第二話 後夜祭
「えー本日はお日柄も良くー」
文化祭の片付けが終了した後は恒例の打ち上げだ。
高校から出て10分程歩いた場所に、手頃な公園があるので三年二組はそこに集合した。
着いた早々音頭を取り始める水筆をボーっと眺めながら、壮平はベンチでオレンジジュースを飲んでいた。
「三年かぁ・・・早かったなぁ・・・」
隣に三橋ミリが腰掛ける。
「そうだね、早かったねぇ」
ビクっと体を硬直する壮平。
「み、三橋・・・」
「今日の大和君、凄く頑張ってたね。かっこよかったよ」
くりくりっとした目にショートカットを被せてえくぼを足した笑顔の破壊力は凄かった。
「そ、え、いや、ほんと?」
「うん。あたし、大和君とは一年生で一緒のクラスだったけど、二年生で別々になっちゃったでしょ?だから、高校最後で大和君と一緒のクラスになれて本当に嬉しい!」
なんて感情表現豊かないい娘なんだ。でも、三橋ってこんなに良く喋ったっけ?
壮平がじっとミリの眼を覗き込むと、
「あ、はは!ごめんね、何か変なこと言っちゃったよね、今日は疲れたからテンション上がってるのかもね!」
言われて自分がミリの眼をマジマジと覗いてることに気付いた壮平も、バッと顔を反らす。
その僅かなベンチの隙間に、後ろから宮元輝夫が顔を挟み込む。
「やーまとーぅ」
『うわっ!』
ミリ共々びっくりして立ち上がった壮平は、勢いで手に持っていた紙コップを落としてしまった。
「水筆が乾杯やるからってさっきから総長を探してたんだがー」
見るとクラスの全員が水筆の前に集まっている。
幸い皆の視線は水筆一人に集中しているため、ミリとの会話は見られてはいないようだ。
「あ、あぁ、悪い、行って来る!」
三橋と二人っきりの場面を宮元に見られた恥ずかしさから、壮平は一刻も早くその場を立ち去りたかった。
「あ、大和君、コップ!」
乾杯の音頭を取らされる者が手ぶらで行ってはしょうがないと気を使ってくれたんだろう、ミリは自分のコップを壮平に手渡した。
「あ、さ、サンキュー!」
コップを持って水筆の元に駆け寄る壮平。
それを見送るミリと宮元は、どことなく寂しげな表情だった。




