表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

第17話 勇者御一行と拭えないトラウマ②

 ◇


 部屋に荷物を置いた俺達は、一階のロビーへと降りてきていた。

 今は各々メニューを頼み、出てくるの待ちである。おかゆも作れるそうなので、後で二階に持ってきてくれるそうだ。


 先程ベルモットが案内してくれた部屋は二階の奥の二部屋だった。とりあえずツインベッドの部屋だが、一部屋はニアとアネモネが、そしてもう一部屋は俺、ギル、エイオスの部屋となる。

 言った通り、ツインベッドの部屋である。

 こうなると、男三人は誰かが誰かと一緒のベッドで寝るか、エイオスが床で寝るしかない。



「見かけない顔ですね。旅の御方ですか?」

【元ハンター アマンダ・ビーク 49歳】


 なんて俺がモノローグに耽っていると、アマンダ・ビークなる女から、上記の様な言葉を投げ掛けられた。

「え? あぁ……まぁ」

 ローブをかぶっているんだから見かけない顔もクソもないと思うんだが。


 俺達に声をかけてきた妙にガタイの良いおばちゃんは、

「もし機会があったら旅のお話を聞いてみたいものですわ。私も昔は魔物を狩って生活していたの。明後日までこの宿屋にいるから、時間があったら遊びにきてちょうだい」


 挨拶代わりにそれだけ言って、満足そうに自分の席に戻って行く。


「え、ねぇ……勇者?」

 と、ここでエイオスが不思議そうな顔をしながら俺に耳打ちして来た。


「なんだ?」

「俺、宿屋に入ってからずっと気になってたんだけど、こんなパターンって今まであったっけ?」

 言って、エイオスが改めて宿屋の中を見回す。


「は? パターンって?」

「いや。今まで台詞を発しただけで、下に職業と名前と年齢が表示されるって事あったっけ? 第三章からそうする感じになったんかな?」

 エイオスに言われ、俺も記憶を漁る。

 が、今までそう言うパターンはないな。これが初めてじゃないか?

 ただでさえ一話当たりの文字数が多いって苦情が多かったし、キャラ紹介で文字数使うのもアレだから初登場時に一緒に紹介しちまえ! 的な作者の考えじゃないのか。一話を二話に分割したついでに。


 しかし、

「ありましたよ」

 と、ギルは真面目な面持ちで頷いた。

 本当か? いつ? どこでよ?


「やはり、ここ……タンティータウンに来た時です」

「なんだと?」

「他の村では表示された事はありませんから、この村特有の紹介方法なのかもしれませんね。わざわざ自己紹介しないで済むなら面倒もありませんが」

 言って、ギルがお冷やを一口口にする。

 まじか? 前回もそうだったっけ?

 すっかり記憶から消し去りたいばっかりに、その辺の記憶が実に曖昧だ。


「えっ……ってか、これ顔隠してるけど俺達もバレてんのかな? 下に勇者、ジョエル・ジョークハルト、20歳、とか開示されてんのか?」

 そしたら顔隠してる意味ないじゃんよ。


「わかりません。とりあえずこの時間にも関わらずロビーには何名か居るようですから、食事の後にでもこちらから声をかけ、僕らも紹介されているのか確認してみますか」

「え、やめとかね? 確かに以前来た時みたいに何か事件に巻き込まれたり、物騒な感じはないけどさ……こっちから関わっていくのは得策でないと思うぜよ?」

 下手に動き回りたくないばっかりに、言葉遣いがおかしくなってしまったが、俺の言い分はわかって欲しい。

 今夜一晩、何事もなく過ごせればそれで良いのだ。それ以上でも以下でもない。

 ニアが回復したら、明日の朝一番に村を発ちブリージアを目指す。それだけの事だ。



「お待たせしました」

 と、厨房の方からベルモットが料理を両手にやって来た。

「おぉおおおお! ご飯! ご飯ッ!」

「待ってました!」

「お熱いので気を付けて下さいね」

 すっかり腹ペコで既にフォークを握りスタンバイしているアネモネに、俺達の元に着くや、ベルモットが優しく注意を促した。

 何だかんだで俺達も腹ペコ。今なら土も食えるレベルの空腹度合いだ。


 各自が頼んだ料理が順々に目の前に置かれて行く。

 ふと、皿を置くベルモットの左手首に包帯が巻かれているのに気が付いた。調理中に怪我でもしたのか? さっきまでしてなかったよな。

「ごゆっくりどうぞ」

 言いながらベルモットは一礼し、テーブルを後にした。

 俺は全員に料理が行き渡ったのを確認し、

「それじゃ、いただきま────」


「きゃぁあああああああああッ!!!」


 楽しい食事のはずが、二階から突如として聞こえてきた悲鳴。

 皆いただきますと手を合わせたポーズのまま固まった。

 今のはニアの声ではない。が、年の頃は俺達と同じくらいの女性の声。


「え……待って。なに今の」

 俺のトラウマが呼び起こされる。

 それはギルも同じだったようで、

「ジョエルさん……」

 ご飯を食べることすら忘れ、ギルが不安そうな顔を俺に向けてきた。

 そんな捨て犬みたいな目で俺を見てくんなや。俺も今お前と同じ気持ちなんだよ。


 硬直。まさかの展開にその場でフリーズした俺達の後ろ、ロビーの奥から、

「────来やがったッ!!」

「……あぁ!!」


 待っていましたと言わんばかりのハイテンションで、乱暴に椅子から立ち上がる二つの影。

 それは、今正に悲鳴が聞こえた二階へとかけ上がろうと言う勢いで、ロビーをドカドカと走り出す。


 エイオスはやめておけば良いものを、

「え、来やがったって……何? 今のマンドラゴラの悲鳴とかじゃないよね!? てかそうだと言って、否定しないで!?」

 俺達の脇を駆け抜けようとするそいつらに声を掛けた。


 エイオスに声を掛けられた二人は立ち止まってくれたものの、逸る気持ちを抑えようとその場で足踏みをしながら、

「マンドラゴラの悲鳴? そんなワケないだろう」

【探偵 キーン・ダイチ 29歳】

 答えるは帽子を深々とかぶった背の高い男。

 対するもう一人の背の低い、小学生の様な風貌のそいつは、

「バッキャロー……何が起きてるって、殺人事件に決まってるじゃねぇか!」

【探偵 コパン・エドリバー 17歳】

 かけた眼鏡をキランと、怪しく光らせそう言った。


 まるで捨て台詞の様に雑な説明だったが、それだけ言うと連中は俺達にはもう脇目も触れず、悲鳴が聞こえた二階の部屋へと駆けて行った。


 呆気に取られる俺達の元に、

「旅の御方。驚かせてしまい申し訳ねぇ」

 宿屋のオヤジが頭を下げながらやって来た。

 そして、話を続ける。

「ここはタンティータウン……日々殺人事件や強盗が絶えない村なんでさぁ」

「……!?」


 耳に届く聞き捨てならない事実。

 相変わらず目をまん丸くしたまま微動だにしない俺達に、オヤジは更に言う。

「事件が絶えない故に、世界中から我こそはと推理力に自信のある探偵達が集まり、推理合戦を繰り広げているんだ……」


「同様に腕に自信のある犯罪者も、自分の考えうる最強最悪の完全犯罪を、トリックを解けるモノなら解いてみろと探偵に勝負を挑みに来ています。

 探偵が居るから事件が起きるのか、犯罪者が居るから事件が起きるのか……探偵さえ居なければ平和な村なのに、と昔からこの村に住む人々は言っています」

 と、オヤジの後ろからベルモットもやって来た。


「え……まじ?」

 と、エイオスが俺とギルを見つめる。

 今気付いたが、アネモネに至っては気にもせずご飯を食べ始めていた。すげぇず太い神経だな、おい。

「やっぱり……」

 ギルも過去の事を思い出したのだろう。大きく肩を落とした。


 ベルモット達が言うような、最早ニワトリが先なのか、卵が先なのかみたいな話はどうでもいい。

 前回俺とギルが事件に巻き込まれたのは、やはり偶然とか不運ってワケじゃなく……必然だったってワケだ。

 で、今回も変わらず、この宿屋で事件が起きたと。

 今二階に上がって行ったキーン・ダイチとコパン・エドリバーとか言う二人がその探偵か?

 奴らが居るから事件が起きる……と。


「……だ、だから言ったじゃねぇかよぉおおおおおッ!!」

 悪夢再び。俺の悲痛な叫びは、タンティータウンの夜の静寂に満ちた大気を震わせて、ディレイエフェクトがかかったかのようにしばらく木霊した。



 呪いのカウントダウン

 運命の刻まで

 あと5日 (レベル136)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ