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たぬきのなくしもの屋  作者: 橋本 静音
1/2

なくしもの屋とペンダント


うさぎのリコがやってきたのは、町外れにぽつんとある小さなお店。

右手にはネズミのおばあさんに書いてもらった地図を、左手には小さな袋を持っていた。


そのお店を見ると、木の板に手書きで ”なくしもの屋” とぶっきらぼうに書かれている。


リコはトントンと店の戸をたたき

「すみません」といって、中へと入った。


するとそこには、椅子に座り、鼻ちょうちんをふくらませ、寝ているたぬきがいた。



部屋にいるのはこのまるっこいたぬきだけだ。



いくら呼んでも、体を左右にゆらしても起きないので、

ええい、割ってしまえと鼻ちょうちんに置いてあったえんぴつを突っ込んだ。


パチン

よほど驚いたのか、たぬきはいすから転げ落ちそうになりながら、

「一体、なんなんだ!」とさぞ不機嫌そうに言う。

リコはあわてて袋をたぬきに差し出して「い、依頼です!」といった。


たぬきは袋を見ると、とても満足そうな顔をした。


「店主のロクだ。」

「まずはこれを書いてくれ」といって、店主は紙を差し出した。


そこには、3つの項目があった。


1、なまえ

2、なくしたもの

3、思い出



リコが「思い出」という言葉に首をかしげると、



「誰にもなくしたものに思い出ってあるだろ。それが必要なんだ。」と店主は言った。




私がなくしたものは、母がくれた誕生日プレゼントだった。


それはとてもキラキラした、きれいな青色のペンダント。私はそれにひとめぼれだった。


どうしてもそれが欲しいと母にねだったのを覚えている。


買ってもらったときにはうれしくて、みんなに自慢して歩いたものだ。


このペンダントをつけていろんな場所にも行った。


このペンダントには思い出がいっぱいつまっていた。


ずっとずっと大切にしていたのに

どうしてなくしてしまったのか…


そう思うと悲しくて、リコの目は涙でいっぱいになった。



すると店主は、

「きっと見けるからな」と優しくいうと、

「最後に今の思いのすべてをこれに込めてくれないか」といって、

葉っぱを差し出した。


リコは(大事なペンダントがみつかりますように)と強く願った。



その葉っぱを受け取ると、店主は

リズムよく唱えだした



 なくした なくした なくしもの

 大事な  大事な  なくしもの

 思い出  いっぱい なくしもの


 ていやっっ


と最後にあの葉っぱを投げた。

するとポンとおとがして、それは1枚の紙切れに変わっていた。


それを見て店主は言った。

「わかったぜ、ペンダントの場所」




************



「おかしいな、この辺のはずなんだが…」

といって店主は足を止めた。



見たところ、この辺にペンダントはなさそうだ。見つかるかもしれないと期待していたリコはがっかりした。



そのとき



カァーカァー


という鳴き声がした。



「あっ!!」

見上げるとなんと、カラスがペンダントをくわえていた!


カラスはこちらに気づくと、まずいと思ったのか飛び立ってしまった。


リコは思わず店主と顔を見合わせた。


「あのカラスを追うぞ!」


足に自信があったリコは店主をおいて

カラスに負けじとピョンピョン追いかけた。


カラスが木に止まると

今がチャンスだ!と思いリコはこっそり木によじ登り

大きくうさぎジャンプした。



「私のペンダントを返して!」



すると、カラスは驚いて、くわえていたペンダントを放し、飛んで行った。


リコは落とすまいと手を伸ばしペンダントをつかんだ。


「よかった…」と安心したのもつかの間

リコを支えていた枝がバキッという音を立てて折れてしまった。


「キャー!」

リコはまっさかさまに落ちていった。


もうだめかもしれない…と思ったが、

ポヨンという音がした。なんと店主のお腹だった。

「まにあってよかった。」

「無茶するぜ、嬢ちゃん。」



************



「これで依頼はおわったな。」

店に戻ると店主は満足そうに袋に入ったどんぐりをボリボリ食べた。


「本当にありがとうございました。」とリコは丁寧にお辞儀した。


しかし、リコはまだ何か言いたげな顔をしているので、

「どうかしたのか?」と店主は聞いた。


「私もここで、店主の、ロクさんのお手伝いがしたいんです。」

「だめでしょうか?」

店主はリコの意外な言葉に目を丸くした。


「たしかに、俺だけでは大変だし…」

「それに今回、嬢ちゃんに助けられたからな」


「よろしく頼むぜ!リコ!」

と店主はにっこり笑った。



「ロクさん、さっそくなんですが、看板変えてみました!」

「頼んでないし、はやいな…」


その看板にはぶっきらぼうに書かれた ”なくしもの屋” のわきにどんぐりとにんじんの絵が描いてあった。




かくして、なくしもの屋には可愛らしいうさぎが1匹加わり、依頼料のどんぐり袋のほかににんじん2本が増えたのだとか。




お読みいただきありがとうございます。

次の話で最後の予定です。

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