3話 よくある断罪劇
「クリフ!このご令嬢、バスクード国の公爵令嬢じゃないか!」
大量の釣書をクリフの説明付で片っ端から開いていた最中、私は最後の「ソレ」を開いた瞬間、クリフより先に言葉が飛び出した。
美しい漆黒の黒髪に、宝石のような紫の瞳。
顔立ちも美しく、教養もあり、淑女の鑑と呼ばれた女性。
「ふふっ、覚えておいでで良かったです。実は、先ほどまでご紹介いたしましたご令嬢方は前座・・・と言っては令嬢方に失礼ですが、貴方様が今まで苦手にされてきた我が国のご令嬢と隣国のご令嬢ばかりです。まぁ、ご自分でも気付いておいでのようでしたが」
不敵に笑うクリフに悪寒が・・・。
うん、確かに気付いてたけどね。
クリフがさっきまで紹介してくれてたご令嬢達は、昔から私に対し陰で陰湿な噂をまき散らしたり、嫌がらせをしてきた、言わば私の「天敵」と言っていい位の令嬢ばかりだった。
クリフに紹介をされながら、何の嫌がらせかと思ってたよ。
で、後出しのように出してきた、隣国であるバスクード国のシルク・エリンスト公爵令嬢。
彼女は数年前までバスクード国の王太子、ステファン・ドルト・バスクードの「婚約者」だった女性だ。
*****
彼女との出会いは約三年前まで遡る。
三年前、私は将来の為と称し、バスクード国の王立貴族学園に留学していた。
まぁ、実際は婚約者を作れという両親達から逃げる為だったのだが、学園では友人もでき、つつがなく日々を過ごしていた。
そして月日は流れ留学から一年が過ぎた時、事件は起こった。
その日は、この学園の卒業パーティーだった。
王族を始めとする、各家々の保護者も来賓として出席しており、パーティーは大変華やかなものだった。
そんな中で起こった悲劇・・・いや、「喜劇」かな?
この日は私以外にもいる、各国からの留学生の保護者も来ていたというのに、バスクード国の王太子は、盛大に「やらかした」のだ。
「シルク・エリンスト!今日、この場をもって貴様との婚約は破棄する!」
私が久しぶりに会ったセイグリア国と同盟を結んでいる国の王族と話している最中、それは起こった。
「ん?」
会場内に響き渡る、王太子ステファンの声。
誰もがその声に驚き耳を傾けた。
今・・・婚約破棄って言わなかったか?
「シルク!貴様は事もあろうに、私の愛するティファ・コロント子爵令嬢に数々の嫌がらせをし、皆の前で辱めたそうだな!そんな女とは結婚などできん!この場にて婚約を破棄し、国外追放に処する!貴様のような性根の腐った女などいらん!この国の汚物でしかないわ!」
・・・・この王子様すっごい事、サラっと言ってのけたよ。
「殿下、何を証拠にそのような事を!私はそのような事はしておりません!」
「煩い!全てティファより聞いておる!」
「証拠はあるのですか!」
「ティファの証言が証拠だ!貴様は馬鹿か!」
うん。馬鹿はお前じゃん?
あーあ、バスクードの両陛下は既に頭かかえてるよ。
・・・それにしても何てテンプレ。
「何これ、ラノベ?」
私が思わず発した言葉が、ステファンの「馬鹿か!」で静まりかえった会場に無駄に大きく響いた。
その瞬間、キッと睨みつけてきたステファンに、私は呆れかえったような表情で返す。
「レイスリッド貴様には関係なかろう!我が国の事に口を出すな!」
いや、私この件に関して何も言ってませんが。
昔からステファンの事は知ってるけど・・・おつむが弱いとは思ってたけど、この男こんなに馬鹿だったんだ。いいのは顔だけかい。
ふと下げていた目線を上げると、困惑顔のシルク嬢と目が合った。
まぁ、いいか。どちらにしても気分悪いし。
「別にこの国の事に口出すつもりはないけど、なにコレ「ざまぁ」なやつ?」
「は?貴様は何を言っているのだ、訳のわからん事を!」
「まぁ、いいや。それよりステファン、君何か勘違いしてない?」
「何だと!」
呆れながらも、冷静に話す私に対し、怒り心頭のステファン。
まったく、王族ならこういった場は冷静さを保たなくてはね。私を始め他国の人間に示しがつかないだろうに。
あ、両陛下ががふらつきながら椅子に。
この先を考えたらそうなるだろうね。この王子様は王族から下手したら追放とかになるんじゃないかな。
「君さぁ、さっきから聞いてたけど理屈が通ってない事だらけじゃない?」
「何だと!」
「だってそうでしょ?そこの令嬢の事だって、「私の愛する」って、浮気してた人間が何偉そうに説教してるのさ。しかも、証拠はその令嬢の証言だけって。どう考えてもおかしいでしょ?」
それからは、最後まで私のターンだった。
証拠とやらの矛盾点を片っ端から指摘してやり、反論を全て論破。
だってさぁ、シルク嬢が私や友人達といた時間に階段から落とされたとか言うんだよ?陥れたいならこの令嬢もあらかじめ調べとけってーの。ホントやることなすこと穴だらけ。
こんなんで未来の王妃目指したいってんだから・・・頭大丈夫?としか言いようがないでしょ。
まぁ、頭の弱いステファンとはお似合いだろうけどね。
「で?ご反論は以上ですか?」
私の言葉に、顔色を変えたステファンにティファ嬢。
会場からは何故か拍手が巻き起こっていた。
その後、直ぐに二人はバスクード王の命により会場から引きずり出されて行き、私はシルク嬢やそのご両親から礼を言われた。そして、両陛下からは謝罪の言葉があった。
その後、何事もなかったようにパーティーは再開されたのだが、私がこんな派手な事をしでかしてしまった事もあり、後日、この事件はうちの両親が直ぐに知る事となった。そのせいで、「他国でお前は何をしとるんだ!」と、大変呆れさせてしまった。
まぁ、お咎めはなかったけどね。
そして、学園内で無駄に有名になった私は、この学園に居づらくなってしまい、あと卒業まで一年を残し帰国したのだった。
でだ。
その時の婚約破棄された令嬢、シルク嬢が、何故か私のお見合い相手に含まれていた。
「これ、どう言う事?」




