単純なお笑いシリーズ ヤマザキ春のパ〇まつりとの戦い リターンズ
読む前に、前作を読んだ方が理解度が高まるかも。
単純なお笑いシリーズ ヤマザキ春のパ〇まつりとの戦い
それとフィクションですから、あんまり信じないように。
大体買いたい物は籠に入れた、後は買うかどうかを迷っていた商品を再度見てからからレジに向かうか。おや? あれはいつぞやの若者ではないか? 隣には若い女性が居て一緒に買い物をしているようだ、どれどれ年長者として声を掛けねばなるまい。
「よう、若者よ元気にしていたか?」
「ああいつぞやの…」
「お知り合い? 紹介してもらえる?」
若者の隣居た女性はやっぱり若者の連れのようだ。
「えーと彼は不審者です」
「おい! それは無いだろう。せめて人生の先輩である不審者とか、戦い方を教えてくれた不審者とか、色々あるだろう」
「不審者は認めるんですね」
「いつも彼がお世話になっております」
「ちょっ不審者だって言ったのに挨拶するの? びっくりするわ。というか会ったの一度だけだから」
若者の連れの彼女は大変礼儀正しい人のようだ。こちらも挨拶を返す。
「その後、春のパ〇祭りとの戦いはどうだね?」
「最初の年は勝ち戦で、去年は負け戦でした。しかし、傷口が拡がらないように撤退戦をしたので問題はありません」
「そうか、それは良かった。今年はどんな調子だい?」
「実は今日引き換えに来たんです」
若者は少し誇らしげに微笑む。
「ちょっと点数シートを見せて貰えるかな?」
「はい? 別にいいですけど。どうぞ」
点数を数える、一、ニ、零.五、一、一、 一.五、一、一、ニ、一.五、…。
「全然駄目だ、なっとらん!」
「ええ!? 二十五点溜まっていると思ったんですけど」
若者は点数シートを一生懸命数え直している。
「愚か者が! わしももうすぐ溜まるから、たまたま今日は持ってきておる。これを見よ」
点数シートを差し出し、若者が確認を始める。
「一、一、一、一、一、 零.五、零.五、零.五、零.五、三、 一、一、一.五、一.五、空白、…えーと? あっまさか!」
「そうだ」
「えーとどういう事なのですか? あっ本当だ! これは!」
若者の連れも引換券を見て理解したようだ。
「そうだ一列で出来るだけ五点になるように貼っているのだ!」
「すッすごい。なんでこんなに正確に貼る事が出来るんですか?」
「最初から出来るだけ同じ数の点を揃えるようにして貼るのだ」
「でも必ずしも一列が五点になるとは限らないですよね?」
「そうだとも。なので貼り方は二パターン存在する。一列が五点になる貼り方。同じ点数を五個並べる貼り方さ、こちらも同じ点数だから計算がしやすい。その年の点数の入手状況で臨機応変に貼り方を変えるのさ。
それと一旦ビニールっぽいものにシールを貼っておき、有る程度点数が揃い始めたら点数シートに貼れば確実さが増す」
「なるほど。でもそれが何の役に立つのですか?」
衝撃的な一言に、めまいがしてきた。
「はぁー、そんな事も分からんのか? お嬢さんは分かるかね?」
「えーと点数が数えやすいから、店員さんが引き換えの時に手間を取らせない? 何点溜まっているかが分かりやすいから商品を買う時に余計に買い過ぎないとか?」
「素晴らしい正解だ!」
お嬢さんはその場で軽く跳ねかねない位の勢いで喜んでいる、根が素直なんだね、不審者の私が褒めたのに喜ぶとか。
「例えばそれをレジで渡した時に点数を数えるのが大変だったら後ろの人に迷惑が掛かったり、サービスカウンターに持って行くにしても同じ事。やっぱり相手の事を思いやる気持ちが大事なんだよ」
「なるほど一つ勉強になりました。あれ? そっそんなまさか。貴方の籠に入っているのはダッダブルソフト! どうしたんですか気でも狂ったんですか?」
「えらい言われようだな、確かに普段六十八円(税別)の食パンを主力に置いている私としては、かなり珍しい選択さ。でももう少し言いようがあるだろ」
「すみません、最初からおかしな人でしたよね」
「おい! まあいい。店内放送を聞いてなかったのか? 限定二百個、税別九十九円だったのさ」
「やっ安い! でも六枚切りの食パンを買った方が安いのでは?」
「おいおい、忘れてしまったのかい? 私はこのパンを食べたいから…」
「買う、ですね」
「そうだ自分への言い訳が出来る十分な理由だ。しかもこの値段で三点だぞ、同じ値段の菓子パンなら通常一点、十分に買う価値があるわ」
「なるほど。私は今回会社の同僚から点数シールを沢山分けて貰って…あれ? まずかったですか?」
私が頭を抱えたのを見て悟ったようだな。
「いやそれも戦術の一つさ、なので何の問題も無い。ただ忘れないで欲しい事がある。いいか、この点数シール引き換えられずに廃棄される点数を知っているか? 日本国内だけで五十億点だ!」
「ごっごっ五十億! それって皿にしたら何枚になるんですか、二億枚!? 嘘でしょ、それじゃあ海外を含めたら何点になるんですか?」
「五十億五点だ」
「海外少なっ! 少なっ!」
「つまりだ、本来なら破棄されるシールが全て皿になったらどうなると思う? 倒産だ」
「ええ!?」
「まあそれは冗談だが、点数の発行数と皿の交換比率が絶妙なところで成り立っているのさ。だからあまり交換頻度が高くなると、必ず貰える商品がチープになりかねん」
「なるほど、でもそしたら撤退戦でも良いのでは無いですか?」
「甘い、甘いぞ小僧」
「……」
「……」
「やっぱり名乗らなかったな。もしかしたら、小僧じゃ有りません、〇〇という立派な名前があるんですと、今度は名乗るかと思ったんだが」
「だから不審者には教えませんよ?」
「彼は田中ですよ」
「教えんなよ!」
素晴らしい素直な彼女じゃ、でも個人情報の大切さを教えないと不味いな、後で喫茶店でも誘うか? それとも夕飯に誘うべきか?
「それはさておき、点数シートに書いてあるだろ、ダブルチャンスと」
「ダブルチャンス?」
「そうだ。今までは集めたら皿が貰えるだけだった。ここ数年このダブルチャンスが実装されており、引き換えた皿に応募シールが貼られているのさ」
「いやでも、欲しい物なら別途買えば良いとかなんとか仰ってませんでしたっけ? それなら当たるかどうか不明瞭なダブルチャンスは無理に狙わなくても良いのでは? 今年は大きなエコバッグでしたよね?」
「確かにその通り。しかし、プレミアが付くプレゼントだとしたら? 来年は何の年か分かるか?」
「二千二十年ですよね。なんでしたっけ? えっオリンピック? それが何の関係があるのですか?」
「もし、ダブルチャンスでオリンピックのマスコットキャラが描かれたアイテムだったとしたらどうだ? しかも抽選でしか入らないとしたら…。これがヤマザキが数年掛けた巨大な計画の一環だったとしたら?」
「たっ確かに、それならレア度が上がりますね。ゴクリ」
彼女がスマホで何やら検索をしている。どうやら確認が出来たようだ。
「あの、ヤマザキはオリンピックのスポンサーに含まれていませんよ? 多分来年のダブルチャンスもオリンピックと何の関連も無いものになるんじゃないですか?」
「……」
「……」
「……」
「じゃっ、元気でな」
「あっ逃げた」
はっ恥ずかしい。今度からちゃんと調べてからアドバイスせんとな。
廃棄される点数がいくつかなんて知らないですよ、本気にしないようにお願いします。
少しでもクスッと出来たでしょうか? それで私は幸せです。
それを見た他の誰かが、お前何笑ってんじゃいワレ? と絡まれたり、
何あの人ニヤニヤしている気持ち悪い、って言われたりしたら、うふふ。
やっぱり旬のネタは旬の内にいただかないとね。
コメント欄にいただいた内容から触発されてこれはネタになるなと。ありがとうございます。
つたない文章ですが、引き続きよろしくお願いします。