アイスの公園
暑い
暑い
暑い
蝉の鳴き声が暑い空気と混じっている。なんともなく無視していたが、耳を澄ましてみるとなかなかうるさいものだ。
砂に染まっている地面は夏の太陽の日差しで白く輝いていて目が痛い。
「目が死んでしまうは」
こんな暑い中、清一は今日もお気に入りの公園に行ってベンチに座っていた。公園の時計塔は十一時を過ぎていた。部屋でダラダラと生活していても退屈なため外に出てみたが外は暑かった。ベンチの辺りは大きな木のおかげで陰になっている。
蝉の鳴き声以外は静かな場所であった、たまには鳥の鳴き声もしているが。
人が動いているのが目立つ、公園内を中年ぐらいの人がランニングしているのが二人は目立っている。
首には白いタオルを巻いている。巻いたタオルで顔の汗を拭きながらランニングしている、その行いを二分三分おきか、何度も出てくる顔の汗を吹いている。
は筋肉痛で少しだるかった。昨日の体育の授業が体に今日出ている。
「張り切り過ぎたかぁ」
胸の辺りを片手で優しく撫でている。激しく痛いだけではないが、片手でゆっくり押して、痛みを確認してみたくなってしまう。
「イテッ」
やはり痛い。押した時一秒遅れてその周りがじわじわと内側から痛くなっていく。この痛い感覚を知ろうとなぜかやってしまう。ツボでもないが好奇心が知ろうと頭から湧いてくる。
胸の辺りを押したり撫でたりしているなか、遠くを眺めていたらふと目にした、こないだぐらいに目にしたことのある人物を無心に眺めていた。
どうやらこないだの女性のようだ。今日は私服の姿、ジャージで公園内に入ってきた。
こちらの方に向かって来ている。相変わらずの綺麗なツヤのある長い髪だった。
こんな夏に、太陽の日差しが黒い髪に当たると白く反射している、夏にツヤのある髪は反射していて見てても目が痛くなってしまうものだ。
彼女は顔はいつもと変わらずニコニコしている。横の方に座って二分間ぐらいベンチの上はしずかに無言になっている。
その後、空の方を眺めていた彼女の方から声をかけてきた。
「二週間ぶりね」
「そう、そんな経ったのか」
彼女と初めて会ってから二週間ぐらいは経っていたようだ。大きな出来事もなく、ただダラダラと日々を過ごしていたからか。
せいぜい父親がきたぐらいは昨日のように感じたぐらいだろう。
「元気そうねぇ」
「そうかい、君も元気そうだね」
「うふふ、今日も元気だよ。私の毎日はいつも充実してるんだもの。」
「へぇ〜、毎日が充実しているのかぁ」
「うん、そうよ。あなたの方は充実しているの?」
「俺はどうかな、あまり意識したことはないなけど、寝てばっかりだからよく覚えていないかも」
「あら、寝ているの、夢で私に出会わなかったかしら」
「いや、出会ってないねぇ。出会ったら何するんだよ」
「特に何もないわぁ、あなたと喋りたいだけよ」
こんな暑い中、わざわざ公園にやってきた彼女はどうやら暇なのだろうか。清一は額の汗に気づいてハンカチで吹いていたら彼女が聞いてきた。
「ねぇ、アイスとか食べたりする?」
「アイス、たまに食べるけど」
「こないだねぇ、オレンジ味のアイスをアリに食べさせたんだよ」
「アイスをアリに?」
「うん、私がアイスを先に食べて、口に入れたアイスをアリのいる所に向かってぺって出したの」
「自分が口に入れたアイスをアリに?」
「うん、それでねアリ達が近づいてきてそれを眺めてたのぉ。それがたまらなくて」
「たまらなかったて?」
「体がゾクゾクしてきて、それがねぇたまらなかったのぉ」
「へぇ〜」
清一は顔の表情は引くこともなくただ黙って聞いていた。一回口にしたオレンジのアイスをアリにあげる行為を話す彼女は相変わらずニコニコにしていた。
今日の彼女はその事を話しにきたんだろう。
「あなたの方はゾクゾクしなかったかしら?」
「ゾクゾクはしなかったねぇ、単にそんな話ししかしないだろうなと思って」
「そんな話しなんて、あら失礼だわぁ」
彼女は不満そうな顔をして清一を見つめていた。それに答えないように無言で向こうの空の方に目を逸らした。どうやらそれも彼女は不満そうだ、自分の引く顔でも見たいのだろうか。
「ちょっとつまんなかったかしら?」
「いや全然、つまらない訳ではないがね」
「なんだ、よかったわぁ、もしかしてこないだの話しが良かったかしらと思って」
「こないだ、ああ、あれと比べても対して変わらない。ところでアリは何匹いたの?」
「確か五匹はいたわ、それがどうしたの?」
「いや、特にない、その時の様子が気になっただけ」
清一は時の興味はなかったが気になるところを質問してみた。それに対して彼女は少し嬉しそうな顔になっていた、自分の言った事に聞かれるのが好きなのだろうか。
気がつけば公園の時計塔は十二時前に長い針があった。昼食の時間に近づいているが、持参していた食べ物はパンとお茶ぐらいしかなかったが今日はそれで十分だった。お腹もそこまで空いてはいない動いていないのもあるのだろう。
「もうすぐ十二時だが君はまだここにいるのかい」
「うんん、ここにまだいることにしてる」
「そうかい」
彼女はまだここに座っているようだ。清一はここで食事でもしようと思っているが女の人の前で食べるのは少し苦手さを感じた。彼女はニコニコしながらこちらを見ていた。これではますます食べにくい。
清一は彼女の方を背に向けて食べることにした。