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星見

作者: 狂言巡

 夜、コンクリートが敷かれていない道を歩いていると、色んなアヤカシさんたちと出逢えます。

 尖った耳と尻尾を生やした薬師さん、目と鼻がない着物のお姉さん、顔が真っ赤で角が映えているおじさまたち……。

 今夜は顔の真ん中に大きな目があるお坊様にお会いしました。


「御機嫌よう」

「やあ」

「今日はいい夜気が流れているな」

「全くですねえ」


 アヤカシさんたちが元気な時間と、私たちの元気な時間は全く正反対です。



                                               


 私はいつも夜の十時が過ぎる前に寝てしまうのですが、今夜だけはそうしないで、新月(にいげつ)さんと散歩に出かけました。

 首のないお馬に乗って、丘までゆっくり登っていきます。そして、新月さんオススメのその場所で見上げた夜空。それは、とてもとても美しい光景でした。

 まるで漆黒の夜空に砂金をまきちらしたように星たちが輝いていて、ちょっと眩しいくらいです。

 きらきらきらきら。

 音にするとそんな感じです。

 私たちはしばらく夜空をうっとりと眺めていました。

 新月さんは星のひとつひとつを指差して、あれはなんの星座で、どんな由来があるのだということを、たくさんたくさん教えてくれました。

 夏の大三角、南斗七星にさそり座のアンタレス、などなど……。

 曲がりなりにも私も地学の選択生なので、方角を確かめるための最低限の星座の位置などは覚えています。でも、それ以外になるとさっぱりわかりません。だから、私は食い入るように星空を見上げて新月さんの説明を聞いていました。


「そんなにずっと真ん丸くしていると、可愛い目が零れ落ちてしまうぞ?」

「そ、そんなことないですよ!」

「ははははは、冗談だよ。ま、こういう夜も悪くないだろう?」

「はい」


 私がうなずくと、新月さんはかすかに目を細めて私の頭を軽く撫でてくれます。嬉しくて、でも恥ずかしくて、顔をうつむけると新月さんはまたおかしそうに笑いました。

 そして静かに夜空に散らばる星たちの話を語りはじめてくれました。

 彦星様と織姫様の悲しい恋のお話、弓の名手を殺したサソリのお話、恋多き神様たちのお話……。

 新月さんのお口から紡がれる話はどれも美しくて美しくて。

 私はただ星空を見上げ、この小さな幸せの時間に身をゆだねているのでした

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