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9話 婚約しました

 昨日の騒動から一夜明け、朝日が眩しいです。


 えっと、昨日はあの後シルク嬢を部屋に送って、私はそのまま自室に戻ったんだよね。

 けど彼女との時間を思い出して・・・うん、中々寝付けませんでした。

 寝たの明け方近くだったよ。


「レイス様、お目覚めですか?」


 コンコンと扉が叩かれ、私付の侍女の声が聞こえた。

 その声に、眠たいながら入室の許可をだす。

 そろそろクリフも登城する時間だろう。はぁ、これからどうなるんだろ。

 

 両親達には、まだ昨日の事を話していない。

 昨日私とシルク嬢は婚姻の約束をしたが、それは二人だけでの話。

 今日、正式にウチの両親と彼女の両親を交え返事をする事になっている。


「あーーーー!狂喜乱舞する両親の顔しか思い浮かばない!何コレ何の策略?絶対手の平の上でしたよね!」


 思わず叫んだ私に、私の身支度の用意をしていた侍女がビクリと肩を震わせた。

 あ、ごめんなさい。

 私付の侍女だけあり、普段から冷静沈着の彼女でも、今の私の発言にはビックリしたのだろう。

 だが、流石と言うか、彼女は何事もなかったかのように、何時もの仕事を再開させた。

 

 そんな中。


「誰ですか、廊下まで響き渡る声で叫ぶのは」


 はい、私です。じゃない!

 私の自室の扉をノックしながら現れたのは、不機嫌極まりない顔のクリフだった。

 朝が弱い低血圧だが、今までになく今日は不機嫌だ。

 何時も完璧にセットされている薄灰色の髪も少々乱れている。


「くっ、クリフおはよう」

「はい、お早うございますレイス様・・・・で?誰が誰の手の平ですか?廊下まで貴方の大声が響き渡ってましたよ!少しは自重してください!この浮かれポンチ!」


 ちょっと・・・酷くないですか?

 って、浮かれポンチってなんだ!私は悲観してたのであって、浮かれていた訳ではないぞ!

 

「クリフ!何ソレ。私のどこが浮かれポンチなんだ!」

「はぁ?貴方がソレ言いますか?昨日シルク嬢といい感じだったくせに!」


 はい?

 ちょっと待ってください。

 何で、クリフがソレ知ってるんでしょうね?

 

 クリフの言葉に思わず思考が停止した。

 昨夜、あの中庭の回廊には私とシルク嬢しかいなかった。居なかったはず。

 それなのに、今の台詞はあの場所で起こった事を知っているようではないか!


「ちょっと、待って・・・えっと、クリフさん?まさか、昨日の晩、私とシルク嬢の事見てたの?」

「えぇ、もうバッチリ!」

「ほぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「えぇい、煩いですよレイス様!だいたいアノ場所の向かいはユリーカ様のお部屋でしょうが!あのような場所で気を許された貴方が悪いです!」

「はぁ!?」

「ったく、こちらは忙しいというのに、「楽しいイベントが開始しましたわ!」とか言う伝言がユリーカ様から入って、強制的にお部屋に召喚されましたよ!」


 その一言にハッとした。

 そう、そうだ!忘れてたけど、あの回廊の向かいはユリーカの部屋だ。

 妹の婚約者であるクリフがソコに居たとしても、おかしくもなんともない。


 や・・・やってしまった。


「じゃぁ、という事は・・・父上や母上は、既に」

「ええ、ご存じです!おかげで私は巻き添えをくらい、あの後明け方まで陛下と宰相閣下の酒に付き合わされました!しかも夜中だと言うのに、エドモンド様までやってきて混ざる始末!私は寝不足と二日酔いで死にそうですよ!」


 侯爵家に行ってしまった兄の名が出た瞬間、泣きそうになった。

 きっと父上が早馬で知らせたのだろう。

 人の迷惑考えて行動してください・・・父上。


 それからが大変だった。


 朝食の場に全員がそろったと同時に、盛大に祝いの言葉が飛び交い、あれよあれよと言う間に、婚約の書類が持ってこられ、その場にて両家がサイン。

 二日酔いらしい宰相がふらふらしながら書類を確認していたのには、ざまぁみろと思った。


「それでは、一度バスクード国に戻りまして、国王陛下にご連絡をしたのち、改めてこちらに来させていただきます」

「はい、よろしくお願いいたします公爵」


 その日の午後、満面の笑みの公爵夫妻とシルク嬢は自国に戻って行った。


 少し寂しいと思ってしまった自分に驚いたが、笑顔で見送る事ができた。

また一月すれば今度は本格的に嫁ぐ為に彼女はこちらに戻って来る。

 その後、我が国の事を学び、教育が終了と同時にそのまま結婚する流れだ。


 本当に、人生とは何が起こるか分からない。

 女から男に転生し、男から女に転生した彼女と出会った。

 結婚なんてしないって思ってたのに、彼女が好きだと自覚して・・・。


「神様がいるなら本当に気まぐれなんだなと思うよ、でも、この人生も楽しいからよしとするね?」


 シルク嬢が乗る馬車が見えなくなると同時に、私は天を仰ぎ、思わずそんな言葉を口にするのだった。

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