリくん、それ宝箱だよ。しかも金箱じゃん!」

「珍しいんですか?」

「レアアイテムが入ってる、ちょーっ貴重な宝箱だよ!ボクたちAランク冒険者でも、なかなかお目にかかれないんだよ?カガリくんは運良いね〜」


そう言ってエレナさんは、金の宝箱の周りを素早く蹴り削って行った。

すぐに金箱はくり抜かれて、それを俺に渡して来た。


「おめでとう、カガリくん」

「えっ?」


これ……俺のになるの?


「なんで俺に?」

「なんでって、カガリくんが一番頑張って岩を削ってくれたでしょ?じゃあ功労者である君が持つのが相応しいじゃん」

「でもエレナさんがドジしなかったら、この宝箱を入手することは出来ませんでしたよ?」

「それはノーカンでお願いします!めっちゃ迷惑掛けたことには変わりないし!」

「う〜ん…。じゃあせめて、中を見てから決めませんか?もし中身が俺と鳴には不要で、エレナさんには必要な物だったら困るでしょう?」

「えー…。金箱だし、そんなことないと思うけどな〜」


説得の末、エレナさんは渋々応じてくれた。

ということで、いざ金の宝箱を開けてみると……


「ん?これって……」

「ピアス、だね?なんだか高級そう」


入っていたのは、星型のピアスだった。箱の中に無造作に入っていたみたいだ。

だから鳴の耳に聞こえたんだな。……いやその前によく壊れなかったなこれ…。見た感じ傷一つないぞ?


星の中心には雷マークみたいな装飾がされていて、少し変わったデザインだ。

ゲームなんかだと特殊能力が備わった装備品になりそうな感じだ。


「どういう物かわかります?」

「ごめんね。ボクも初めて見る物だから、『鑑定士』のスキルを持ってる人に見てもらわないとわからないや」


エレナさんでもわからないのか。てことは貴重な物であるにはあるのかもな。

じゃあ一旦これは誰が持つかは保留にしよう……そう言おうと思ったが、それより先に鳴が口を開いた。


「パパ。恐らくこれは、『雷帝(らいてい)下僕(しもべ)』というピアスだと思います」

「「雷帝の下僕?」」


俺とエレナさんは揃って首を傾げる。


「名前を聞いてもエレナさんがわからないってことは、やっぱり相当珍しい物なのか?」

「はい。そうみたいです。パパと一緒に山暮らししていた頃に、パパのパパの書斎の本に、そんな物が書かれているのを見ました」


俺のパパの書斎?……あ。女神様の知識を誤魔化す為の嘘か。


「そういえば、お前はよく書斎に篭っていたな。それで?この雷帝の下僕はどんな効果があるんだ。そんな大それた名前してるんだから、ただの装飾品じゃないんだろ?」


ならばと、俺もその嘘に乗っかった。

鳴は俺の質問に頷いて、解説してくれた。


「雷帝の下僕は、ピアスに魔力を込めることで眷属を一体だけ召喚するという物です。魔力を込めた者の強さに応じて、召喚される眷属の強さ、そして姿形が異なるそうです」

「えー!?凄く強そうじゃん!じゃあもしボクが魔力を込めたら、とんでもなく強い眷属が召喚されるってこと?」

「単純に考えればそうですね。エレナさんに可能であればの話ですが」

「ん?どういうこと?」


鳴はピアスの中心にある雷マークを指しながら説明を続ける。


「こちらに雷帝という名前が付いてる所以でもあるのですが、雷魔法を使える者にしか眷属を召喚出来ないそうなのです。本にはそう書いておりました」

「「へぇ〜」」


女神様。何度も言うがマジで鳴に色々知識を植え付け過ぎでしょ…。もはや異世界パーフェクトブックだよ。


「え?ということは、メイちゃんならこれを使えるってこと?」

「……そうですね。恐らく使えるかと」


精霊の鳴でも使えると…。だったら決まったな。


「これは鳴が装備するべきだな」

「えっ?」


「さんせーい!ボクは魔法に関してはほぼからっきしだし、メイちゃんが持つのが一番だよ」

「そんな……良いのでしょうか?私がそんな高価な物を頂いて…」


俺とエレナさんの言葉に戸惑う鳴。

これは『精霊の自分が、マスターを差し置いて〜……』みたいな感じだな。


チラチラとこちらを伺う様子から察するに、たぶん精霊魔法で雷が使える俺でも、問題なく雷帝の下僕が使えるのだろう。だから素直に受け取れずにいるんだ。

だけどこれは、俺より強い鳴が装備すべきだ。


「鳴。遠慮することないぞ。お前が持ってろ」

「……わかりました。お言葉に甘えさせて頂きます」


ということで、鳴にピアスを渡した。が、ここで致命的な欠陥が見つかった。

それを指摘したのは一応大人の女性であるエレナさんだった。


「あれ?でもそれってノンホールじゃないよね?今は付けられないんじゃ…」


なんとピアス穴問題!

くっ!そうだった…。ピアスって耳に付けるというより、刺すに近い代物だった…。


これは帰ってからにした方が良さそうだな。それにピアスの穴開けって痛そうだし、鳴にはそこら辺しっかり判断してもらって……


「問題ありません」

「「え?」」


鳴はそう言って、親指と人差し指で左耳朶を挟んで、バチィッ!と雷を発生させた。

俺とエレナが唖然としていると、鳴は雷を当てた左耳に雷帝の下僕を付けた。


「無ければ作れば良いのです」

「「……こ…」」

「こ?」

「「コラーーーッ!?」」


鳴の突然の奇行に、俺とエレナさんは顔を青ざめながら叱った。


――――――――――――――――――――――――


「ごめんなさい、パパ…。もう二度としません…」

「いやまぁ、何事もなく済んだから良いけどさ…。次からちゃんと事前に教えてくれ」


シュンとした様子で正座して反省する鳴。

マジでビックリした…。急に自分に雷を当てるとか心臓に悪いわ…。

ちゃんとピアッサーで開けた穴みたいになったから良かったけども、耳が取れたりなんかしたら泣くぞ…。


「もう〜。女の子なんだから、もうちょっと自分の身体は大切にしなきゃダメだよ?」

「はい。わかりました…」


エレナさんが鳴の頭を撫でながら言うと、素直に返事した。

こうして見ると、まるでお母さんみたいだな…。

こんな騒がしい人がお母さんだったら俺は少し嫌だけど。


「わかればよろしい。で、どうするメイちゃん?さっそくそれ、使ってみる?」

「……よろしいですか?パパ」


若干怯えた様子で聞いてくる鳴。さっきのエレナさんを思い出すなぁ…。

思えば鳴を叱ったのって初じゃね?なんか新鮮。


「もう怒ってないから、そんな顔すんなよ。それでその眷属召喚って、時間制限みたいなのあるのか?」

「いえ。特にありません。出した後は『倒される』か『私の意思でピアスに戻す』まで居続けます」


なるほど。だったら召喚してもらった方が良いよな?

ピアスに戻すっていう若干パワーワードっぽい言葉が聞こえたが、そこが眷属の家みたいな物なのかもしれない。


「マジで?それだけでもう強いじゃん!同じように眷属を召喚する『召喚士』っていうスキルがあるんだけど、その人が眷属を召喚してる間はずっと魔力を消費し続けるんだよ。そこだけ見たら完全に上位互換!」


エレナさんが興奮した様子で言う。

それならもう召喚一択だな。


「じゃあ、さっそく出してみてくれよ。仲間は多い方が心強いからな」


「はい。わかりました」


鳴は一旦俺たちから距離を取る。

そしてピアスに触れて、バチバチと雷を流し始めた。改めて見ると、あのピアスで鳴の可愛さがグッと引き上げられたな!(親バカ)


しばらくピアスに雷が流れると、雷マークのところに、紫色のゲージのようなものがゆ〜っくりと溜まって行くのが見えた。

あれが全部溜まったら召喚される仕組みか?でも……俺にはよくわからないが、あのペースだと相当魔力を消費するんじゃないのか…?

鳴の魔力は保つのか?


「これは……予想以上に魔力を食うみたいですね」

「大丈夫そうか?鳴」


「はい。少々、いえ……かなりの大食らいのようですが、今のところ問題ありません。ただこのままですと、魔力を全部持って行かれそうです。エレナさん、魔力ポーションを用意して頂けますか?」

「うん!わかった!」


鳴の要望に従って、エレナさんはマジックバッグから濃い青色の液体が入った瓶を取り出した。


「……それ。ちゃんと魔力ポーションですか?」

「えっと……うん!大丈夫!ちゃんと魔力ポーションだよっ!」


よし。ドジってないな。もし劇薬とかだったら目も当てられないからな。

この人ならやりかねないから、一応の確認だった。


それから10分ほど待っていると、ついにゲージが満タンになった。


すると雷帝の下僕から大量の雷が迸り、俺とエレナさんは思わず顔を腕で庇うようにして覆った。

フロアのあちこちに迸る雷。それらはやがて空中で一つに集束して行く。

そして一つの塊となった雷は、鳴の目の前へと、光速の勢いで降り注いだ。


「―――ヒヒイイイィィィィィィンッ!!!」


落ちた雷が霧散し、そこに姿を現したのは―――銀色の鬣と白い雲のような羽衣を持つ、一頭の黒馬だった。

昨日アマ○ラで馬が擬人化したアニメを見てハマったから馬にした訳じゃないですからね?本当ですよ。

元々、家族のペット枠として馬にするつもりだったんです。うちは昔は馬をいっぱい飼ってたので、犬と同じくらい愛着あるんですよ。

ちなみに私は「ヒヒィーン!」って可愛い鳴き声は聞いたことないです。「ブルルッ!」とか、「ブルビヒィーンッ!」っていうイカつい鳴き声なら聞いたことあります。


面白かったら下へスクロールして、いいねと高評価をお願いします。


追記:明日は少し遠出するので、お休みするかもしれません。

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