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第3話 勇者御一行、いざ安息の地へ

「えぇー! そうだったんだぁ!」

「えへへー♪」

 すっかり行楽こうらく気分になっている連中に、俺は一つ問いたい。


 先頭を歩く俺は一度足を止めると後ろへと振り返り、剣士・ギルバート、魔術師・ニア、暗殺者・エイオスの三人を順番に見る。


 そして、

「誰だよ!!」

 見知らぬ四人目となる美少女で視線を止め、正直な意見を口にした。


 連中は皆で顔を見合せ、

「アネモネだけど?」

 当たり前の様に言い放つ。


 いやまぁ、わかってるよ。さっき一人ってか、一匹仲間に加わったもんね?

 でもアネモネだぁ? あのアラクネーだろ? 蜘蛛女だろ?

 いつの間に普通の人間の姿になったんだよ! てかそんな事出来たんか、こいつら!



「人間の姿の方が馴染なじんでもらいやすいと思っただけだもん!」

 とだけ言うと、アラクネー・アネモネはプイッとそっぽを向いて見せる。

 そうかい、こいつはそんなに俺が嫌いかい。この魔物ふぜいが。


「ちっ…」

 俺は再び歩き出す。

 そんな俺の背後から、

「あ、ギル様。次、左です♪」

「ありがとう、アネさん。ジョエルさーん! そっちじゃないです! ここを左だそうです!」

 ギルバートが声を飛ばした。


 アネモネのおかげで特にここまで魔物と遭遇する事なく移動出来ている訳だが、

「そう言うことは早く言ってくれよ……」

 俺は小さく毒づいてきびすを返した。


 しかし、その先でここに来て初となる……



 スケルトン・ソルジャーが現れた!



「これは話せばわかる系の魔物ではなさそうだな……」

「必死で逃げたにも関わらず、結構本気で追いかけて来てまでエンカウントしてきたからね」

 なかなかにやる気満々な魔物と出会ってしまった。

 しかし、俺達は心持ち穏やかだった。


 何故ならば、

「お手並み拝見とさせてもらおうか、アネモネ」

「あんたに指図されたくないかなぁ?」

 俺達には新たな仲間にして即戦力となる魔物、アネモネがいるのだから。


 この際悪態を吐いてくるアネモネの事は悪くは言わん。存分にその力を見せてくれ。


「アネちゃん、やれそう?」

 と、ニアも半信半疑だが、

「一応これでも最深部の魔物なので♪ 上層階の魔物になら負けたりはしませんよ」

 ニッコリと微笑んだ。


 こうなれば今はアネモネを信じて攻撃コマンドにするしかない。

 後はこちらに飛び火して来ない事を祈るのみ。


 そして、魔物の姿に戻って戦うのかと思いきや、

「エニグマティック・ストリング!」

 人間の姿のまま、声高らかに技名の様な物を叫ぶと、アネモネは両のてのひらから膨大ぼうだいな量の糸を噴出させた。

 その糸は、一瞬にして相手の体が見えなくなる迄に巻き付き、その身動きを停止させる。

 やがてまゆの様になるまでに、ぐるんぐるんに巻き付いた。


「この糸は獲物を掴んだら離さない」


 あっさり、戦闘終了である。


「つ、強ぇえええええ!!」

「凄いです! アネさん!」

「やるじゃない! アネちゃん!」

 と、三人も大はしゃぎしながらアネモネへと駆け寄った。

 取り囲まれたアネモネは照れ笑いを浮かべている。

「見事だ。アネモネ」

 俺も頷きながら仲間に加わろうとする。


 が、

「あんたもあんな風になるのは一瞬。首洗って待ってなさいよ」

 アネモネの心ない一言で俺は歩みを止めた。


 まじか。やっぱこいつ復讐する気満々じゃん。

 しかも狙いはあくまで俺だけみたいだし。

 どうしてこうなった!?


「ところで、皆さんはどんな戦闘をされるんですか?」

 と言う、アネモネの質問に、俺達はピクッと反応を示す。


「あー、アネちゃんね。俺達はまぁその、勇者とギルが剣士なんで斬撃、ニアが魔法、俺が飛び道具……って感じ?」

 慌てて説明するエイオス。


 それに対し、

「魔王をも倒した勇者御一行の戦闘……どんな戦いをするのか私も見てみたいなぁ」

 アネモネはすっかり興味津々な様子だ。

 が、俺には真意は他にあるんじゃないのかと邪推じゃすいしてしまう。


 魔王をも倒した……その部分を、自分の両親を倒したに置き換えると、

 自分の両親はどんな風に殺されたのか。


 それが見たいと言っているように感じてならない。

 こいつは本当に仲間として受け入れて正解だったのか、改めて考え出した時、


「もうすぐだよ」

 と、アネモネが神殿内の一画を指さした。


 皆が皆、そちらに目をやると、本当だ。


 僅かではあるが、光が射しているのが伺えた。

 と言うことは、間もなく出口だ。


 生還した……


 こんな疲労感、今まで感じたことがない気がする。

 この帰り道の方が、魔王戦よりもよっぽど緊張感もあり死線だった気さえする。


 俺達はその光、神殿の出口のあるフロアへと向かって歩みを進めた。


 そして、とりあえず戻った先の宿屋で今後について、どう話をするべきか考えながら。



 呪いのカウントダウン

 運命の刻まで

 あと6日 (レベル166)

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