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オークの縄張り

 やぁ。三郷の集いの皆さんと一緒に試験中の篝です。

 さっそくだが森に入って数分。いきなり二足歩行の犬の魔物に襲われた。コボルトである。

 だけど所詮はEランクの魔物。相手にならない。雷で感電死させたり、ワンパンで首の骨を折ったりして楽に倒せる魔物だ。


 ただ一つ、気になることがあった。

 襲って来たコボルトは7匹だったのだが、内半分が負傷していたのだ。

 身体中に擦り傷が多く見られ、まるで何かから慌てて逃げてきたかのような…。


 その疑問については、エィジールさんが教えてくれた。


「恐らく縄張り争いに負けたのでしょう。動きがバラバラでしたし、群れのリーダーがやられて逃げていた最中だったと考えるのが妥当かと」

「そこで私たちに遭遇するなんて、運が無いよね~」


「てことは、この先にはそれなりに大きなコボルトの群れがあると思った方が良さそうですね」

「ああ。カガリの考えで間違ってないぜ。そういや、コボルトと戦うのは初めてだったのか?」

「はい。常設系だとゴブリンしか倒したことないんですよね」

「そうか。じゃあこの機会によく学んでおくんだな。コボルトは単体じゃ大したことないが、ゴブリンと違って連携が上手い。油断してると喰われちまうから、マジで気を付けろ」


「ですがそれは群れにリーダーがいてこそ。先にそれを仕留めさえすれば、ゴブリンとほとんど変わりません」


 ジンさんの説明にエィジールさんが補足する。

 人に近い姿形をしていて、連携して戦えるほどの知恵を持つ。だが群れの指揮を担うリーダーがいなくなれば、忽ち崩壊する。

 なるほど。よく覚えておこう。つまりコボルトの群れと遭遇したら、魔力玉をリーダーらしき奴にぶん投げれば良いんだな?(ザ・力業)


 コボルトの討伐証明である左耳と、素材になる爪と牙を回収して改めて奥へと進んで行った。


――――――――――――――――――――――――


 コボルトの群れを警戒しながらオークを探して三千里。いや全くそんな歩いていないけど。

 思わずそんな比喩表現をしたくなるくらい探してるということだ。


 オークがよく出没する所まではおよそ30分で付いた。その周辺でずーーーっとオークを探してるよ…。

 生い茂った木々のせいで時間はわかりにくいが、体感的には3時間くらい歩きまわっている気がする。

 探索範囲を広げながら探してはいるが、オークがいた痕跡すら見つからない。


 ていうかずっと警戒しているコボルトにすら、あれから1匹も見掛けていないんだよなぁ…。


「ねぇ。なんかやっぱおかしくない?あの豚野郎、いつも私の匂いに釣られて真っ先に飛んでくる癖に…」


 ユリアさんが辟易した様子でそんなことを言う。


「匂い?ユリアさんはオークを引き付ける香水みたいなのを付けてるんですか?」

「あー、いや。そういう訳じゃないんだけど……」


 ユリアさんは言いづらそうに目を逸らす。

 ……オーク、ユリアさんの匂い、別にオークを引き付ける物を所持してる訳でもない……………オーク×女性。あっ(察し)


「ええと……もしかして、オークって……」

「それ以上は言わないで。お願いだから…」

「ハイ。さーせん…」


 なるほど。異世界のオークは同人誌のような連中だったと…。

 二次創作だけの話にしてほしかった。


 ……………ハッ!てことは鳴も……


「? パパ。私の顔に何か付いてますか?」

「お前は絶対に守るからな!絶対にっ!」

「??? はい。私もパパを全力でお守り致します」


 無垢な子どものようなことを言ってるが、お前知識はあるんだろ?

 うちの大事な子をそんな目には絶対に合わせないぞ!見つけたら全力で殴り飛ばしてやる!?


 そんな意気込みをしてから一時間。結局、最初に遭遇したコボルト以外に収穫は無かった。


「……日が落ちて来たな。そろそろ野営の準備のしよう」


 ジンさんが空を見上げて言う。

 本当だ。空がオレンジ色だ。この森は元々日があまり差し込まないみたいだから、全然気付かなかった。


 来た道を戻りながら、エィジールさんが口を開く。


「結局、1匹も見つかりませんでしたね」

「ああ。こんなこと一度も無かったのになぁ…」


 三郷の集いの三人は、オークが見つからないこの状況を訝しんでいるようだった。

 1匹も見つからないどころか、痕跡も見つからないんだもんな。何か底知れない不気味さがあるのはわかる。


 少しだけ開けている場所まで戻って、そこで野営することになった。


「焚火になりそうなもの探してきますね」

「私も行きます」


「おう。気を付けてな」


 ジンさんに一言告げて、俺と鳴は焚火の材料を探しに向かった。

 と言っても、少し太めの枝とか落ち葉を拾うくらいのもので、すぐそこに野営地が見える範囲だ。


「……鳴。オークってこんなに見つからないことってよくあるのか?」


 枝を集めながら鳴に聞く。三郷の集いは不思議がっていたが、もしかしたら見つからない時は普通に見つからないのかもしれない。

 だが鳴は、首を横に振った。


「いえ。オークはゴブリンほどではないですが、繫殖力が高い魔物です。当然数も多く、生息地に足を踏み入ればすぐに襲われても不思議ではありません」

「じゃあ、なんでこんなに見つからないんだ?」

「……可能性は三つ考えられます。一つはオークの獲物が少なくなったこと。次の餌場を求めて、ほとんどのオークがいなくなった可能性です」

「あ~。数が多いんだったら、そうなってもおかしくないか…」

「はい。ですが、これは違うと私は考えています」

「というと?」

「オークが口にする野性動物や果物が、まだ多く見られたからです。自分たちの食べ物がそこにあるのに、次の餌場を探すとは考えにくいです」


 マジでか。果物はともかく、動物なんて全く見つけられんかったぞ…。

 鳴の索敵力は相変わらず凄いな。


「二つ目は?」

「この森に住むオークを全て追いやるほどの強力な魔物が現れた可能性ですが……これが一番低い可能性だと思います」

「まぁ、それは俺もわかる。新しくこの辺を縄張りにした奴がいるんだったら、とっくに俺たちの前に現れてるよな?」

「はい。なので三つ目の可能性が一番有力なのですが……同時に、考えうる中で一番最悪かと」


 真剣な表情で、鳴は三つ目の可能性を上げた。


「オークの統率者が現れたこと。これが一番最悪なパターンです」

「オークの統率者?」

「はい。オークは基本単独で、群れても精々が2、3匹程度で行動する魔物です。ですがもし、その群れがそのまま大きくなっていった場合……群れのリーダーが、上位個体へと進化するんです」

「進化?それってつまり、急に姿形が変化して強くなるとか?」

「はい。その認識で間違っていません。これがCランクのオークジェネラルやオークマジシャンであれば、特に問題はないんですが…」


 そう言う鳴の表情は暗かった。

 恐らく今言ったことは希望的観測と見て良さそうだ。

 鳴が一番最悪と言うほどだ。もっとヤバい何かがあるんだろう。


「もしかして、それ以上にヤバい存在がいるのか?」

「……はい。オークジェネラルやオークマジシャンよりも、更に上の個体。……討伐難易度、Bランク。オークキングが、この森で誕生しているかもしれません」

「オークキング?王様か。まさに群れを束ねる奴に相応しい名前だな」


 しかもBランクか…。ツインホーンベアーよりも一個上のランク。ツインホーンベアーも結構ヤバそうな戦闘力してるのに、それより強いとかちょっと想像出来ないな…。


「まぁでも、鳴がいれば安心だろう。なんせツインホーンベアーを一発で倒せるくらい強いんだからな!お前ならBランクの魔物が来たとしても楽勝だろ?」


 俺は自信満々に言う。

 Bランクの魔物がどの程度の強さが知らないが、うちの鳴が負ける姿なんて想像出来ないしな。


「……はい。少々手こずるかもしれませんが、負ける気はしません」


 ほらな。鳴でも手こずるくらいには強いらしいが、少なくともやられる心配は無い訳だ。

 ……の、はずなのに。鳴の表情は暗いままだった。


「鳴?まだ何か引っ掛かることでも?」

「……マスター。実はこれもまた不可解なのです。一番可能性のある答えのはずなのに、まだ遠いような答え……そんな気がするのです」

「ん?どういうことだ?」

「仮にオークキングがこの森にいるとします。しかし、いくらなんでもこの一帯のオークの姿を全て眩ませることなんて、出来るのでしょうか?」

「出来るのでしょうかって聞かれても……お前にわからないことが、俺にわかると思うか?」


 なんだ?鳴は一体、何をそんなに警戒している?


「マスター。もしここにオークキングが本当に存在しているのなら、ここはオークキングの縄張りのはずですよね?」

「ああ…。そう、なるな」




「では、なぜ見回りのオーク(・・・・・・・)すらいないのでしょう?自分の縄張りを、他の生物に侵されないようにしないなんて、普通なら有り得ません。私はずっと、そのことが気掛かりなのです…」




 鳴がそう言うと同時に、野営地から声が聞こえて来た。


「オークが出たぞー!」

「やっと現れたわね!この豚っ!?」


 もう周りは暗くて俺がいるところからはわからないが、どうやら野営地にオークが現れたようだ。

 本来なら喜ぶべきことなのだろう。やっとEランク昇格試験の獲物に出会えたんだから。

 だけど鳴の言ったことが気になり、素直に喜べない。


 ……何か、嫌な予感がしてきた…。


 だからと言って行かない訳には行かない。俺と鳴は、急いで野営地へと戻ろうとするが、それと同時に三郷の集いの会話が聞こえて来た。


「おい!アイツ逃げたぞ!?」

「待ちなさいよ!どこに隠れてたんだか知らないけど、絶対逃がさないわよ!」


「っ!? 駄目です!無暗に追っては……」


―――ドーンッ!


 ジンさんとユリアさんがオークを追おうとするのを、鳴が急いで止めようとした時、俺たちの目の前に突如何かが降って来た。

 土煙が立ち、思わず顔を覆ってしまう。


「なんだ!?何が降って来たっ!」


 土煙が止み、改めて前を見てみると……体長5メートルは下らない、二足歩行の豚が目の前にいた。

 そして……


「オ前ラ、一番、強イ。俺ガ、殺ス…!」


 なんとその豚の魔物……オークは、人の言葉を喋り出した。

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