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たぬきのなくしもの屋  作者: 橋本 静音
2/2

銀杏と指輪

なくしもの屋では、店主のたぬき、ロクさんとお手伝いうさぎのリコが営んでいる。

これはそんな2匹の物語。


リコがなくしもの屋を手伝い始めて一週間がたった。

あれから依頼(いらい)は1度も来ていない。


リコは最初は困った動物たちの手助けができると内心ワクワクしていた。

しかし、依頼が来なければやることもない。



つい先日のこと、「あの店主にはかかわらない方がいい。」とある動物に言われた。

それだけではない。この町の動物たちはどこかロクさんに対して冷たい感じがする。

たしかにロクさんは気難しそうなところもあるけど、根はとっても優しいのだとリコは知っていた。


ロクさんがいいたぬきだってこと、町の動物たちにも分かってほしいな。


そんなことを思いながらリコは店へと向かう。


店のとびらを開けるとブワァっと強烈(きょうれつ)なにおいが飛び込み、リコは思わずたじろいだ。


リコは何事かと手で鼻をおさえながら、店内を見ると、たぬきの姿が2つみえた。


「え、ロクさんが2匹!?」


()り返った方のたぬきをよくみるとロクさんより2まわり大きく、まぶたが垂れていて眠たそうな顔をしている。


「あれぇ~お客さん?ぼくはマンプク家三男のサンだよ~。よろしくね!」


「いえ、私はここのお手伝いをしているリコです。」


「へぇ。だれも(やと)わないんじゃなかったの?」


とサンは意外そうな顔で店主を見た。


マンプク家といえば、この町の町長の家のことだ。そして、町長の家には息子が6匹いる。サンさんがその家の息子ということは、おそらくロクさんもそうなのだ。



「用がないならさっさと帰れ」

「あと銀杏(ぎんなん)臭い」


と、冷たく店主が言う。あの臭いの正体は銀杏だった。



「待って〜」

「今日はお客さんを紹介しに来たんだよ~」



******************



依頼人は小さな三毛猫の男の子、名前はアキくん。



なくしものを見つけるためには、そのなくしたものの「思い出」が必要である。




ぼく、ユキちゃんて子がずっとすきで、告白したんだ。


そしたらユキちゃんも好きだって。それで、婚約(こんやく)したしるしに指輪(ゆびわ)を交換したんだ。


でも、ユキちゃんのことが好きな子が他にもいて、怒って川にぼくの指輪を()てちゃったんだ。


大人たちはあきらめて新しいのを買えっていうけど、あれはユキちゃんにもらった大事なものだから…。


絶対に見つけたいんだ……!!




そして、店主は例によってあの呪文(じゅもん)を唱えた。(1部より)



*******************




その後、店主、サン、アキくんの3匹は川へと向かった。


リコは用事があるらしく、あとから向かうという。



川は流れがはやく、そこそこの深さもあった。一匹で探すには危険(きけん)である。




サンには考えがあるらしく、「ぼくにまかせて!」得意げにいい、



「はい、変化(へんげ)っ!!」(ポワンッ)



と唱えると、その姿は一瞬にして、魚の姿に変わった。



そして「じゃあ、探してくるよ。」と川に飛び込んだ。



しかし、「あーれー」という言葉とともに、あっという間に川に流されて行ってしまった。



アキくんはあわてて、「助けなきゃ」と川に入ろうとしたが、


小僧(こぞう)、お前にサンが救えるか!!」


「あいつなら大丈夫だ!」


と、店主が止めた。



そして、「しかたない、やってみるか…」と店主は自信なさげに言うと、



「へ…変化っ!!」(パホンッ)



と唱えた。

すると、その姿をみてアキくんが



「おじさん、なんでイカの着ぐるみ着てるの?」と言った。


店主は自分が魚に変化したつもりでいた。しかし、水面に映る自分の姿は顔の部分だけがすっぽりと出た、まさしく着ぐるみだった。しかも、イカの。



(どうしてこうなった…)

店主は恥ずかしさのあまり、プルプルとふるえた。



その時、ぞろぞろとこの川の周りに動物たちが集まり始めた。


見ると、その中心にはリコがいる。

「町中の動物たちに声をかけてきました」

「あとついでに、ロクさんはいい人ですよ☆って言っおきました!」

とリコはいう。(こんなに動物たちが集まるなんて…)リコの底知れぬ力に店主は驚かされた。



川の中、横一列に町の大人たちがみんなで手をつなぎ、流れに負けないように()()った。そして、ロクさんもその中に加わった。


そして、その大人たちに支えれながら、リコは必死に指輪を探した。


「がんばれー!!」


と、見守っていた大人、子ども、多くの動物たちの声が聞こえる。



リコは「絶対に見つけなきゃ」と一生懸命に探した。


そして、岩の隙間に可愛らしい柄の指輪を見つけた。


「ありましたーーー!」


とリコは大きな声を上げた。



「わー、やったーーー!!」

その場にいた誰もが喜んだ。





**************



「これで依頼はおわったな」と店主がいうと


「おじさん、おねえちゃんも、ありがとう!」とアキくんはとてもうれしそうにいった。



「アキくん、依頼料は持ってきてるかな?」とリコがアキくんに聞いた。



すると、アキくんは不思議そうに

「依頼料の銀杏ならもう払ったよ!」と言った。


(え…銀杏………?)


「ええええええ!?」(リコ)

「はあああああ!?」(ロク)



今回の依頼料はなんと銀杏でした。



**************



大事なもの、思い出のつまったもの、かけがえのないもの。


もし、なくしてしまって見つけられないときは


だれかに助けを求めましょう。


みんなで探せば見つかるかもしれません。


たぬきのなくしもの屋、今日も営業中です。



〈あとがき突然の豆知識〉


サン:銀杏はね~、皮が臭いんだよ~。

ロク:じゃあ、なぜ皮をむかない…。

リコ:ロクさん、通な食べ方なんですよ、きっと。


サン:面倒くさかっただけだけどね~。

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― 新着の感想 ―
[一言] あらあら、2件目はタダ働きになっているような? 依頼料を銀杏で請求したサンさん。 町長のおうちの狸だし、依頼人の依頼をロクさん達に遂行してもらったお代は、もちろん出しますよね?(ニッコリ
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