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『Aランク冒険者は

サブタイは脱字してる訳ではございません。

 鳴と改めて本当の家族になるという目標を立てた翌日。俺たちは受付嬢に言われた通り、冒険者ギルドへと向かう。

 その男は鳴との間に、家族の絆のような物がようやく芽生え始めたと感じている。どうも変態です、じゃない篝です。


 昨晩のオーク肉は、ブランド豚のように柔らかくジューシーで、非常に美味な味わいだった。ジンさんたちも美味しそうに食っていたな。

 まぁその分、やっぱり鳴がいっぱい食わさる訳だが……金貨3枚分も。それでもお腹いっぱいじゃないってんだから、精霊には満腹という感覚が備わってない疑惑があるな。

 余談だが、エィジールさんが奥さんの為にいくらかお持ち帰りしていったな。どうせなら連れて来れば良かったのに。


 相変わらず食費は掛かるが、防具とか買っても余裕が持てるくらい金は余るだろうし、しばらくは気にせずクエストをやっていこう。


「パパ。本当に休まなくて大丈夫なのですか?」


 大変なクエストを受けた後だから、鳴から今日は休みにしたらどうだと言われていた。

 でも不思議と疲れは感じない。これも女神様バフのおかげだな。


「大丈夫、大丈夫。女神様バフがあるから、疲れは全く無いんだ。でも鳴にあんま心配掛けたくないし、今日はDランクのクエストを一個だけやって、明日は休みにしようと思うよ」

「はい。私もそれですと安心です」

「そうか。……ん?なんか、急に鼻がムズムズと……いっきし!」

「大丈夫ですか?パパ」

「ああ。大丈夫だ。誰かがいつも通り噂してんだろ」


 適当に言ったことだが、その噂の正体が女神様からの「私のバフじゃないですし!」というツッコミだったことは知る由もない。


「あーでも、クエストの前に防具を買っておきたいな」

「そうですね。少しでも強敵から受けるダメージは軽減した方が良いというのは、先日のオークキング戦でわかりましたし」

「だな。もう過信し過ぎてヘマするようなことだけは避けたい」


 俺も鳴も、Eランク昇格試験を通して多くのことを学んだ。

 その中でも真っ先に解決すべきは、防具の調達だろう。あと、ボロボロになった俺と鳴の冒険者用の服も直してもらわないと。

 ちなみに鳴が今着ている服は、朱色の薔薇の刺繡が入った白いワンピースだ。可愛い!


「鳴はオーダーメイドになりそうだな?鳴に合うサイズの防具はなかなか売ってなさそうだし」

「なんでしたら私の防具は後まわ……いえ、すみません。すぐに用意出来るようでしたら、お願いします」

「……うん。そうしようぜ」


 鳴から“自分は精霊だから”という遠慮が消えてるのを実感し、思わず微笑んでしまう。

 ちょっと顔が赤いとことか、まだ慣れてないところがめちゃくちゃ可愛い。

 ……いかん。これでは本当にロリコンの変態扱いされてしまいそうだ。


――――――――――――――――――――――――


 道中にあった屋台の串焼きを鳴に買ってあげたりしながら、俺たちは冒険者ギルドに着いた。

 今朝も銀貨10枚分は朝食を食ってたのに、屋台の飯まで……なんて驚くだけ無駄だな。だって鳴だもん。


 鳴が串焼きを食べ終わるのを待ってから中に入る。

 すると……


「おはようござい……」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!そんな面倒くさいだけのクエストなんか受けたくない~!」

「うおぉ!?なんだ。なんの騒ぎだ?」


 ギルドの扉を開けた瞬間に、いきなり駄々っ子のような金切り声が…。


「お馴染みの受付嬢が、何やら女性の方と揉めてるようですね?」


 鳴に言われて、いつもの受付嬢の方を見る。

 本当だ。なんか緑色……というより翡翠色っぽい長い髪をお団子ツインテールにしてる女性と言い合いになっている。


「ですが、他に適任の冒険者たちは別の調査で出払ってまして…。これを任せられるのはエレナさんだけなんです。どうかお願い出来ませんか?」

「うっそだ~い。ボク、普段はちょっとアレだけど、これでも耳は速い方なんだよ?今ルミナリアには、超強い新人冒険者の親子がいるって話じゃん。その人たちに頼みなよ~」

「確かにそうですが、あの方たちはまだダンジョンは未経験だと思いますので、やはり適任はエレナさんしか…」

「嫌ったら嫌!一人寂しくダンジョンに潜るなんて、ボクはしたくない!いくら無敵のボクでも、ソロでダンジョンは精神が擦り減って大変なんだよ~。およよ~…」

「そんな~…」


 ……なんつうか、こう……優しく表現すると、凄い賑やかな人だな。うん。

 もっと言うと、室内だと音が反響して、めっちゃ耳にダメージを与えて来るタイプの人だ。


「うるさい人ですね」

「鳴。なんて直球な子…」


 その内オブラートに包むことを覚えさせよう。

 それはそうと、あの人さっき超強い新人冒険者の親子とか言ってたよな?超強いかはまだ自信ないのでさておいて、それって俺たちのことでは…。

 もしそうなら仲介に入って、話を聞くくらいは出来るかも?


 そう思って受付に近付いて行くと、だんだん翡翠の髪の人の“とある部分”に視線が吸い寄せられた。

 え……耳が、長い…。ちょっと待て。俺の知る限り、耳が長い種族って言ったら……


「およ?」


 女性が俺たちの気配に気付いて振り返る。

 瞬間。俺の中で電撃が走った。


「エルフ…?」

「ん~?そうだけど。もしかして見るの初めて?」


 彼女の服は、朱色の萌え袖パーカーみたいな感じになっていて、その萌え袖部分で口を隠しながらエルフであることを肯定した。


 エルフは数々の物語で美形として描かれている存在だ。だからなんとなく、この世界にエルフがいたら息を吞むくらい美人なのかな~とか想像したりした。

 だが……妄想と現実は全然違うと、彼女を見て思い知らされた。いい意味で。


「? パパ…?」


 パッチリ二重のお目目。長いまつ毛。小さく整ったお顔。お団子ツインテール。こちらを真っ直ぐ見据えて来る、黄色と青のオッドアイの瞳。その全てが俺に衝撃を与えた。

 背は俺より少し低いくらいだが、脚がすらっとしてて長く、モデルみたいに可愛い印象を受けた。

 まるで絵に描いたような存在。お人形さんみたい、という言葉も当てはまるだろう。


 俺はそんな彼女を目の前にして……


「めっっっちゃ可愛い…」

「パパ?」


 思わずそんな言葉が漏れた。鳴から心配されるような、早口っぽい感じで呼ばれてしまった。

 女神様もかなりお美しかったが……彼女は、なんというか―――


「おりょ?えへへ~…。ありがとう!そんな直球で褒めてくれるなんて、嬉しいよ。でも……そんなに熱い視線を浴びせられるのは、ちょっと…」

「っ!? す、すみません!」


 あっぶね~…。もう少しで冷静さを欠くところだった…。

 まさか「アニメの世界から飛び出して来たのでは?」と疑いたくなるほど、エルフがここまで美形だなんて思いもしなかった。


「ふぅ~。心臓を射抜かれた気分だった…」

「あははははは!何それ面白ーい!」


 口元を隠しながら笑うエルフの女性。その姿すら絵になっていて、写真に撮ってじっくり眺めたくなるな。

 マジでその内、どうも変態ですという挨拶を使う時が来るかもしれん。


「おはようございます。何かあったんですか?俺たちの話っぽいのも聞こえましたが」

「おはようございます。カガリさん、メイさん。実は開拓中の北の森に、ダンジョンを発見致しまして…」

「ダンジョン?」


 受付嬢からダンジョンの説明がされる。

 簡潔に纏めると、ダンジョンは何の前触れもなく突如現れる特殊空間のことで、中には金銀財宝が眠ってる宝部屋とか、そういうものがいっぱいくっついた物って感じだ。

 だけど美味しい話だけではもちろんなく、中には魔物もいる上に命に関わるトラップまで仕掛けられてることまであるという。


「へぇー。で、そのダンジョンが北の森に現れたことと何の関係が?」

「ダンジョンは放っておくとその内、中から魔物が溢れ出て来る可能性があるのです」

「溢れ出る?」

「はい。そうなっては森の開拓が進まないどころか、街に被害が出てしまうかもしれないんです。未知のダンジョンですので、ルドルフさんを始めとしたBランク冒険者の方々にお願いしたいのですが……生憎とそれぞれが別件の調査で全員出払ってまして…」

「なるほど。それは困りましたね」

「はい。ですから、このタイミングで偶然にもルミナリアまでいらしてくださった、“Aランク冒険者”のエレナさんに頼み込んでいたのですが…」

「Aランクッ!?」


 バッとエレナと呼ばれたエルフを見る。

 この人が……Aランク冒険者…?ルドルフさんよりも上の?さっき子どもみたいな駄々の捏ね方してたこの人が?


「どうも~。自己紹介が遅れてごめんねぇ。そう!このボクこそ、冒険者の中でも超優秀と呼ばれている、Aランク冒険者の~~~……エレナだYO!」


 片手で口を隠し、空いてる手を俺に向かって突き出しながら、エレナさんはハイテンションで自己紹介をして来た。

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