闇の方へ
懐かしさはすぐ傍へ、
懐古の夏、蝉時雨、旅の雲水さん、夕立、入道雲。
影法師、鴉の群れ、彼岸花にお地蔵さん。
置いてきた魔法の時が、
今此処へ。
古びた物語が、
時を刻みだす。
夕べの夢。
逆さろくろ首が、欄間に首をかけて私の顔をじっと見つめている。
怖いのに、豪華絢爛な友禅の着物と緑色の目があまりに美しくて、目が放せない。
お前は、取り憑かれるよ、そういう人生を送るよ。
そういって、闇の方へ落ちていった。
あれから何年も経つが、身の回りに、霊障が収まらない。
呪いの藁人形が幾つもある神社を知っています。
そこの近くの家では一家心中があったようです。
近くには墓場が野ざらしで放置されています。
黒猫が横切ります。
鴉が集まります。
宿場町の近くの街より。
学校の怪談。
放課後、開かずの教室の中から花子さんがけたけた嗤う。
石膏像が鬼の置物に変わる美術室。
人が誰もゐないのに、トイレットペーパーがころころと転がりだしてくる、三階のトイレ。
ベートーベンが血の涙を流す音楽室。
天井の染みが人の顔に見える、うちのクラス。
お寺さんのやっている仕事は穢れたお仕事です。
人の遺体、人骨を管理しているのですから。
夜になると人魂が墓場の方で踊っていたということもよくあるそうです。
亡くなった人が腹の上に載ってきて首を絞めてきたこともあるそうです。
六文持ってきた、と言われて、振り返ったら誰もいない…そんなことも。
通り沿いに、麦わら帽子の男の子が、一軒家を見ている。
君は、あそこの子かい。今日は通夜があってね…
雨の中、傘も差さないで、タンクトップ姿のその男の子は、一軒家を眺めている。
あっ、ちょっと…!
男の子が走り出して、曲がり角の前ですうっと消えていった。
今年も、来たのね
8月15日、お盆の時期に。蝉時雨、夕刻。
どうやら、彼の息子が、亡くなったらしい
七不思議、怪談。
そう言ったものがひそひそ伝わってくるのが学校の七不思議だ。
だいたい、苛めが絡んでいる。
恐ろしい子供同士の闘いに、
涙ぐましい怪談が生まれるのだ。