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10話 見えない神様の奇跡 (本編最終話)

一応本編は最終話になります。

( *・ω・)*_ _))ペコ

「本当に、神様って意地悪だなぁ」

「シルク?何か言いましたか?」

「いいえ、お母様」


 レイスリッド殿下と別れ数刻。

 馬車の窓からぼーっと外を眺めながら、ボソリと口にした一言に、前に座っていた母が不思議そうにこちらを見ていた。





 そうそう、僕の前世を話してなかったね。


 僕の前世の年齢は二十三歳。

 大学を卒業後、父の経営する会社に平社員として入社。そして間もなく、取引先の会社に年上の彼女ができた。

 新米社会人の僕は、いずれその子と結婚するんだと夢見ながら、仕事に勤しむ毎日だった。

 彼女の事、本当に好きだったからね。

 社長の息子だからって甘く見られるのも癪だったから、必死で仕事も頑張った。


 でもある日、彼女に悲劇が起こった。

 

 彼女の会社は有名なブラック企業で、僕もずっと彼女が心配だった。

 でも、ある日、彼女と連絡が取れなくなった。

 僕の心配が的中したと思い、急いで彼女の住むアパートに向かった。

 

 そして、僕が見たのは・・・玄関先で倒れている彼女だった。


 あの日、彼女はやっとあのクソみたいな会社を退職し、僕の働く会社に転職する事になっていた。

 有能な彼女は僕の父の目にとまり、引き抜きを受けていたのだ。


 僕は自分を呪った。

 何故もっと早く彼女に「辞めろ」と言えなかったのか。

 どんな会社か知ってたのに!


 僕は彼女から最後に送られたメールを見ながら死ぬほど泣きまくった。


『もうすぐ君の所にいくからね!一緒にがんばろ!』


 そのメッセージが涙で霞んでよく見えなくても、何度も僕はメールを読み返した。

 好きだったんだ。

 本当に彼女の事が大好きだったんだ。


 それから気付いた時には意識がこの世界に落ちていた。


 最後の記憶は、ふらついた足取りで交差点を横断中に、信号無視の大型車が突っ込んできた瞬間。


 なんて神様は意地悪なんだと思った。

 神様がいたらの話だけどね。


 それからこの世界に転生してから数年。


 クソみたいなポンコツ王子と婚約させられ、乙女ゲーの世界と知り、何の罰ゲームかと思ったよ。

 彼女を守れなかった僕にはこんな世界がふさわしいのだと、存在するかも分からない神様からの罰なのかと思った。


 でも、僕は「カレ」に出会った。


 初めは友人として出会い、その一緒に居る心地よさが本当に不思議だった。

 元男である僕は絶対にこの世界の男に恋なんてしないと思ってたから。

 本当に、「カレ」と出会ってから驚かされる事ばかりだったよね。だって、「彼女」に全てがそっくりだったんだもの。


 好きな食べ物も、好きな物語のジャンルも、仕草だって、よく彼女がしていた仕草そっくりでさ、なんの奇跡かと思った。


 気付いたら彼女に向けていた感情と同じものを「カレ」に向けている自分がいた。

 でも、「カレ」は隣国の王子で、僕は自国の王太子の婚約者。

 本当に、このクソゲーの世界はムリゲーにもほどがある。


 それから直ぐ、自覚したこの気持ちに蓋をした。

 これは恋じゃないって、ずっと自分に言い聞かせた。

 これは彼女との思い出がよみがえっただけで、「カレ」の事を好きな訳じゃないんだと。


 そして迎えた卒業イベント。


 そう、あの「喜劇」の断罪イベントだ。


 この断罪が終われば、晴れて自由の身。国外に出たら好き勝手して生きようと心に決めていた。

 それなのに。

 「カレ」がそれをぶち破り、僕を助けてくれた。

 ヒロインはその行動から、僕と同じ転生者だと分かっていた。この断罪劇からは逃げられないと、絶対に思っていたのに。


「何これ、ラノベ?」


 その時に「カレ」から発せられた言葉に、僕は頭が真っ白になった。

 まさか「カレ」も転生者だったなんて。


 じゃぁ、僕は奇跡を信じていいの?僕のこの想いは・・・。


 それから僕は必死で動いた。


 国王陛下から打診があった、第二王子との結婚も、自ら直談判し、あの王子の血縁者と結婚するくらいなら修道院に行くと断った。

 そして、「カレ」の事を調べ上げ、絶対に転生者だと確信。

 その中で、「カレ」が女性を苦手としている事も分かった。

 少しだけど、希望を持った。もしかしたら、「カレ」は彼女で、元女だから女性との関係を嫌がっているんじゃないかって。





「本当に、奇跡ってあるんですね?お母様」

「何ですか?いきなり。まぁ、あのボンクラなステファン様に嫁がなくてよくなっただけでも、貴女には奇跡だったでしょうね。おかげで、あんないい殿方に嫁ぐ事ができます・・・良かったですね?シルク」

「はい、お母様。本当に、運命にあらがって良かったですわ!」






 昨日の晩。

 本当に、ビックリすると同時に嬉しかった。

 どんな自分でも受け入れてくれると分かり、本当に嬉しかった。


 長い口づけの後、僕が前世での自分を話すと、「カレ」は僕を強く抱きしめてくれた。

 

 「カレ」は「僕」の事を覚えていたのだ。


 そう、「カレ」は「僕」の大切な「彼女」の生まれ変わりだった。


 「カレ」は自分の立場を考え、その記憶を幼少期に魔法で封印していたらしい。

 自分は今「レイスリッド」であり、「彼女」ではないのだと、自分に言い聞かせ、自分は別の人間なんだと「僕」という記憶を封印したそうだ。


 それが、僕の話により封印が砕け散った。


 あの後、『彼女』も『僕』も声を殺して沢山泣いた。

 離れた時を埋めるように、現世での話を沢山した。


 向かいの部屋から、なにやら人影が見えたけど、暗かったから泣いているのまでは分からなかっただろう。

 後から、カレにそれは自分の妹だと聞いた時には、吹き出して笑った。


 一度自分の国に戻り、国王陛下に婚約の報告をしたら、直ぐにカレの元に帰ろう。

 今度は絶対に離れない!

 今度は絶対に僕が「カレ」を守ってみせるんだから!


 待っててね、今度こそ幸せにするから!


読み返してみると、シルクちゃんは大分病んでる子ですね…。

生まれつき前世の記憶があったせいで、心が身体に追いつかず、まして前世の恋愛を引きずりまくり。


まぁ、最終幸せをつかんでもらったんで良しとしてください。


補足ですが、主人公は記憶が戻ったのも遅かった為、9割男性思考です。ちゃんと女の子がすきな男の子設定です。ヒロインと違い、女装趣味等はありませんのでご安心を(*^^*)

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